「振り回されてるね」

画像の説明 朝鮮労働党大会の取材に各国の報道陣が大挙押し寄せたが、会場には入れず「特別重大放送」という編集されたものしか見せてもらえない。

NHKニュースでメディアセンターのようなところに設置されたテレビにテレビカメラを向けているのを見て、思わす吹き出してしまった。

まるでディズニーランドのようにテーマパーク化したピョンヤンのプロパガンダ施設を見せられ、リハーサルを繰り返した「市民」にインタビューさせられる。

それでも、いつどんな発表があるかもしれないから、会場に設置したテレビから目が離せない。わざわざ北朝鮮まで行って一日中テレビを見ているのである。

北朝鮮当局に振り回される外国取材団

朝鮮労働党大会に合わせて、100人を超える外国の取材団がピョンヤン入りしていますが、これまでのところ党大会の会場内で直接取材する機会がなく、北朝鮮当局に振り回されています。

プレスセンターが置かれているホテルに滞在している外国の取材団は、党大会3日目の8日、日本時間の午前10時半に、全員パスポートを持ってロビーに集まるよう指示されました。そして、行き先や目的も告げられないまま、バスや乗用車に分乗してホテルを出発し、記者会見などが行われるピョンヤン中心部の「人民文化宮殿」に案内されました。

ところが取材団は、建物内部のホールで30分ほど待機させられたすえ、突然「予定が変更になった」とだけ告げられ、再び車に乗り込んで、日本時間の正午ごろ、ホテルに戻るという慌ただしい展開となりました。

アメリカの大手新聞社の女性記者は「記者会見か何かあると思っていたが、何の取材がキャンセルされたのかも分からず、当惑している」と話していました。

結局、120人もの報道陣はろくな取材ができずほとんど缶づめ状態で、そのうえ高いホテル代や食事代などの滞在費を払って金正恩に外貨を献上しているのである。

かくして、各国のメディアは北朝鮮の言いたいことをそのまま垂れながす機関紙、広報機関と化している。

しかし、政府の発表も国会質疑でも編集で歪めてしまう我がマスコミの現状を考えると、北朝鮮のやり方のほうが意図が正しく伝わるような気がする。

会場を直接取材すれば各社により書きぶりが大きくばらつくが、編集して凝縮した情報しかないから触りようがないだろう。

金正恩の発言内容をどう解釈するかは人により異なるだろうが、編集で言いたいことを凝縮した発言自体はほぼそのまま伝わってくる。

そして、それを読む限り、金正恩が思っていたよりはるかに強かで、ただのバカででもなさそうである。

キム第1書記 “北朝鮮は核保有国 今後も開発進める”
NHK 5月8日 18時54分

北朝鮮は9日、キム・ジョンウン(金正恩)第1書記が36年ぶりとなる朝鮮労働党大会で行った演説を国営テレビで放送し、キム第1書記は北朝鮮は「核保有国」だとする立場を改めて示し、今後も核・ミサイル開発を進めていく考えに変わりがないことを強調しました。

北朝鮮のキム・ジョンウン第1書記は、1980年以来、36年ぶりとなる朝鮮労働党大会で、6日と7日、みずから演説して党中央委員会の活動総括報告を行いました。

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、日本時間の8日午後、このときの演説を「特別重大放送」として放送し、キム第1書記の肉声で党大会での報告内容を伝えました。

この中でキム第1書記は「わが国は、侵略的な敵対勢力が核で自主権を侵害しないかぎり、先に核兵器を使用しないだろう」と述べました。

そのうえで、「国際社会において、核兵器の拡散を防止する義務を誠実に履行し、世界の非核化を実現するために努力するだろう」と述べ、「世界の非核化」に言及しました。しかし、キム第1書記は、4年前の就任直後に憲法を修正して明記した、北朝鮮は「責任ある核保有国」だとする立場を改めて示し、みずからの核開発を正当化しました。

そして、核開発と経済の立て直しを並行して進める「並進路線」について、「恒久的に堅持すべき戦略的な路線だ。核戦力を中心とする防衛力を固く築きながら、経済建設に一層拍車をかける」と述べ、今後も核・ミサイル開発を進めていく考えに変わりがないことを強調しました。

また経済に関しては、ことしから2020年までの5か年計画を推進し持続的な発展のための土台を作り上げるとしたほか、韓国との関係を巡って、前回の党大会でキム・イルソン(金日成)主席が提案した「高麗民主連邦共和国」と呼ぶ連邦形式などによる統一の実現を呼びかけています。

一方、キム第1書記は、演説の中で日本について、「わが民族への過去の罪悪を反省し謝罪すべきで、南北統一を妨害してはならない」と述べましたが、拉致問題など日朝間の懸案に関する言及はありませんでした。

北朝鮮については「側近を次々と残酷な手段で粛清する狂人が核のボタンを握っている」との強い懸念がある。しかし、核保有国の仲間入りをすることで国際社会での発言力を高め、同時にそれにより減らせる軍事費と人材を経済建設に回す「並進路線」という考え方は極めて合理的だ。

「責任ある核保有国」とか「世界の非核化」とかスローガンも実にうまい。よほど優秀な人材がそばにいるのだろう。とはいえ、本気で「並進路線」を進めるには北の経済力はあまりにも弱く、我が国も含めた各国の援助が必要だ。

我が国に対しては「わが民族への過去の罪悪を反省し謝罪すべきで、南北統一を妨害してはならない」と述べ拉致問題には触れなかったが、金正日の元専属料理人を使ってメッセージを送ってきている。つまり、経済援助を日本に期待しているのだろう。

労働党大会直前までミサイル打ち上げを続けてきた北朝鮮が、今度は核実験をやるのではと言われている。

しかし「責任ある核保有国」とか「世界の非核化」言い出したからには当面は控えそうな気がする。直前の打ち上げはコントラストを明確にするためだったのではないか。

なんとも厄介な存在ではあるが、金正恩が本気で「並進路線」を進める気があるのかどうかをしっかりと見極め、こちらも圧力と対話をうまく使い分けて対応していくしかなさそうだ。

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