インターネットで売られる日本の離島

画像の説明 国境に神経を使わない国はない。

メキシコ、チリ、ペルーは「国境」「海岸部」から一定距離以内の土地について外国人所有を制限する。ブラジルとベネズエラも同じだ。

「離島」の外国人所有に制限を課している国もある。ニュージーランドの離島(0・4へクタール以上)の所有は許可制だし、パナマの島もそうだ。韓国は外国人土地法に基づき、軍事目的上必要な島嶼地域等の所有は許可制になっている。済州島の開放特区(不動産投資移民制度)ばかりに目が向きがちだが、規制措置があることを忘れてはいけない。

もっとも、これから述べる日本の現状はやや異なる。
世界の非常識─離島をネット販売

競売にかけられた広島県呉市沖に浮かぶ無人島(手前、通称「三ツ子島」)。国が所有する北側の小島が売却対象となった

2010年、財務省によって呉市沖の無人島・三ツ子島は一般競争入札にかけられた。もちろん入札に国籍条項などない。旧日本海軍病院の遺構のある島へは18枚の応札があった。落札した地元港湾荷役会社は言う。

「(他者に)落札された場合、島で何が行われるか予想できない……開発の計画はなく、手つかずの状態で置いておく」

ヤフーオークションでインターネット入札をはじめた自治体は、すでに全自治体の過半数を超えたが、落札後の転売規制には限界がある。かつての公有地が一瞬にして居所不明の匿名者の持ち物になっていく…。所有者を追っていくシステムが日本は脆弱だからだ。

沖縄軍用地も金融商品化しネット販売されている。2011年3月には、地権者の中に在中国が登場するなど多国籍化が進む。外為法上、外資から外資への転売は報告不要(財務省令)だから、外資購入後の不明化は避けられない。ネット販売による高値落札の対価が匿名化、不明化の助長につながっている。

無人島販売は島ブームで活況の様子だが、2013年2月、沖縄県西表島の西側に位置する外離島の平地の大部分(1・7へクタール)を有する地権者夫妻が台湾で殺害されるなど、きな臭い噂は絶えない。ネット販売中だった西表島北側の鳩離島を2013年8月に外国人が購入したことが話題になったし、5億円のネット価格がついた西表島東側のウ離島についても、その購入先が注目されている。

長崎県対馬市では2013年8月、260へクタールの水源林が買われそうになった。島北部の水源林が3400万円の価格で競売にかかったのだ。日本政策金融公庫資金から融資を得ていたM林業の所有山林で、入札開始後、2日目までに韓国資本が応札したとされる。とうとう対馬市が乗り出し、入札期間中に債権者は「競売取り下げ」をした。寸前で事態は収拾されたが、買収費用だけでなく、将来の管理負担も負うことになる。

こうした騒ぎになる箇所は、まだ恵まれている。大方は売り手と買い手の経済事情によって秘密裡に事が進められていく。昭和40年代に2%台後半で融資を受けた篤林家は全国で数百人。それぞれ500へクタール以上の規模の山林を取得したが、林業不況で大半の者が買い手を待っている。投げ売り価格でも触手を伸ばす日本人は少ない。

一瞬で決めた付言

日本国土は売り物だらけで懸念は尽きないが、そう感じる向きは少数派だ。

「外国人・不明人の不動産投資や動機不明の不動産買収によって何が困りますか? 特段、今困っている現象があるわけでもないでしょう」

もちろん反論する。

「所有者が追えなくなりますし、買い戻しもできなくなるでしょう。それに不明化していくと災害復旧もままならず、産廃投棄地や行政不介入地になり得ます」

隣国に気兼ねしてか、それとも改正そのものが面倒なのか。「たら、ればの話に騒ぎすぎです。煽りつづけるのはいかがなものでしょう」。こういう台詞を何度聞かされたか。

2013年8月、国交省は〈不動産市場における国際戦略について〉をとりまとめ、公表したが、そこに国の基本スタンスが読める。国民生活への影響の考え方について、次のようにまとめている。

「水源地・安全保障の観点からの配慮が必要であるが、基本的には海外からの投資を拡大することが必要である」

本文をまとめた有識者委員会は、この部分についてほぼ一瞬で付言することを決めたそうだが、現下の政府の一定の考え方、方向性を示したものといえる。国家の成長戦略として不動産業の位置づけは不可欠で、安全・エコを前面に出すグリーン・ビルディング(環境不動産)は最も期待の大きい分野である。水源地や安全保障には配慮するけれど、基本は外資歓迎で成長戦略が優先される。海外からの投資拡大は大前提というわけだ。

