金利市場透視眼鏡

画像の説明原油下落でデフレの欧州から
資金流入で日米の金利は低下

8月以降、緩やかな下落傾向を続けてきた原油価格であったが、年末にかけて下げを加速させた。OPEC(石油輸出国機構)が減産を見送ったことが直接の引き金となったが、2011年、12年にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物のチャート上の下値の支持線として機能した1バレル=76ドルという水準を下に抜けたことも大きな要因であろう。今後は76ドルを上値の抵抗線とするような弱めな推移が続く可能性が高まったといえそうだ。

原油価格下落が消費者物価の押し下げにつながるとの思惑が高まる中、物価原理主義に傾斜した日本銀行は、10月31日に実施した追加緩和の根拠として原油安を挙げた。ただし、長い目で見れば原油価格下落は消費押し上げにつながる可能性が高い。また、原油安のたびに追加緩和を行えば、原油価格急騰の際の政策対応が非常に難しくなる。今後、日銀が原油価格のさらなる下落に対して即座に反応するかどうかは不透明だ。

FRB(米連邦準備制度理事会)も「原油安がインフレ期待を抑制しないよう留意する」とのスタンスを変えておらず、好調な経済指標も相まって3年債などの米国中期債利回りにはむしろ上昇圧力がかかっている。原油安を材料

ユーロ圏のインフレ率はゼロに近づく

しかし、ユーロ圏では少し事情も異なってくる。スペインでは経済立て直しの過程で雇用者報酬が伸び悩み、財政政策も緊縮的な状態が続いた結果、すでに消費者物価が前年比でマイナスになっている。ドイツの消費者物価は前年比プラスを維持しているが、足元の水準の原油価格が続けば、今後1年近くは原油価格下落が消費者物価全体をかなり押し下げる要因となり、ユーロ圏全体がデフレの領域に陥ることになりそうだ。

ECB(欧州中央銀行)は12月の理事会で、バランスシートを拡大させることについて、「予想する」とのスタンスから「意図する」と表現を強めたが、年明け早々から量的緩和政策に踏み切る可能性が高まったといえる。しかし、超過準備の付利金利や預金ファシリティ金利がマイナスとなる中、ECBのバランスシートを拡大させるのは容易ではない。ユーロ圏の銀行に国債を売却させ、ECBのバランスシートを拡大させるためには、国債利回りのさらなる低下が必要条件となりそうだ。

すでに国債利回りが低下傾向にあるユーロ圏からは、米国や日本の債券市場に向けて資金が流出している。日米の債券市場が原油価格への感応度を下げても、結局、原油価格下落が日米の長期金利を押し下げる格好となりそうだ。

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