「危ないね」

画像の説明  国際通貨基金(IMF)は30日に中国人民元の特別引き出し権(SDR)採用を決める見通しだが、国内外の政策当局者からは今後改革がこの数カ月のようなペースを保つことはなさそうだと冷めた声が聞かれる。

改革への抵抗は強まっており、SDR入りの目標達成でこれ以上リスクを冒す必要はないためだ。

IMFによる人民元のSDR採用で、改革派が保守派の支持を取り付けるために利用してきた「国家の威信を高める」という重要なインセンティブは失われる。

しかしより深刻なのは、このように経済が減速しては人民元の自由な交換を認める踏み込んだ改革を成し遂げることはできないとの懸念が中国政府内に存在することだ。

政策協議に参加したエコノミストによると、政府は既に資本移動に関する実験的な姿勢を急速に失いつつある。

中国の株式市場は夏場に40%以上も下落したが、原因は悪辣な外国資本と指弾する声が多い。その後規制当局は人民元売り圧力に対抗するため資金を国内に留め置くのが難しくなり、オンショアとオフショアの両方の市場で介入を実施した。保守派ばかりではなく開放支持派も改革の一時停止を求めている。

中国国際経済交流センターのシニアエコノミストは「中国の金融リスク管理能力はまだ改善の余地がある」という。「資本勘定の完全自由化を急ぐことは、金融リスク管理にとって好ましくないだろう。われわれは非常に慎重に取り組むことになる」と述べた。

一方、IMFは人民元のSDR採用で中国の経済改革の取り組みにお墨付きを与えるとともに、改革進展に弾みが付くことを期待している。

人民元はSDRへの組み入れで需要が6000億ドル以上膨らむと試算するエコノミストもいる。また中国メディアは国内債券市場に1兆元(1560億ドル)以上の資金が流れ込むと予想している。ただし、これらの推計はいずれも資本勘定改革の継続を前提としている。

先進国出身のIMF当局者は「人民元のSDR採用で改革推進派は優位に立ち続けることができる。党内保守派の回帰はない」と話す。

IMF理事会で中南米・カリブ海諸国の代表を務めるオタビアーノ・カヌート氏も「IMFの今回の決定を中国の改革のゴールとみなすのは本末転倒だ」と述べた。

中国は他の国とのスワップ協定締結や人民元の変動幅拡大など、人民元の国際化に取り組んできた。しかし中国の政策アドバイザーの間では外資への市場開放をどこまで進めるかをめぐり常に意見が割れてきた。国有銀行など有力な業界の間には、資本市場の自由化で国際的な競争にさらされ、事業から締め出されるとの不安が静かに蔓延している。

チャイナ・ベージュブックのチーフエコノミスト、デレク・シザーズ氏は「中国の改革派はある程度国際的な地位を高め、とりわけ日本と肩を並べるために(人民元のSDR入りを)売り込んだ」 と指摘。IMFが中国は国際的に通用する通貨を持った国だと認定すれば、これ以上リスクを取ることはないとの見方を示した。

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