「混乱」

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中国が外国の軍隊を軍事パレードに招くのは今回が初めてだそうなのですけれども、それだけに軍を派遣した国は中国との蜜月をアピールすることになります。

ところが、軍を派遣すると言った国は、ロシア、モンゴル、ベルラーシ、カザフスタン、キルギスの5ヶ国。そのうちロシア、カザフスタン、キルギスは上海協力機構のメンバーですし、その他の国も中国の周辺に位置する国です。他国と比べて元々関係が深かったということですね。

特に、ロシアが中国に軍人を派遣して軍事パレードに出席することは始めてだそうですけれども、中国は5月にモスクワで行われた対独戦勝記念式典での軍事パレードに102人の三軍儀仗隊を派遣していて、今回のロシア軍の派遣はその返礼とみられているようです。したがって返礼ということであれば、同等の軍を派遣することになりますから、おそらく儀仗隊相当の軍を派遣することになると思われます。

7月30日の段階では、中国国防省の楊宇軍報道官が軍事パレードについて「ロシアなど多数の国から部隊を派遣すると表明があった。…特定の国を標的にしたものではなく、客観的な態度で見てほしい」と述べていますけれども、5ヶ国からの部隊派遣を持って"多数"といわれても、本当ですかと聞き返したくなりますし、"特定の国を標的にしたものではない"のであれば、"抗日"という言葉は不要だと思いますね。

「習近平が皇帝即位を宣言するとき」や「中華帝国の野望と来るべき世界」のエントリーで、この軍事パレードは、習近平の"皇帝即位式"であり、参加した他国の首脳はそれを讃える出汁にされるかもしれないと述べたことがあります。

まぁ、軍隊以外にどれくらいの国の首脳がパレードに参加するのかは分かりませんけれども、参加が決まっている国々が多数あるのであれば、本番迄あと2週間くらいの今の段階で公表してもよさそうに思われます。

8月5日の段階ですけれども、ロシアメディアによれば、EU各国は、中国の軍事パレードの招待を受け入れないとし、ただチェコのミロシュ・ゼマン大統領だけが中国の要請に応じたと報道されているところをみると、もしかしたら、参加表明した国が少な過ぎて、中国当局がまだ発表できないのかもしれませんね。

ところが、同じ中国発でもAIIBには多数の国々が参加を表明しています。つまり、AIIBには参加するけれど、軍事色が強いパレードには参加しないという国が相当数いるということです。

まぁ、口の悪い言い方をすれば、中国の呼びかけに集まった国々は金目当てだった可能性があるということですね。

また、それ以外にも、アメリカが水面下で、このパレードに参加しないよう各国に要請していたという報道もあります。

4月末に安倍総理がアメリカ連邦議会の上下両院合同会議で演説した後のエントリー「境界の彼方 未来篇」で、日米両国は共にニューワールドオーダー、"境界の彼方"に向かう意思を世界に示したとして、「アメリカが本当にそう思っているのかどうかは、中国の抗日戦勝70周年式典に参加するかどうかで分かる」と述べましたけれども、自国のみならず、他国にも不参加を要請していたともなれば、相当本気になっているとみていいかもしれませんね。

8月15日、安倍総理は岸田外務大臣と会談し、安倍談話について、欧米や東南アジアなどの多くの国が談話を歓迎したり、評価するコメントを出しているとの報告を受け、引き続き各国の反応を注視するよう指示したそうですけれども、過去の清算も述べた安倍談話を歓迎して、抗日式典に参加するのは筋が通らないですからね。

まぁ、各国の本音のところがどうであれ、多数の国が安倍談話を受け入れ、中国の抗日軍事パレードには不参加とした時点で、形的には安倍談話で示された過去へのケジメと未来志向を世界が受け入れたことになるわけです。これは結構大きい。世界が、ニューワールドオーダー、"境界の彼方"にいくと示したわけですからね。

逆に、これで苦しくなったのは中国です。皇帝即位式だった筈の抗日式典への参加国が予想以上に集まらない上に、AIIB不発、上海株暴落、天津大爆発と踏んだり蹴ったりの状況です。

これは習近平主席の求心力を大きく削ぐことになると思いますね。

このままいけば、悪くすれば、抗日式典、すなわち"習皇帝即位式"は失敗と見做される可能性があります。そうなると、一転、習近平主席の立場は苦しくなる。反習近平グループが力を盛り返し、協力して反旗をひるがえすことはもとより、下手をすれば、習近平側だった勢力から寝首をかかれることだってないとはいえません。

当然、習近平主席は主席で、これまでの腐敗撲滅運動にかこつけて、今まで以上に反対派を粛清していくのではないかと思われます。さもないと自身の身が危うくなるからです。要するに、権力闘争が更に激化するということですね。

特に今回の天津大爆発によって、軍のクーデターに依らなくても、経済特区の機能をマヒさせるだけで、習政権に大ダメージを与えられるとなれば、反習近平グループは、これまで以上に其の手の"爆発"や"混乱"をあちこちで仕掛けてくることも考えられます。

いよいよ中国の内乱の可能性を警戒したほうがよいかもしれませんね。

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