「ミツバチ」

画像の説明 オーストラリアの主要な科学研究機関とインテルが、世界の食の安全を脅かす謎の解明に向けて協働

ミツバチのいない世界を想像してみてください。 ミツバチがいないということは地球環境にとって悲劇とも言える事態であり、蜂蜜が大好きな人にとってはかなりの痛手でしょう。しかし、それが世界の食糧供給にとって大きな脅威であることを認識している人は多くありません。

国連の調査によると、世界で供給される食糧の 90% にあたる 100 種類の農作物のうち、71 種類がハチによる受粉に頼っていると推定されています。 果物、野菜、ナッツ類などがその代表的なものです。

ところが現在、ミツバチの数がかつてないペースで減少しており、その原因はよく分かっていません。 では、どうすればミツバチを救うことができるのでしょうか?

この謎を解明するため、オーストラリア連邦科学産業研究機構 (CSIRO) とインテルは、共同で Global Initiative for Honey bee Health (GIHH) を発足しました。

「ミツバチの蜂群数は、米国だけを見ても、年間約 25% も減少しています。 1940 年代以降、蜂群数は減少の一途をたどっており、状況はますます悪化するばかりです。私たちが食べる多くの果物や野菜の成長に重要な役割を果たしている野生のミツバチ (特にマルハナバチ) も危機に瀕しています」と、CSIRO の科学主任、パウロ・デ・ソウザ教授は説明します。

パウロ・デ・ソウザ博士による巣箱の検証

GIHH は、こうした深刻な事態に対処するために設立されたのです。 プロジェクトの最優先事項は、 共通のテクノロジー・プラットフォームを使用することで、世界中の研究活動を 1 つにまとめることです。

そこで、CSIRO と GIHH のメンバーはインテルの IoT テクノロジーを生物 (この場合はハチ) に適用しています。 その目的はデータを収集して分析することですが、データは機械や器具からではなく、ハチから収集されます。

崩壊する蜂群 (ほうぐん)

最終的な目標は、ミツバチの個体数が減っている原因を特定し、問題を解決することです。

研究者の間では、「蜂群崩壊症候群」と呼ばれる現象が、ミツバチに悪影響を及ぼしていることが知られています。蜂群崩壊症候群は、短期間に大量のミツバチがいなくなる現象です。

「蜂群崩壊症候群を引き起こしている主な要因、または複合的要因についてははっきり分かっていません。 分かっているのは、巣箱から突然蜂が姿を消してしまったり、蜂が全滅してしまう現象が日々起こっているということだけです」 (デ・ソウザ博士)

研究者たちは、ハチの生態を脅かす個々のストレス要因については把握しているものの、1 つの研究団体がそのすべてを調査するのは現実的でなはありません。そこで、

「この調査にはグローバルな取り組みが欠かせません。解決策を探すには、テクノロジーとデータを活用する必要があります。 手遅れになる前にやらなければなりません」と博士は語ります。

GIHH が世界中の研究者、養蜂家、農業経営者、民間企業を 1 つにまとめようとしている理由がここにあります。

GIHH のメンバーにはハチ用のマイクロセンサー・キットが渡されます。

このキットには、切手より少し大きいサイズのカスタマイズ可能なコンピュート・プラットフォーム、インテル® Edison ボードが同梱されています。

GIHH メンバーは、マイクロセンサー・キットを巣箱の中に置き、蜂の背中に取り付けた小型の無線 IC (RFID) タグでハチの行動を観察します。

デ・ソウザ博士は、センサーを航空機のフライトレコーダーやブラックボックスに例えてこう説明します。「ハチに装着した RFID タグから、巣箱の中に設置されたインテル® Edison ボードにデータが送られます。 これによって、蜂群が崩壊する前に、ハチに何が起こったかについて重要な情報を得ることができるのです」

その中には、巣箱の周りの温度や湿度などの環境に関する情報が含まれます。 デジタルリーダーを利用することで、研究者はミツバチの移動や行動、さらには殺虫剤や水質汚染、食べ物、ハチの生態や受粉能力に影響を与えるその他の要素など、さまざまなストレス要因に対する反応を把握することもできます。

「世界中の科学者にとってのインテル® Edison ボードのメリットは、例えば風速や巣箱の重さを調べたいとき、そのテスト対象に応じて環境センサーを追加できることです。おかげで科学者は、いつでも巣箱の中のハチの個体数や蜂蜜の量を測定できます」と博士は説明しています。

データがミツバチの保護に有益な情報を提供

インテル® Edison ボードからデータを収集した後は、CSIRO のクラウド・プラットフォームにデータを転送して分析とモデリングを行います。

デ・ソウザ博士によると、研究者たちは他のプラットフォームを試しているようですが、インテル® Edison テクノロジーはこのプロジェクトに非常に適していたと言います。

「インテル® Edison ボードには電力消費量が低いというメリットがあります。離れた場所でマイクロセンサー・キットを使う研究者がいることを考えれば、非常に重要なポイントでした。小型で、信頼性が高く、ワイヤレス対応で、柔軟にプログラミングできることが、このテクノロジーを選んだ決め手です」と博士。

CSIRO の研究への取り組みは約 18 カ月間続いています。

「インテル® Edison ボードと RFID タグで収集されたデータにより、ミツバチが減っている理由がより明確に理解できるようになり、養蜂家、一次生産者、業界団体、政府にミツバチの個体数を保護するベストな方法について有益な情報を提供することができます」 (デ・ソウザ博士)

グローバルな食糧供給の確保に向けて

CSIRO は、インテルのプラットフォームを利用することで、研究をさらに進めることもできました。 デ・ソウザ博士によると、現在までに、タスマニアに生息する 10,000 匹のハチに RFID タグが装着されているそうです。

「いま、これまでの調査結果に関する論文をまとめているところです」と言う博士は、アマゾンのハチの観察にも同じテクノロジーを使っていると付け加えています。

この取り組みの重要なポイントは、科学者が研究の成果をグローバルに共有することです。 このプロジェクトにはすでにオーストラリア、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コスタリカの研究者が参加しており、ヨーロッパ、アメリカ合衆国、その他の多くの国々からも参加者が相次いでいます。

「私たちの活動は、世界中の研究者が同じテクノロジーや同じデータ手法を使って共同研究できる場を作ることです。 みんなで協力し合うことで、世界の食の安全に対する最大の脅威の 1 つを解決できるのです」 (デ・ソウザ博士)

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