整理してみよう。要は峻別せよといいたい。国交省が報告書で断っているように、こうした国際戦略はあくまでも都心部の土地に限定されるべき考え方だ。防衛施設や国境離島、それに水源林、農地については慎重な議論が必要で、各エリアにふさわしい配慮が加えられ、実効性のある規制ルールがあってしかるべきだろう。

流れを止めない配慮は当然必要だが、都心部の不動産とそれ以外が同じわけにはいかない。もし、都心部以外の土地について、この無策をつづけるならば、次のような対応は到底とれず、将来に禍根を残してしまうからだ。

水源地買収は杞憂?

2012年9月、米国内の出来事である。

オレゴン州の空軍基地にほど近い場所に風力発電事業(発電所の買収)を進めていた中国・三一集団(建機メーカー)に対し、オバマ大統領は安全保障の観点から事業の中止を命じた。外国投資・国家安全保障法(FINSA)に規定する対米外国投資委員会(CFIUS)の権能に基づき命令したものだ。ホワイトハウスは当該地が米空軍施設に隣接し、規制空域と重なるためだと発表している(その後、三一集団は大統領とCFIUSを提訴した)。

世界の最新事情は大抵こうだ。

ヨーロッパでは、2010年、ギリシャの国有財産の島々が売却ターゲットとなり、ロードス島やミコノス島の名前が挙がった。すぐさま中国、ロシアの投資家が名乗りを上げたが、その後は具体化せず、そのまま沙汰止みになっている。

アルプス山頂でも同じような話が2011年にあった。イタリアとの国境に位置するオーストリアの国有地(山岳地)の売却が検討され、独、中東、露の投資家が即座に反応した。だが、地元の猛反対で結局、オーストリア政府(森林管理局)が購入している。

アイスランドでも2011年に外資買収が話題になった。3万へクタールを中国投資家の黄怒波氏が買収した後、リゾート開発するというものだったが、内務大臣の反対で待ったがかかり、持久戦に入っている。財政事情が厳しい中にあっても、結果的に国土の外資買収には各国で慎重な対応がとられている。

農地を中心にしたランドグラブ(土地奪取)に対抗する法制化もここ2、3年で進んだ。食糧資源の保全戦略の一環だが、ブラジルは2010年に規制強化した。アルゼンチンも2011年末、〈登記制度は国内統一〉〈外国人の農地面積比率は国内の農地面積の15%まで〉〈買収1件につき、1000へクタールまで〉旨の法改正を実現させた。

だが、こういう立ち回りは日本では見られない。時代環境がグローバル化したからと、明治時代から引き継ぐ土地法制を緩和し続けている。

外国人の土地売買規制の表をご覧いただこう。日本の特殊性、特異性が浮き出てくる。唯一、◎である。海外からの不動産投資に全く規制をもたず、転売もフリー。平和であることが前提の制度になっている。秘匿資産としては最適で、秘密の倉庫──フリーポートならぬ秘密の安全不動産となる。低リスクだから、ダークサイドマネーはほっておかない。

すでに有名になっていて、ロンドン大学(LSE GREG)が公刊した『アジア太平洋不動産投資ガイド2011』にも書かれてある。そこから読み取れる結論は「不動産投資に外資規制が『皆無』なのは、日本だけである」──。

残念なことだが、対馬の買収騒ぎに対しても「(外資に買われた面積は)甲子園球場のグラウンドの中の1・5四方分に満たない面積だ」(日経新聞 2013年9月28日)と動じないし、東京五輪に期待する不動産コンサルも、米軍基地周辺の外資買収を杞憂だと断言したのち、「水源を抑えられたとしても、有事の際には法律を改正して外国人の土地利用を制限すればいいだけの話です」(THE21 2013年11月)と楽観している。

世界標準からはずれた日本

フランスでも2012年、一悶着あった。ブルゴーニュ地方のワイナリーが中国人に買われ、反対運動が起こった。だが、フランスでは2億円以上の土地やワイン農地の外国人取得には事前届出が必要だし、市町村長は前もって土地を取得する権利(先買い権)を行使することができる。不動産への手出しは簡単にできないようになっているのだ。日本のサントリーも1980年代、ボルドーのワイナリー買収には苦労した。

