「なすりあい」

画像の説明 砂問題で難航中のサウジ高速鉄道。建設を請け負うスペインのコンソーシアムは内部分裂状態に

現在スペインから12社が参加してサウジアラビアで建設中の高速列車(AVE)建設計画だが、依然として線路に溜る砂漠の砂の問題が解決しないままである。いやそれどころか、コンソーシアム側の不協和音が酷いことになっている。

線路の建設を担当した大手建設会社OHLはコンソーシアムの他社11社に自社がこの砂の除去作業を無料でする意思がないことを書面にて通知したのだ。

その中で、〈「機関車を生産したTalgoが試運転をしたいのであれば、彼らがその費用を負担すべきだ。OHLは他社の為に自社がその費用を負担する用意はない」〉と言及したという

これまでもコンソーシアムを構成する12社間の関係は円滑に進んでいなかった。そして、今回のOHLの他社を顧みない姿勢にこれまで欝積していたコンソーシアムの内部でOHLへの不満が爆発。何故なら、これまでもOHLは12社の中で作業に一番障害をを持ち込んでいたからだ。

それに対して、OHLは「線路に影響する排水溝や勾配などに伴う(問題発生の場合の)費用はOHLが請け負うが、線路に溜った砂を取り除く作業についてはその合意条件に含まれていない」と答えたのだ。

◆最初からハリボテだったコンソーシアム

そもそも、スペインの12社から成るコンソーシアムは、その組織について当初から問題が指摘されていた。

というのも、コンソーシアムを構成する企業は公営、半官半民、民間が一緒になっての構成であるから企業意識は異なる。しかも企業の規模は大企業から中堅企業まである。要するに、一丸となって取り組める組織体制になっていないということだ。『El Confidencial』電子紙のラファエル・メンデス記者はこのコンソーシアムの企業構成を見て〈「これは12社が集まっての正にフラケンシュタインだ」〉と記事の中で指摘している。

そもそも、スペイン人が2人集まると3つの意見が生まれると言われるくらいスペイン人をひとつの方向に一致団結させることなど困難である。

だからスペインで事が上手く運ぶには上から命令する独裁者が必要なのだとさえ言われている。この12社から成るコンソーシアムにはリーダが不在だと当初から言われていたという。独裁的に命令出来る人物がいないのだ。

発注側のサウジの方でもスペインのコンソーシアムの頭が見えないことに不満を伝えていたという。

2014年のクリスマスシーズン中にサウジ側は工事の遅れとコンソーシアムのリーダーの不在に不満が爆発。契約を解除する用意があるとコンソーシアムに伝えて来たのだ。

そこで、スペイン政府がリーダーに任命した人物がコンソーシアムをいっそう酷い有様にした。

◆ライバル会社トップがリーダーになり不協和音が加速

スペイン政府がコンソーシアムのリーダーCEOに任命したのはスペインの大手建設会社FCCの出身でリヤドで地下鉄建設工事を指揮した経験をもつサンティアゴ・ルイス氏だった。彼はサウジ側のアブドゥラ・アル・ムクベル運輸相を良く知っていたということも彼が選ばれた理由でもあった。

しかし、FCCはもともとOHLのライベル企業だ。OHLが、FCCで勤務経験を持つルイス氏に素直に従う意思は見せない状態が続いているというわけだ。

機関車、車輌、それに関係した設備や器機を生産する3社Talgo、Renfe、Adifは建設工事が終了したあとも12年間のメインテナンスサービスを続けねばならない。

即ち、その期間の砂の問題はこの3社で解決せねばならないことになる。一方で、現在問題を提起しているOHLは建設工事が終了すれば引き揚げることになっている。

巡礼地メッカとメディナを結ぶAVEは450kmを走行せねばならない。117kmから227kmの地点の100km間が砂漠の砂の影響が最も強い地点とされている。

そこでは〈1mごとに年間で15tの砂が堆積する〉と予想され、運行に最も危険な区間だという。Talgo、Renfe、Adifはこの砂の除去作業に12年間付き合わされることになるのかもしれない。

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