「拡大理由」

画像の説明  「3カ月に1本ずつというのは、かなりのハイペース。ANAは無理をしているのではないか」(ある航空関係者)

目下、全日本空輸(ANA)が急ピッチで国際線を開設している。2015年度は、上期に成田~ヒューストン、クアラルンプール、下期には成田~ブリュッセル、羽田~シドニーと4本の新路線を開設する。

羽田空港の国際線発着枠が大量に供給された14年度こそ路線開設ラッシュに沸いたが、15年度もペースを緩めず、13年度比で2倍のペース。新規に拠点を開設するとなれば、空港での整備やオフィス体制を一からつくり上げることになり負担は大きい。

ANAを拡大路線へと駆り立てるのは、17年度から想定される日本航空(JAL)の反転攻勢だ。

経営破綻後、V字回復を遂げたJALは、16年度末まで国土交通省の監視下で新規投資や路線開設を制限されている。JALが身動きが取れないうちに、目いっぱいシェアを広げておこうという思惑があるというわけ。結果、ANAは、14年度から16年度までの3年間で国際線の供給量を45%も拡大する計画をぶち上げたわけだ。

仕方なく路線を増強

だが、急な路線開設の裏側には、JALの脅威だけではない、ある“誤算”が拍車をかけた。

「日米航空交渉が棚上げになり、14年春と期待されていた羽田から米国への路線開設が今もって実現していないことが影響している」とANA関係者は明かす。

日本と米国を結ぶ太平洋路線は、東南アジアから日本を経由して米国へと向かう乗り継ぎ客が多い。羽田から米国に就航できなくなったことから、ANAは仕方なく成田~ヒューストンを開設、それに伴って乏しかった成田から東南アジアへの路線も増強せざるを得なくなったのだ。

対するJALは、破綻で痛い目に遭っただけに保守的だ。

これは、機材戦略にもハッキリと表れている。ANA、JAL共に最大サイズだったジャンボ(ボーイング747)を退役させ、現在、保有する最大サイズの旅客機は777-300ERとなっているが、ANAは19機保有するのに対して、JALは13機にとどまる。

15年3月期の営業利益でJALは1796億円と、ANAホールディングスの倍近くをたたき出しているにもかかわらず、である。「うちは、破綻して以降、景気のいいときに稼ぐよりも、不景気時に赤字を出さない戦略にかじを切った」(JAL関係者)とし、路線拡大にも否定的だ。

好景気が奏功し、現時点でANAの新規路線はいずれも好調だ。だが、ひとたび何か起これば需要が激減するイベントリスクもある。そうした事態に備えながら拡大しなければ、ライバルと同じ道を歩む可能性もあるといえる。

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