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「赤信号」

画像の説明 台湾南部で6日発生した地震で倒壊した高層マンションの14階に住んでいた若い夫婦は、以前から同マンションの安全性が疑わしいという手掛かりを得ていた。

だがそれも、今となっては手遅れとなってしまった。

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Chen Yi-tingさん(35)と夫のLin Wu-chongさん(38)は5年前、台南市の中心部にあるこの17階建てマンションの1室を購入したが、住宅ローンを借りる際にちょっとした問題が起きた。最初に訪れた銀行では、理由も告げられずにローン申請を断られた。結局はローンの組める別の金融機関を見つけることができ、夫妻は幼い娘と一緒にマンションに移り住んだ。

だがChenさんの母親によると、建築がずさんなため、同マンションに入居する人からのローン申請は却下する方針であったと、最初の銀行と関係がある夫妻の友人の一人がまもなくして教えてくれたという。

現在、夫妻は市内の別々の病院で集中治療を受けている。Chenさんは頭がい骨にひびが入り、Linさんは肺を損傷した。

2人の7歳になる娘は帰らぬ人となった。

「彼らのように市外から移り住んできた人たちには、以前に何が起きていたか見当もつかない」と、Chenさんの母親は集中治療室の外で待つ間に語った。

「最初のデベロッパーが倒産して、次の業者が建物を完成させたことなど、当初は知る由もなかった。彼らが知ったのは、契約書にサインした後だった」

6日未明にマグニチュード(M)6.4の地震が発生してから、救出活動の現場は主にこの築20年のマンションだ。同マンションで少なくとも24人の死亡が確認され、今なお100人以上ががれきの下に取り残されている。

人口約200万人の台南市で、全壊した主な高層ビルはこのマンションだけだ。

61歳の母親は、地震が起きる以前から、マンションの住民が壁のタイルのはがれやエレベーターの不調、パイプの詰まりといったような数々の問題について、ずっと不満を訴えていたと話す。

Chenさん夫妻は350万台湾ドル(約1230万円)でマンションを購入した。

「私たちは単純だから、(最初にローンを断られても)何か他に理由があるとは考えなかった」と、母親は語る。

<壁から食用油の缶>

台南市は、同マンションが合法的に建築許可を取得しており、今回よりもはるかに破壊的だった1999年の地震に耐えられたとしている。台湾中部を震源とする同地震では、2400人が死亡し、同国全土に被害をもたらした。

「市の記録では、(マンションに)何も問題ない」と、台南市公共事業部門の当局者は語った。

マンション倒壊の調査を台南市から依頼された建築家、Hsu Yin-hsuanさんは、同市が99年の地震の後に、今後の地震対策として市庁舎を強化するために費用を投じたが、「民間所有の建物には同じことは起こらなかった」と指摘する。

市の記録によると、同マンションは92年に建築許可を得て、2年後に完成した。

建設に携わった主な2つの建設業者は倒産している。

ロイターは倒壊現場で、壁のなかに大きな長方形の食用油の缶が詰め込まれているのを目にした。建築材料として使われていたものとみられる。

99年の地震でも、台湾各地の一部の建物で、食用油の缶が壁内の詰め物として使われていたことが明らかとなっていた。

台南市の頼清徳市長は、検察当局に調査するよう求めたほか、マンション構造を調べるため土木技師を3チーム雇ったとし、「完了したら、責任のあるべき人を処罰する」と語った。

同マンションを建設中から知っているという隣に住む70歳の女性は、近所の人たちといつもその出来栄えに疑念を抱いていたと話す。

「出来上がったとき、外部から来る人しか買わないだろうと見て思った。地元の人は絶対に買わないとね」

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