ロシア謎の“暗殺衛星”

画像の説明 欧米は戦々恐々に…「我々は宇宙大国・旧ソ連の地位を取り戻す」露研究所

国際宇宙ステーション(ISS)から見た地球。欧州宇宙機関のアレクサンダー・ゲルスト宇宙飛行士が2014年10月16日、バミューダ海域に向かう巨大なハリケーン「ゴンザロ」を撮影した。宇宙は、平和から競争の舞台となるのか

ロシアが地球上を周回する“敵国”の偵察衛星や宇宙船の破壊を目的とした衛星攻撃実験を再開させたとの憶測が欧米諸国で広がっている。「ロシアの謎のキラー(暗殺)衛星か」-。欧米メディアでは、11月中旬からこんな見出しの観測記事が出始めた。だが、ロシアは沈黙したままだ。宇宙は国際協力から再び大国による兵器開発競争の場と化しつつあるのか-。

英BBC放送など欧米メディアが宇宙監視当局者の話として伝えたところによると、ロシアは昨年12月25日、コスモス2496、2497、2498と呼ばれる3基の軍事通信衛星を打ち上げたとされてきた。

しかし、打ち上げロケットの残骸だと思われていた物体が今年11月9日、突如、エンジンを噴射し、動き出したことから、打ち上げられた衛星は4基だったことが判明。ロシアは、国連に打ち上げた衛星が4基であることを認めたが、その用途などについては明らかにしなかった。

欧米の専門家らは、謎の衛星が奇妙な動きをしていることから、故障した自国衛星の修理のほか、他国の衛星破壊や乗っ取りを狙った実験を行う軍事衛星とみているという。

ロシア国防省は、欧米メディアからコメントを求められたが、沈黙。ロシア科学アカデミーの宇宙探査研究所のレフ・ゼリョーヌイ所長は「もし、すべての計画が実現したら、われわれは(宇宙大国だった)旧ソ連の地位を取り戻すことになる」と述べ、一層、不気味さを醸し出している。

いち早く「ロシアのキラー衛星か」と1面で報じた英フィナンシャル・タイムズ紙は、米軍がすでに謎の物体を追跡しているとしたうえで、秘密のベールに包まれた謎の物体は「クレムリン(ロシア指導部)が、衛星破壊という消滅したプロジェクトを復活させたのではないかとの恐怖を広げている」と伝えた。

ただし、米国と中国も今年、衛星攻撃とみられる宇宙実験を行った。

ロイター通信によると、米空軍が運用するスペースシャトルに似た無人宇宙機「X37B」が10月17日、地球を周回する1年10カ月間の任務を終え、米カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地に着陸した。具体的な実験内容は、ロシアと同じく秘密だ。

同機は、米ボーイングが開発し、全長9メートル。ロケットで打ち上げて軌道を回った後は滑空し地上に帰還。何度でも再利用できる設計だ。偵察が目的との見方はあるが、軌道上での任務は明らかにされていない。飛行は3回目だ。

さらに、これに先立つ今年5月、ロシア政府はウクライナをめぐる米国のロシア制裁に対する報復措置を発表し、米ソ冷戦後の米露協力の象徴だった国際宇宙ステーション(ISS)の2020年以降の運用延長を拒否。宇宙での国際協力の先行きには、暗雲が立ちこめている。

宇宙が、軍拡路線を邁進(まいしん)する中国やロシア、米国といった大国による兵器開発競争の舞台となる可能性は高くなりつつある。

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