「詐欺まがい錬金術」

画像の説明 マラッカ市政府は中国の習近平政権が提唱する「一帯一路」構想やその推進機関となるアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立を奇貨として、中国資本の誘致政策を推進している。地元民の大半が中国語を話すし、観光客の多くは中国人団体客である。

「もはや中国の一部も同然か」という感ありだが、現地紙を読んでみると、市長が釈明に追われていた。

若者の間では「埋め立ては中国の軍港の建設のためではないか」「中国による新植民地主義を拒否する」との反発がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて広がっているのだ。

対中一体化が進む台湾では、18日に総統選挙が行われ、圧倒的多数が中台交流による経済利益を強調する国民党候補に「ノー」を突きつけた。大陸の情報ネットに台湾が組み込まれて思想や表現の自由が失われると若者たちが反発した。

同じ日、北京でAIIBの開業式典が行われた。

AIIBのシンボルは「点石成金(石を金に変える)」の記念碑という。指導者が指を差すと石が金に変わるという中国の故事によるらしいが、「成金」とはよく言ったものだ。

インフラ投資資金の欲しいアジア各国に加え、利益欲に駆られた英国、ドイツなど欧州が率先して参加したのだから、なるほど、石を金に変えられるとの皮算用がAIIB参加国に共通しているのだろうが、元手がいる。

AIIBは今年、15億ドル(約1760億円)以上の資金調達を計画している。日米が参加していないことから、米国の債券格付け機関はジャンク(紙くず)債並みの信用度しか認めない。金立群AIIB総裁は、「中国国内で200億~300億ドルを低金利で調達できる」と昨秋に大見えを切ったのだが、北京自体、火の車である。

人民元安とともに巨額の資金流出が加速している。中国の外貨準備高は昨年末約3・3兆ドル(約388兆円)だが、対外負債の約4・4兆ドル(約517兆円)を下回り、中国から外資が引き上げると底を突く。

残る一手は、国際通貨基金(IMF)から国際利用可能通貨のお墨付きを得た人民元資金の活用だ。しかし、元の金融市場はがんじがらめに規制され、使い勝手が悪い。金融・資本の自由化と情報の自由がない市場は不透明で、北京の意志次第で動く。だれも投資したがらないはずだ。

金AIIB総裁は「日米の参加は今からでも遅くない」と秋波を送ってくる。

AIIB参加論の朝日や日経などは同調するかもしれないが、筆者はこう答える。「石を金に変えるためには、自由という触媒が欠かせない。詐欺まがいの錬金術には乗るわけにはいかない」と。 

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