「監督」

画像の説明 銀行界で持ち合い株に対する包囲網が急速に狭まってきた。金融庁による“ダメ押し”も加わり、メガバンクの動向に注目が集まっている。

金融行政方針には、「政策保有株式の縮減に向けた取り組みが着実に進展するよう、金融機関との深度ある対話を行っていく」とある 

今年9月、金融庁は「金融行政方針」を公表した。今後1年間の政策で何を目指し、どう実現していくかを周知する狙いがある。

そこで取り上げられたテーマは、ガバナンス改革や会計監査の在り方、地方創生にIT活用など多岐にわたる。その中で、金融庁が3メガバンクに名指しで突き付けたのが、政策保有株式、いわゆる持ち合い株の縮減だ。

取引先との関係強化を狙った株式の持ち合いは、多くの業界・企業でいまだに残っている。その問題点として、「物言わぬ株主」を生み、企業の資本効率を落とすという批判があるが、銀行の場合はそこに特殊事情が加わる。不況期に株価下落による財務体質の悪化を招き、貸し渋りや貸し剥がしに走る原因になりかねないのだ。

国際的に見て、3メガは自己資本(Tier1)に対する持ち合い株の割合が高く、その影響も大きい。欧米のグローバル金融機関が10%を切るのに対して、3メガは40%を超えるのだ。

持ち合い株の多さが、「雨の日に傘を取り上げる」とやゆされ、不況を深刻化させる銀行の体質につながっていることを、金融庁は問題視しているというわけだ。

社外取締役も厳しい視線

実は金融庁は、7月に公表したレポートでも同様の問題提起をしている。その時点では、1年間のモニタリング(監視)で得た検証結果や課題という位置付けだったが、今回ついに金融行政の重点施策に“格上げ”されたかたちだ。

社外取締役も厳しい視線

また、メガバンクがガバナンス強化に取り組んできた中で登用してきた社外取締役たちも、持ち合い株には厳しい視線を向けている。

例えば、持ち合い株について、「保有しないことを基本方針とする」と公表したみずほフィナンシャルグループ(FG)だ。その強い意思表示は、「社外取締役の意向が色濃く反映された結果」(みずほFG関係者)だという。

それ以外にも、持ち合い株解消を株価上昇の材料にしたい政府や市場関係者などもプレッシャーを強めており、メガバンクにとってはまさに“四面楚歌”の状況だ。

不良債権問題も過ぎ去り、メガバンクに対する金融庁の監督の目は、かつてと比べると緩くなりつつある。ある金融庁幹部は「規制でビジネスの邪魔をしないようにして世界で戦ってもらう」「同じ金融規制当局として、海外の当局との間に立ってサポートすることもいとわない」といった見解を示す。

けれども、そんな中にあって、持ち合い株は長らく根本的解決を見ない“問題児”。金融庁がついに決着をつけに動くのか、この1年でその本気度が見えるはずだ。

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