破格の厚遇「まるで赤い貴族」

画像の説明 “躍進”共産党に君臨する不破元議長の“伝説”

昨年の衆院選で他の野党が精彩を欠く中、議席を8から21に増やし「躍進」をはたした共産党。選挙戦では、不破哲三元議長(84)が約9年ぶりに街頭演説を行ったことが大きな話題となった。当の不破氏、平成18年1月の第24回党大会で議長を退任したが、なおも事実上のトップとして君臨しているとされる。

衆院選終盤の12月10日夜、不破氏は京都市の四条河原町で京都1区の同党候補とともに街頭に立った。不破氏が選挙遊説で街頭に立ったのは17年9月の衆院選以来で、議長を退いてから初めてだった。

「この歴史的な選挙戦、矢も盾もたまらない思いでかけつけた」

「政治の歴史をみても日本の夜明けは京都からだ」

「安倍政権の暴走を止めるために京都の民主・革新の力を発揮しよう」

不破氏は京都市屈指の繁華街に集結した約5200人(党広報部発表)の聴衆を前にこう強調し、8年の衆院選以来となる選挙区での共産党の議席獲得と比例議席増へ支持を訴えた。演説は約25分間に及んだ。

翌11日には那覇市に飛び、大接戦が繰り広げられていた沖縄1区の党公認候補の応援演説を行った。

「不破効果」があったか否かはともかく、沖縄1区は衆院選で18年ぶりに選挙区で議席を獲得する「躍進」の象徴となった。

不破氏はなぜ9年ぶりに街頭でマイクを握ったのか。

マスコミ各社の情勢調査で共産党は選挙前勢力の8議席からの「倍増」と伝えられていたなか、「党の理論的支柱」として党運営に隠然たる影響力をもち続ける不破氏が、党の「躍進」を確固たるものとするために自ら志願して出陣した-。共産党の「公式見解」はおおむねこうだが、真相を打ち明けるのは、古参の党関係者だ。

「不破さんは勝ちが見えていた選挙だからこそ参戦した。『躍進』の手柄を志位和夫委員長だけに渡したくなかった。責任をとりたくないから負け戦ではほおかぶりしていた。やはり不破さんは議長を退いても枯れていないということだ」

不破氏といえば、議長退任後も党の「中央委員」と「常任幹部会委員」にとどまった上、党の社会科学理論研究機関「社会科学研究所」の所長を務めてきた。

昨年1月に静岡県熱海市の共産党施設「伊豆学習会館」で開かれた第26回党大会前には、同大会で党最高指導部入りの条件となる中央委員を外れ、党運営から名実ともに引退する可能性がとりざたされていたが、大会では続投となった。

筆者もその大会を取材したが、幹部が並ぶ、ひな壇で満面の笑みをたたえていた不破氏の面持ちが印象的だった。「表情が乏しくて根暗」とされてきた不破氏が浮かべた「笑み」を、共産党ウオッチャーはこう解説する。

「高齢で引退して当然という声が党内外から上がっていながら、それを制する形で最高指導部に残れたことが、よほどうれしかったのだろう。それは党の総意ではなく、不破氏に牛耳られている最高指導部の意思だが…」

「セクハラ疑惑」で共産党を追われた元政策委員長の筆坂秀世氏は、党大会での不破氏続投を「老害」と指摘した『週刊新潮』(昨年1月30日号)で「これまで党の援助で配置されてきた住み込みのハウスワーカーやボディーガード、専任運転手と専用乗用車が役職を外れると配置できないからだ」と指摘していた。

聞けば、神奈川県西部の津久井湖近くの大きな山荘に暮らす不破氏と1歳上の上田七加子夫人(不破氏の本名は上田姓)の老夫婦は、夫が役職を失うと党からの手厚い「生活支援」が受けられなくなるという。

常任幹部会委員の年収は約1000万円。医療費も自己負担分は全額党に面倒をみてもらえる。「幹部の健康保全は革命運動にとって重要」という考えに基づくのだという。

加えて不破氏には常時配置されている専属の党職員は少なくとも5人いる。党本部勤務員の平均年収は400万円とされるなか、不破氏のために年間2000万円以上の人件費が余計に支出されていることになる。

党関係者によると、最高幹部の「専属職員」といえども、40年近く最高指導部で権勢をふるった宮本顕治元議長は自宅前にボディーガード2人を置いていただけ。現役の志位氏は現在、自宅マンショの階下にボディーガードが1人がいるだけだという。

「これほどまで破格の厚遇を受けているのは最高指導部のなかでも不破氏だけ。党の庇護の下にある優雅な暮らしぶりはまさに『赤い貴族』だ」(元共産党員)

なぜ不破氏は貴族のような生活が続けられるのか。それは不破氏が「他に変え難い社会変革の運動と前衛党(=共産党)の最高指導者」と、党内で位置づけられているからである。

党関係者によれば、同党には幹部候補党員に研修などで徹底的にたたき込まれる「共産党幹部論」なる“教え”があるという。それは旧ソ連の元指導者レーニンの死因を暗殺未遂事件による後遺症だと決めつけ、「革命や国家の命運は最高幹部の健康や寿命にかかわってくる。だから最高幹部を大事にしろ」と厳命するものだ。このことが明示されている文書が存在するが、研修後には回収されているという。

これにつながるのは「党を守る=国家を守る」の理論をもとに党本部に設置されている、別称「第2事務」の“防衛部隊”だ。党本部に約40人に加え、全国の地区委員会に1~2人ずついる。登録されている“予備兵”も加えれば相当数に上るという。

共産党防衛部隊OBは「警察無線の傍受のほか、対象者の尾行、盗聴などをやっている。党には警察無線の暗号を割り出すプロもいるから驚いた」と証言する。

話を不破氏に戻すと、今月26日に齢85となる不破氏にしてみれば、党大会での満面の笑みには「党最高幹部として生涯を全うできそうだ」という感慨があったかもしれないと、共産党ウオッチャーはみる。つまり「永久最高幹部」のポストを手にした、と。

過去の共産党指導者を振り返れば、生涯を党からの輝かしい評価まま終えた人は皆無に等しい。最初のトップの徳田球一にしろ、元名誉議長の野坂三参にしろ、そして宮本氏にしろ、不本意のまま党を追われたり、引退させられたりしてきた。

翻って不破氏は党にとって「最後まで守るべき最高幹部」になったのである。

昨年12月10~11日の不破氏の京都、那覇での遊説には、党の植木俊雄広報部長も随行していたが、それこそ不破氏が党のトップの事実を裏付けるものだ。

党関係者はこう言う。

「党広報部長ならば、民間企業でいえば代表取締役会長の志位氏の遊説について行くべきで、『顧問』の不破氏に随行するのはおかしいだろう。党の大勢がなおも不破氏のご機嫌をうかがっているということだ」

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