「現実」

画像の説明 東西冷戦の長い年月、北米と西欧の諸国が「一国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなして共同で反撃する」という集団自衛を誓約した多国間同盟である。

集団的自衛権の行使可能な態勢でソ連の強大な軍事脅威をみごとに抑止し、東西両陣営間の平和を保った。

米国のブッシュ前政権時代、そのNATOに国防総省首席代表として駐在したブルース・ワインロッド元国防次官補代理に日米の集団的自衛権について問うてみた。日本の安全保障関連法に対し「日本は自国の安全に関係のない米国の戦争に巻き込まれる」という日本側の一部の主張への考察だった。

「たとえ米国独自の戦争や紛争への他国の支援が必要な場合でも米国の軍事能力は全世界的であり、その対象地域を主眼に米軍主体の態勢を組むため、その地域に直接関わりのない国の軍事支援を求める必要がありません。例えばバルカン半島の紛争に日本の軍事支援を要請する理由がないのです」

「米国側でも従来、米国自体のグローバルな安保上の責任を日本に支援してほしいという期待はまったくなかった。しかし日本の防衛に直接に資する米国の安保努力への日本の支援への期待はずっとありました。日本自体の国家安全保障が影響を受ける状況下での米国の防衛努力にも日本が集団的自衛権の禁止を理由に協力をしないという状態がこのまま続けば、米国民や議会の多数派は自国が日本防衛のためになぜこれほどの軍事関連資産を投入し続けるのかという疑問を必ずや提起することになったでしょう」

同氏はそして「もし日本がいつまでも集団的自衛権の行使容認を拒むならば、日米同盟の基盤はやがて確実に深刻な侵食の危険に直面することになったでしょう」と強調した。

だが奇妙なことに日本では同盟相手の米側のこうした一枚岩といえる反応は与党からもまず提起されないようなのだ。

ワインロッド氏は「ジャパン・ソサエティー」研究員として日本に約半年滞在し、日米防衛問題を研究した。その経験を踏まえた感じでさらに語った。

「もし米国が軍事的支援を要請しても、今回の日本の安保関連法では日本の安保利害を左右する、あるいは存立にかかわる事例でなければ、日本はなにもできない。さらには拒むことができる。実際に米国のその種の要請を同盟国が断ることは頻繁にあります」

同氏は米国が日本を自国への意味の少ない軍事紛争に無理やりに関与させる可能性は現実にはないと明言するのだ。米国が日本に支援を求めうる事態としては同氏は日本の安全保障に明らかに重大な影響を及ぼす中国や北朝鮮による軍事攻勢、日本自体にも害を与える国際テロだけを指摘した。

同氏は米側がオバマ政権はじめ議会でも超党派で日本の今回の安保関連法の成立を日米同盟の強化、さらには年来の片務性の縮小として歓迎していることを強調した。

そのうえで日本側の同法反対派の主張どおりに日本の集団的自衛権の行使禁止を続けた場合の危険について語るのだった。

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