「頑張る三代目」

画像の説明 国連制裁で包囲網が狭まるなか北朝鮮が偽札稼業を活発化させている。

今月、昨秋に発行されたばかりの中国の新札(100元)の精巧な偽札が中国南西部でみつかった。北朝鮮の偽札は「スーパーノート」と呼ばれる米ドル札(100ドル)が知られるが、最近は中朝国境で中国元が大量に流通している。

中国はメディアを使い、新しい偽札摘発を素早く公表、核ミサイルの挑発を繰り返す北朝鮮の“金づる”の取り締まりに容赦ない姿勢をみせている。

中国、摘発で金正恩氏に圧力か

中国メディアによると、偽造の新札は上海の西南部、浙江省紹興市の銀行で発見された。これまで中国元の北朝鮮製偽札は、国境を往来する中朝貿易や訪中する北朝鮮住民を通じて持ち込まれ、中朝国境地域で大量に流通していた。ただ今回は中国南西部で見つかっており、どんな経緯で紹興市の銀行に入金されたかなどについては、中国は明らかにしていない。

新しい中国元には最新の偽造防止技術が使われている。発見された偽札は極めて精巧に偽造されており、偽札鑑別機では判明しないレベルだったとされる。

北朝鮮は中国の新札が出るとすぐに偽造に着手しており、台所事情の苦しさが改めて確認された格好だ。

注目されるのは、中国側が積極的に北朝鮮製偽札の摘発を政府系メディアを通じ公表した事実で、そこには中国側の対北姿勢が伺える。

5度目の核実験やミサイル発射を予告するなど、金正恩氏が北朝鮮にとって最大の支援国である中国を一切、無視する態度をみせるなか、北朝鮮の不法外貨稼ぎの虎の子技術である紙幣偽造にクギを刺す「中国の金正恩体制の“締め上げ”が始まった」とみることも可能だ。

北朝鮮の偽札は技術的に「世界最高レベル」とされる。米ドルだけでなく、日本円や韓国ウォン、中国元などを大量に偽造し、マネーロンダリングで本物にすり替えている。

米ドルの場合、偽札をすり替えるのは北朝鮮外交官たちの仕事だ。韓国に亡命した元外交官によると、北朝鮮は「スーパーノート」を国家レベルで生産し、毎年、決まった時期に海路や陸路で専門の工作員が世界中の在外公館に振り分ける。

外交官らはこれを現地の金融機関で怪しまれない金額でいったん、本物の現地通貨に交換、その後、別の金融機関で本物の米ドルに替える。

一国の北朝鮮大使館で年間30億円ものマネーロンダリングを行った例もある。中国元は中朝貿易で北朝鮮の国内に大量に流通しており本物とのすり替えが容易で近年は激増中だ。

中朝関係が目に見えて悪化してきた

習近平体制の中国が北朝鮮の金正恩体制に“警告”を発していると思われる事例がもう一つある。今月初旬に中国で発生した北朝鮮レストランからの従業員13人の集団脱走事件だ。

13人も浙江省寧波市で働いており、その一人は韓国の調査に「対北制裁が強まり、北の体制にはこれ以上希望がないとみて、希望のあるソウルにきた」と供述しているというが、彼女たちの出国を中国は黙認し、意図的に見逃していた。

中国外務省の報道官は今月11日、彼女らの出国について「13人は合法的な旅券で出国した」と発表している。北朝鮮から派遣された従業員が第三国に出国するとは、北朝鮮からの脱北に他ならない。脱北者を北朝鮮に送還してきた中国が、脱北に手を貸したことになる。

この黙認でアジアの第三国に脱出した彼女らはその後韓国入りした。中国には北朝鮮経営のレストランが約100軒あるが、今回の中国政府の対応から“集団脱走”が今後も続く可能性が指摘されている。

3月初旬の国連制裁開始から約1カ月余り、中国内の北朝鮮レストランでは急激に客足が減っており、中朝国境に近い東北3省では廃業に追い込まれたレストランが出ているという。

中国側が店を使わなくなったほか、韓国からの観光客も利用と避けるようになったためだ。これに伴い、レストランの北朝鮮女性従業員の姿が消える現象が起きている。その数はすでに数十人とされる。

現在、国連制裁が対象として指定した北朝鮮の機関の中心は朝鮮労働党39号室、北朝鮮の外貨稼ぎを担う部署だ。密貿易や鉱山などのほか、海外の北朝鮮レストランや麻薬、偽造通貨も管轄している。

これらの資金は金正恩氏の統治資金となっている。中国がいま、偽札の摘発や北朝鮮レストランの従業員脱北に手を貸すのは、これらの資金が金正恩氏のサイフに直結しているためで、北朝鮮経済を生かさず殺さすコントロールしてきた中国が「いつでも息の根を止められる」と警告しているに等しい。

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