ギャンブル禁止の国、

画像の説明 中国 いよいよ「競馬」解禁か

週末には大勢のファンでにぎわう香港のシャンティン(沙田)競馬場。香港では英国統治時代から競馬が盛んだが、法律上賭博が禁止されている中国でも、いよいよ競馬が解禁される日が近そうだ=香港・九龍半島郊外の新界沙田区

中国政府は今年10月、「体育産業の発展と消費促進に関する意見」を発表し、現在3100億元(約5兆9400億円)前後のスポーツ産業規模を、2025年までに5兆元(約95兆7300億円)まで拡大する方針を打ち出した。習近平国家主席(61)がご執心のサッカーの強化、競技人口の拡大が期待されているが、もう一つ、中国国内で話題となったスポーツ産業がある。現在、中国では基本的に認められていない「競馬」だ。

組織発足イベント

9月22日、北京市内の全国政治協商会議札堂で、ある組織の発足イベントが開かれた。その名は「中国競馬会」。北京出身で英国籍を取得したという女性が事務長を務めるこの組織は、来年7月に上海市、10月に北京市の周辺で、国際レースを開催する計画を発表した。中国政府が公認するスポーツくじ「体育彩票」の一つとして、「馬券」も販売されるとの触れ込みだった。

当初は中国の一部メディアが報じただけで、国民の関心度は低かった。ところが、中国共産党機関紙、人民日報(海外版)が、なぜか約1カ月遅れの10月16日にこのニュースを報じると、一気に注目が集まり、関連企業の株価が急騰するという現象まで引き起こした。

発足イベントでは主催団体として、中国国際経済交流センター、国務院(政府)参事室などが名を連ねた。宣伝資料には、中国馬業協会の高級顧問を務める胡(こ)耀(よう)邦(ほう)元総書記(1915~89年)の三男、胡徳華氏が「中国競馬会栄誉主席」と紹介されていたといい、さも政府公認の組織のような印象を与えたが…。

「三無」「違法」と批判

競馬解禁かと色めき立ったのもつかの間、国務院参事室は10月21日に「中国競馬会に関する活動には参加したことがない」との声明を発表。胡徳華氏も、栄誉主席への就任を否定した。「中国競馬会」は一転して、「合法的な登記」「彩票部門の支持」「合法的な公的ネットワーク組織」がない「三無組織」「違法組織」と批判されるようになった。

中国には現在、馬に関し、農業省が管轄する「中国馬業協会」と、国家体育総局が管轄する「中国馬術協会」の2つの組織が存在する。馬業関係者は中国紙、南方週末に対し、「2つの協会はともに、この件(競馬)を行いたいと思っているが、誰も成し遂げていない」と語っている。

実は、湖北省の省都、武漢市にある商業総合施設「東方馬城」には、国際基準を満たした競馬場がある。毎年、行っている武漢国際競馬祭は今年で12回目を数える。10月末に開催された今年の競馬祭には、武漢市民2万人が訪れたという。競馬同様、着順を予想するシステムはあるが、換金はできない。景品としてスマートフォンや自転車が渡され、「賭博行為」と見なされないよう、細心の注意が払われている。

一大ブームの可能性

胡徳華氏が南方週末に語ったところでは、「以前は馬券を誤解し、帝国主義、資本主義のものだと認識していた」という。過去二十数年の間、実験的に行われた競馬は、例外なく失敗に終わってきた。しかし、今回の“騒動”は、「競馬」の潜在能力を認め、その解禁を期待する中国国民が少なくないことを物語っている。

中国メディアの「華股財経」は11月末、「中国が馬券を発行することは、大勢の赴くところだ。政府の独占的なコントロールの下、経済と社会に巨大な効果と利益をもたらすことができる。時代の発展の需要であり、馬券の解禁はすでにその基礎ができている」と分析。政府主導で競馬産業を作り上げる道筋を提案している。

ギャンブルが禁止されている中国だが、政府公認の宝くじのほか、闇のサッカーくじなど賭博にはまる国民も少なくないとされる。競馬が解禁された場合、一大ブームが起こる可能性は高い。

週末には大勢のファンでにぎわう香港のシャンティン(沙田)競馬場。香港では英国統治時代から競馬が盛んだが、法律上賭博が禁止されている中国でも、いよいよ競馬が解禁される日が近そうだ=香港・九龍半島郊外の新界沙田区(ロイター)

「中国競馬会」が主張するように、収益が全て国の財政に組み込まれて慈善事業などに充てられるとすれば、国家にとっても、国民にとっても悪い話ではない。現在、既存団体などと“泥仕合”を演じている「中国競馬会」だが、競馬解禁という「中国の夢」に向け、一石を投じたことは間違いない。

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