「ゾンビ企業」

画像の説明 中国の影の銀行(シャドーバンキング)セクターは、金融システムの中心にリスクを蓄積しつつ、市場から退出すべき「ゾンビ企業」を生き永らえさせている。

いわゆる「理財商品」への投資総額は昨年、57%増加して3兆6000億ドルにも達した。この伸びの大きさだけで十分心配に値するが、それだけでなく調達された資金の大半が、問題のある借り手を支えていることが最新のデータからうかがえる。

中国において理財商品は短期の投資先だ。通常は銀行を通じて販売され、現金のほかに国債や社債、デリバティブ(金融派生商品)が裏付け資産となる。銀行にお金を預けるよりも良いリターンが得られるとして、長らく個人投資家の間で人気になってきた。

中国政府証券預託信託清算会社が最近公表したリポートは、理財商品セクターがいかに巨大化したかを物語っている。このセクターの運用資産は過去2年で倍増し、中国の銀行預金量の約17%に達した。

こうした活況は幾つかのリスクをはらんでいる。最初の問題は、理財商品の償還期限が裏付け資産よりも短い傾向にあることだ。昨年の理財商品の平均償還期間は3カ月半で、投資総額のおよそ半分弱に相当する1兆5800億ドルが早々に期限を迎える可能性がある。

次に、多くの個人投資家は理財商品の販売元の銀行と契約する際に免責条項にサインさせられたとしても、銀行が元本を保証していると信じている点が挙げられる。実際これまでのところは、大半の投資は全額償還されており、こうした見方が正しいことが証明されている。

だからこそ、理財商品は信頼が突然失われる事態に対する脆弱性が非常に大きい。それが起きれば、最近の理財商品セクターを主に拡大させてきた中堅銀行の流動性がひっ迫する恐れがある。フィッチの試算では、中堅銀行が販売した理財商品の昨年の残高は預金量の40%を占めている。国有銀行はこの比率が15%だ。

中国の影の銀行に関しては、急成長している民間企業に資金を提供する不可欠の存在だという擁護論が聞かれるが、データでは違った実態が示されている。理財商品で調達された資金を最も借り入れているのは不動産関連企業なのだ。重工業や道路・鉄道などの長期プロジェクトにも多くが流入している。

中国政府が経済成長の目標達成に向けて貸し出しを促進している中で、理財商品は増加が続く可能性が大きい。しかし付随するさまざまなリスクを踏まえると、いつまでも「影」の存在にとどまりそうにはないだろう。

●背景となるニュース

*中国政府証券預託信託清算会社が2月25日に公表したリポートによると、理財商品の販売額は57%増加して昨年末までに23兆5000億元(3兆6000億ドル)に達した。2年連続の2桁増で、伸び率は2014年の47%を上回った。

*毎週3500本前後の理財商品が新たに登場する。投資される資金の60%超は個人投資家からで、銀行預金よりも高い利回りが魅力になっている。ただ理財商品の約75%は元本を保証していない。

*リポートによると、理財商品で調達された資金のおよそ38%は不動産関連産業に、10%前後は石炭や鉄鋼、石油精製などの重工業に向けられている。

*昨年の理財商品の残高のうち中堅銀行による販売の比率は42.2%で、大手国有銀行分(36.9%)を初めて上回った。

*フィッチの試算では、理財商品に投じられた資産の総額は昨年末時点で中国の銀行預金量の16.8%で、昨年6月の13.6%から上昇した。

また中堅銀行が販売した理財商品の昨年末の残高は預金量の40%、国有銀行はこの比率が15%。フィッチは理財商品セクターの伸びが中小銀行にとって「重大なリスク」だと指摘した。

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