地方の特養、東京進出

画像の説明 新設計画の半数、都外の法人 高齢化早く、ノウハウ

保育などとの複合施設にしているところが目立つ

地方から東京に進出する社会福祉法人が増えている。多大な初期投資が必要な特別養護老人ホーム(特養)では新設計画の半数が都外の法人によるものだ。人口減で高齢者すら増えにくくなる地方に対し、今後高齢化が深刻化する都内の自治体が積極的に新設を進めていることなどが背景にある。

都内の特養468施設(10月1日現在)のうち、介護保険制度が始まった2000年度以降にできた184施設を運営する社会福祉法人を朝日新聞が分析した。

東京に進出した地方法人が00~04年度に造った施設は5施設で、新設の7%だった。だが、05~14年度の10年は35施設で同30%に急増。今後はさらにその傾向は強まり、16年度以降に完成予定の施設(14~15年度の認可)だと半数を占めている。

都外法人が造った40施設のうち、最も多かったのは中国地方の8で、東北地方の7が続く。東京に隣接する首都圏からは7施設にとどまった。

進出法人の特徴は、基盤とする地域がすでに高齢化が進んでいることだ。地方では人口減少が進み、高齢人口すら増加は難しくなっている。高齢者を相手にした事業をしている法人側にとっては、事業拡大の機会は少なくなっている。

国立社会保障・人口問題研究所の調べでは、75歳以上の人口は2010年を100とした場合、25年の推測値は地方の14県では130以下にとどまるが、首都圏では160~200に上る。特に都内では10年の123・4万人から40年までの間に90万人以上増える。

都が特養の新設に力を入れていることも増加を後押ししている。

定員1人あたりの整備費補助(ユニット型)は500万円。整備率が低い自治体ではさらに最大1・5倍まで引き上げる仕組みもある。定員100人の場合、事業費の4割程度をまかなえるという。人口あたりの特養整備率が全国ワースト2の千葉県では400万円。同県の担当者は「財政規模が違い、競争にならない」と嘆く。

■複数経営、豊富な資金

経営力は財務にも表れている。キヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹がまとめた社会福祉法人の内部留保分析では、12年度までに都内に進出した法人の内部留保の平均額は36・4億円に上る。このため、都内の場合、定員100人の施設だと約20億円(用地取得費と建設費)とされる多大な初期投資をまかなうことが可能だ。

松山氏は「複数施設を経営する法人は資金力がある。利益を再投資に回していることは評価すべきで、都内の法人も早く多角経営をすべきだ」と指摘する。

都内に本部を置く社会福祉法人の多くは1法人1施設だ。差を生む背景の一つが人件費の差とされる。介護労働者の1カ月あたりの賃金(主に正職員の場合)は昨年、東京都と最も低い県とでは8万円以上の開きがあった。

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