2015年はクレジットカードの安全性が高度化する

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電子決済に使われるクレジットカードは米国のカードよりもセキュリティーレベルが高度化されている。ヨーロッパで発行されているクレジットカードやデビットカードには、すべてEMV(訳注:Europay、MasterCard、Visaの頭文字)テクノロジーとして知られるカード読み取り用のチップが埋め込まれているのだ。そのおかげで、カードが絡む不正事件は過去10年で65%以上も減ったという。

「最初はカードの使い方にちょっと戸惑ったけど、慣れれば、どうってことはないわね」とジェニファー・スペンサー(39歳)はいう。オフィスマネジャーの彼女は、「いまでは、他の支払い方法なんて思い浮かばない」と言い添えた。

カードにはチップが埋め込まれていて、読み取り機を使う時にPIN(訳注:Personal Identification Number=個人識別の暗証番号)を打ち込む。このテクノロジーはここ10年ほどヨーロッパをはじめ、他の国々でも導入されてきた。しかし米国ではまだだったが、2015年から小売店や銀行に導入される。もっとも、全米に行き渡るにはまだその先数年かかりそうだという。

米国では、ターゲット(Target)やホームデポ(Home Depot)といった大型小売店などを舞台にクレジットカードのデータ漏洩(ろうえい)事件が起きたことから、カードの安全装置の高度化が図られることになった。セキュリティーの専門家によると、EMVテクノロジーでも銀行口座を標的にしたハッキング(コンピューターへの不正侵入などの行為)までは防ぎきれないとはいえ、個人レベルでのおカネに関するデータ管理の面では重要な改善になる。それが米国にも導入されれば、他の世界中の国々におけるカードセキュリティーの高度化につながるだろう。

ボストンのコンサルティング会社「アイテ・グループ(Aite Group)」の小口金融調査部長ジュリー・コーンロイによると、米国では電子決済のシステムに最大の弱点があり、「カード不正が最近は年に30%ずつ増えている」という。しかし、「セキュリティーの高度化が図られれば、ビジネスにとっても重要な意味がある」と指摘している。

米国の主だった小売業者や金融機関は、カードデータの漏洩などに対する顧客の不安に応えるかたちで、15年10月までに新技術が適用されたカードと決済手続きの導入を進める。仮に、小売業者が電子決済機器のセキュリティーを高度化しなければ、不正決済のツケは銀行から小売業界へとシフトするとみられている。

ウォルマート(Wal-Mart)のような大規模小売店やウォルグリーン(Walgreen)といった大手ドラッグストアなどは、すでにそれぞれのブランド名を使ったEMVクレジットカードを発行している。この10月、オバマ大統領は連邦政府が発行するカードには15年から暗号化した微小チップと4桁の数字コードを使うことを標準化すると宣言している。

そうなれば、クレジットカードの70%、デビットカードの40%が、15年末までにEMVテクノロジーになる。ただし、小売りレベルでの決済手続きの高度化が完了するには今後10年ほどかかりそうだ。

これまでのクレジットカードと、新しいEMVカードとの主な違いは微小チップが埋め込まれているかどうかにあるが、このチップにはカードの所有者がカード払いする際の決済コードが組まれる。従来型のカードでは、個人データをカード裏面の磁気片に保存するテクノロジーが使われている。ところが、このテクノロジーは1970年代以来、基本的に変わっておらず、磁気保存された個人データが第三者に読み取られて複製され、不正決済に悪用されかねない。しかし、個人別の決済コードが暗号化された微小チップ付きの新カードならば、データの複製はできない。

このテクノロジーは「チップ・アンド・ピン(chip-and-PIN)」と呼ばれ、認証にはサインではなく4桁の数字コードが使われる。そして、決済ごとにコードを打ち込まなければならない。連邦準備銀行によると、セキュリティーが高度化された微小チップに加えて数字コードも必要であるから、旧来型の決済よりざっと700倍も安全度が高まるという。

ちなみに英国では、このカードが導入された過去10年間で、不正決済による被害は60%(総額で1億6千万米ドル相当)減少した。一方この間、従来型のカードが使われてきた米国では逆に50%(総額320億米ドル)も被害が増えた。

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