10年で20倍

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日本人7名が殺害されるという痛ましいテロ事件が起きたことが記憶に新しいバングラデシュ。亡くなられた被害者の方には謹んで哀悼の意を表したい。
ネガティブなイメージが付いてしまったバングラデシュだが、国としては「アジア最貧国」と呼ばれて久しく、現在の平均年収は10万円ほどだ。日本から直行便すらなく、ほとんど語られることのない国であった。
しかし、そうした事実を踏まえても、バングラデシュには、国および不動産投資が本来持っている可能性が秘められていることは知られていない。
さて、こんなバングラデシュの町並みだが、現在のバングラデシュの不動産の値段やその上昇率を聞けば、驚くに違いない。
◆急騰するバングラデシュの地価
たとえば、首都ダッカの商業エリアのある地点を見ると、2000年〜2010年で地価は20倍になっている。ダッカのPanthapathエリアのショッピングモールのあたりなどは、現在、100坪で約10億円という地価になっている。
これを聞いて、「もう不動産バブルだな」「もう手遅れだな」と思う人もいるかもしれない。しかし、日本の銀座の一等地などは、1坪1億円、100坪100億円を超える。中央区銀座4丁目の山野楽器銀座本店の場所は、公示地価が1坪1億3000万円である。また、上海では20年前に比べて地価が300倍以上になった場所も存在する。
土地の値段とは、その場所の人口密度が高まれば、自然と上昇をするものである。また、不動産価格は通常、その国の経済実態よりも先行して価格の上昇が始まる。そして、実態よりも高くなり、不動産バブルとなる。その後に株高が続き、最後にその国のサービス業のGDPが上がる。
これは、不動産や株は外需、つまり海外からの資金が流入するからである。サービス業などは内需であるが、現在のバングラデシュは1人あたりGDPが約1000ドルほどなので、まだまだ発展はこれからなのである。
バングラデシュの「ポテンシャル」
人口密度と地価の間には相関関係があるという話をした。
で、バングラデシュの人口密度はというと、バングラデシュは国土が北海道の1.5倍しかない上に、人口は約1億6000万人である。これは日本人全員が北海道に住んでいることと同じ計算となる。人口密度は実に日本の3.3倍であり都市国家を除けば、世界一となる。ちなみに2位は台湾であるが、バングラデシュはその1.7倍もの人口密度を誇る。
単純に人口密度から考えれば、バングラデシュの地価上昇の潜在能力はかなりあるということになる。
バングラデシュの驚くべきその潜在能力はこれにとどまらない。GDP成長率はここ10年間の平均が6%を超えており、バングラデシュ政府は2021年にはGDP成長率8%超えを見込んでいる。
なんと、ゴールドマン・サックスは後発開発途上国(LDC)の中では唯一、バングラデシュをBRICs(ブラジル,ロシア,インド,中国)に次ぐ「ネクスト 11」に認定しており、国連は「アジアのライジングスター」と評価し、JPモルガンは「フロンティアファイブ」に選出しているのだ。
◆世界的な企業の「工場」に
そして、その人件費の安さと勤勉さから世界中から企業が参入し、特に衣類関係ではユニクロ、GAP、ZARA、H&Mなど名だたる企業が生産工場を持っている。その結果、衣服輸出高は世界第二位であり、国全体のGDPはミャンマーの3倍もあるほどだ。
また、貧困率も改善しつつある。平均年齢22歳で貧困率は年々低下し、2015年には、貧困国から脱却し低所得国への仲間入りを果たした。政府は2021年には中所得国を目指しており、人口ボーナス(労働人口が従属人口の2倍になる時期)は2015年から40年間と推測されていてまさにこれから高度経済成長期へ突入する国なのだ。
さらにバングラデシュでは、農村から都心部への人口集中が進んでいて、過去20年でダッカ市内の人口が2倍になり2010年時点では1200万人である。この流れは今後も続くと予想され、ダッカ近郊を含む都市部への集中率は、2015年時点では35%であるが、2025年には50%、つまり全人口の半分が都市部に住むと予測されている。
急成長するバングラデシュ。足りないものは?
もともと人口密度の高かったバングラデシュ。そこで経済成長率が右肩上がりで、グルーバル企業が[進出し、貧困率が低下し、平均年齢もまだ若いという状況になっている。
そんなわけで、何が足らないかというと、住む場所や土地が足らない……となるわけである。
住宅不足を受けて、政府は川などを埋め立てて、それを抽選で現地のバングラデシュ人へ安く売り渡している。そしてそのバングラデシュ人達が、そこそこの値段を載せて、転売をするというわけである。だから、まだ道路も何もない場所でも100坪で5000万円以上するのだ。しかし、その場所から車で5分ほど行けば、100坪で3億円近い街が広がっているので無理もない。
私はある一人のバングラデシュ人を取材した。彼、A氏はバングラデシュの産業の一つであるIT企業を経営している。しかし、彼の精神的余裕を担保しているのは不動産事業であると言う。
「私はIT事業で従業員を100人ほど抱え、CGの制作などを請け負っています。しかしその本業よりも圧倒的に利益をもたらしているもの、それが不動産です。2008年に3000万円で購入した土地が現在は3億円になり、
1700万円で購入した土地は7000万円になったのです」
さらにそのIT企業の入る8階建のビルも自社ビルだと言う。
下記の写真はそんな彼の土地や彼が持つ不動産の写真だ。
実はこのようなバングラデシュ人はたくさんいる。農地を海外のメーカーに工場用地として売却するだけで1億円近いお金を手にして、ダッカ中心部へ引っ越す農民も多い。そして、その不動産がまた上昇するのである
バングラデシュ投資のリスク
バングラデシュでは外国人でも法人を持てば土地が所有出来るので、不動産投資に参入しようと思う人がいるかもしれない。
しかし、アジア最貧国であることは変わらないので、絵に描いた餅のように簡単に不動産投資が出来るわけではない。そこにはそれ相応のリスクもあることを頭に入れておきたい。特殊なコネクションやルートが最優先なのは、どこの途上国も同じなのである。
また、いま最も不安視されているであろう治安問題もある。
そもそも日本と比べるとどこの国も治安の問題はあるものだが、バングラデシュはこれまでフィリピンなどと比べても安全な国だとされてきた。9割がイスラム教徒ながら過激派はいないとされてきたからだ。
しかし、2014年頃から反政府組織によるデモなどが起きるようになり、周知のとおり7月1日にはイスラム過激派によって外国人をターゲットにした立てこもり事件が起きた。政府は警察などを増員し、1万8千人を拘束するなど対策をとりはじめている。
なぜ外国人がターゲットになるのか、その理由はまさにバングラデシュらしい理由である。バングラデシュはこれまで日本を中心として外国からの援助で発展をしてきた。だからこそ、外国人をターゲットにすることにインパクトがあるというのだ。
しかし先月12日にもアメリカでイスラム過激派によって銃乱射がおき、49人が死亡するテロがあった。フランスでも同様。今の世界はテロとは切り離せない世界となっている中で大事なことは、テロに屈しないこと、そして日本とは違い、治安問題を意識することだ。
今のところ、バングラデシュにおける不動産投資とテロは直接的には関係がなく、デメリットになる可能性は非常に低い。なぜならバングラデシュでは治安不安による人口の海外流出が起こりえないからだ。バングラデシュは今後も世界一の人口密度を加速させ続けるとみられる。

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