【2015年、空き家問題はどうなる?】

画像の説明 近隣に害をまき散らす “問題空き家”が増加中

課税強化や法整備が進み全国で物件が動き出す

増え続ける空き家

空き家問題は今や地方のみならず、全国的な課題となっている。空き家対策特措法が成立したことで、2015年は国、自治体とも空き家対策により本格的に取り組んでいくことが求められる。

2013年の日本の空き家数は820万戸、空き家率は13.5%と過去最高を記録した。

空き家には、「売却用」、「賃貸用」「二次的住宅(別荘等)」、「その他」の4つの類型がある。このうち特に問題となるのは、空き家になったにもかかわらず、買い手や借り手を募集しているわけではなく、そのまま置かれている状態の「その他」の空き家である。

たとえば、親の死亡後、そのままにしておくケースがこれに当たる。住まなくても維持管理を行っていれば問題はないが、放置期間が長引くと倒壊したり、不審者侵入や放火、不法投棄の危険性が増すなど周囲に悪影響を及ぼす“問題空き家”となる。空き家全体に占める「その他」の空き家の割合は、2008年の35%から2013年には39%にまで高まった。

一方、「その他」の空き家率(「その他」の空き家/総住宅数)は5.3%と、これも5年前(4.7%)に比べ上昇した。都道府県別では、鹿児島(11.0%)、高知(10.6%)など過疎で悩む県が上位となっている。

これに対し都市部では低く、一番低いのは東京(2.1%)となっている。ただ、この割合が低い都市部で問題がないというわけではない。都市部では住宅が密集しているため、“問題空き家”が1軒でもあると近隣への悪影響が大きいという問題がある。

“問題空き家”となる予備軍が増加している背景には、(1)人口減少、(2)核家族化が進み親世代の空き家を子どもが引き継がない、(3)売却・賃貸化が望ましいが、質や立地面で問題のある物件は市場性が乏しい、(4)売却・賃貸化できない場合、撤去されるべきだが、更地にすると土地に対する固定資産税が最大6倍に上がるため、そのまま放置しておいた方が有利、などがある。

戦後、使い捨て型になった住宅市場が空き家問題の元凶

特異な日本の住宅市場

多くの国では空き家率は経済状態によって変動するが、日本の場合、戦後一貫して上昇し続けてきた。この背景には、戦後の住宅市場が使い捨て型の構造になったことによる。

高度成長期の人口増加に伴う住宅不足に対応するため、新築が大量供給されたが、その間に物件の質が落ち、住宅寿命が短くなった。また、市街地が外延部にまで広げられ、立地条件の良くない住宅も多く供給された。

つまり戦後は、市街地を無秩序に広げ、そこに再利用が難しい住宅が大量に建てられたが、一転して人口減少時代に入ると、条件の悪い住宅から引き継ぎ手がなく、放置されるようになった。都心部でも東京の木造住宅密集地域などでは、建てられた時点では適法でも、現在の法令では違法状態で再建築できない土地の場合、空き家がそのまま放置されている。

こうした状況は海外から見ると特異である。たとえば、イギリスの空き家率は3~4%、ドイツの空き家率は1%前後と、極めて低い水準で推移している。

ヨーロッパでは、市街地とそれ以外の線引きが明確で、どこでも住宅を建てられるというわけではない。建てられる区域の中で、長持ちする住宅を建てて長く使い継いでおり、購入するのは普通、中古住宅である。アメリカも同じ考え方であるが、空き家率が8~10%と比較的高い水準で推移しているのは、国土の広さが関係していると考えられる。

撤去、利活用の促進策

空き家対策は、当面の対策としては、危険なものについては速やかに撤去していくこと、また、まだ使えるものについては利活用を促していくことが必要になる。

撤去については、問題空き家に対し、指導、勧告、命令、行政代執行を行うことのできる、空き家管理条例の制定が進んだことを受け、2014年秋の臨時国会で、同様の内容を含む空き家対策特措法が成立した。このほか、撤去費を補助する自治体も増えている。

固定資産税については、危険な状態になった住宅では税軽減を止める方針が打ち出された。住宅を建てた場合に税を軽減する仕組みは、住宅が足りない時代には住宅取得を促進する効果を持ったが、住宅が余っている現在では、危険な状態の住宅でも撤去せず残しておくインセンティブを与えている。こうした弊害をなくする意図である。

一方、利活用の促進については、地方の自治体を中心に空き家バンクを設ける例が増えている。需給マッチングを行うとともに、改修費補助などを実施している。

今後、空き家は税制優遇が受けられなくなる

空き家所有者の選択肢

空き家を抱える人は、これまではそのまま放置することが税制上有利であった。しかし今後は、危険な状態になった場合、固定資産税の優遇がなくなるため、優遇を受け続けるため最低限のメンテナンス費用を投入するか、または、将来の税負担増を考慮して売れるうちに売るなどの選択を迫られる。

維持を志向する場合は、自分でメンテナンスできない場合、空き家管理代行業者を利用するのも一案である。空き家バンクなどを活用し、賃貸化することも有効である。

更地にして持っていたい場合は、撤去費補助の仕組みがあれば活用すべきである。さらに、売却する場合は、空き家バンクを活用するほか、最近では地方の戸建物件を買い取って再販する業者が出ており、売却価格は決して高くないが、速やかに処分できるメリットがある。

家財道具、仏壇などの処分に踏み切れなかったり愛着があったりして、空き家になった当初の時点ではなかなか処分に踏み切れない場合は多い。しかし、状態が悪くなった時に物件を流動化させようとしてもその価値がなくなっている場合が多く、また、危険な状態になれば、近隣への悪影響や税負担増の問題も生じるため、早めの対応が望ましい。

中古住宅の流通促進

空き家対策としては、より根本的には中古住宅の流通促進が必要である。これまで日本の住宅は、いずれ売却することを念頭にきちんと手入れしてこなかったため、中古住宅購入者の不安が大きかった。

また、住宅所有者にとっては、たとえ手入れをしても中古市場で評価されるわけではなく、手入れを行うインセンティブがなかった。

近年では、日本でもようやく住宅のメンテナンス記録を残し、それを中古市場で評価する動きが出ており、国もこうした仕組みを広げようとしている。建築時点での住宅の質を高める仕組みは、長期優良住宅認定制度などとして整えられ、対応住宅も増えている。

中古住宅を取得する場合の金銭的インセンティブとしては、住宅ローン減税を新築よりも中古の方が手厚い仕組みに変えること、一部自治体が実施している改修費補助の仕組みを国レベルでも導入することなどが考えられる。

こうした施策により、長持ちする住宅を建て、長く使い継いでいく住宅市場に変えていくことが、時間はかかるが、より根本的な空き家対策となる。また、これまで無秩序に拡大してきた市街地については、コンパクトシティ化により選別していく必要がある。

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