考えてみれば、ほとんどの先進国は肝となる土地政策をどこかにもっている。

アメリカは前述のとおり外国投資・国家安全保障法(FINSA)で土地買収の中止を求めることができるし、価値ある鉱床に属する土地取得は米国国民に限られる。また州法レベルで外国人の土地所有に制限をかけている州が50州のうち23州に見られる。

2008年、対馬の海上自衛隊隣接地が外資に買われたとき、時の総理は「(バブルのとき日本もマンハッタンのビルを買った)自分が買ったときはよくて、人が買ったら悪いとはいえない…」とコメントし、外務省も「政府として何か言う立場にない」と語ったが、それはマサチューセッツ州のその場所に売買規制がなかったからだ。全米の国土がそうだと勘違いしてはいけない。

英独では土地売買は自由ではないかと主張する向きもある。「売買面」だけを見ればそうだが、「現況把握」と「利用規制」に抜かりはない。それが先進国というものだ。外国人所有→所有者不明化という流れを許さない仕組みを持つ。

イギリスでは土地売買後の登記は義務だ(日本では登記は任意)。それゆえ所有者不明は出にくい。それに英国内の地図(Ordnance Survey)は陸軍がつくった正確なものだが、日本はそうではない。一度、登記所に備え付けられている境界地図を見てきてほしい。和紙に筆で描いた漫画絵図をそのままトレースした図面も混じっている。大阪府内の9割、東京都内の8割は地籍調査が終わっておらず、正確な境界地図は存在しない。

ドイツの地籍調査は100%完璧に終わっており、基点を管理するのは軍だ。所有権譲渡の登記も義務化されている。利用規制は厳格だ。その権能がまるで違う。市町村が決定した地区詳細計画(Bプラン)の拘束力はとびきりで、日本の利用規制(建築基準法・農地法・森林法)の奔放さとは比較にならない。

農地の違法転用はわかっているだけでも年間8200件(2008年)。だが、反省文を1枚書けばOKである。違法開発や違法建築を行っても訴訟に持ち込めば、個人は役所に勝つことができる。経済的不利益を強要されても憲法29条──財産権の保護が登場し、護ってくれるのだ。哀しいかな日本は、知らないうちに誰かが土地を手に入れ(所有し)、そのまま黙って持ち続けることもできる。所有・利用オールフリーの不動産ヘイブンの国家といえよう。

民主党の失敗

与党だった民主党の失敗は、2010年、水源林の買収問題を扱うPT名を「外国人による土地取得に関するPT」としたことだ。外資か否かで党内論戦をはじめてしまった。外国人を排除すればよい…直截的な対策として〈外国人土地法〉が何度も持ち出されたが、後述するようにハードルは高く、この議論に嵌まって時間を浪費した。案の定、震災など重大ニュースが相次ぐ中、いつしか時間とともに忘れ去られ埋もれていった。「外資による買収面積は減少してわずか」との政府発表も、この難題の先送りと鎮静化に役立った。

そもそも本テーマは、「日本の水源林を守る議員勉強会(2010年4月)」「安全保障と土地法制を研究する議員の会(2011年2月)」を起点としており、いずれも高市早苗議員(現政調会長)が呼びかけた。スピード感ある実現可能な法案が当時、既に起草されていた。だが野党時代に叶うことはなかった。

潮目が変わったのは2013年夏以降だ。安定与党が実現した後、永田町でようやく、本テーマの本格議論がはじめられる環境が整ったことが要因だが、もう1つ。引き金になったファクト(事実)も見逃せない。対馬の海上自衛隊対馬防備隊本部傍の買収事実の発覚である。

6月11日、韓国蔚山市の外国法人が買収し、ダミーを使うことなくそのまま登記した。筆者は7月、現地で事実を確認し、地区長とのヒアリングを行い登記簿もとったが、この時点で防衛省は当該買収事実を掴んでいなかった。

その後は日本維新の会の国会議員団の訪問(8月29~30日)、臨時国会での中田宏議員(維新)の質問(10月22日)と続いた。

一連の動きは、「国家安全保障土地取引規制法」(維新)の提示、自民党の「安全保障と土地法制に関する特命委員会(佐藤正久委員長)」の設置につながり、同じく自民党内の「水の研究会(中川ゆう子会長)」の議論とも相まって、新たな土地法制を起草するステージに入っている。

しかし、全国の現場では今も仲介ブローカーたちが水面下で蠢き、ダミー会社やフロント企業が暗躍しているだろう。目的不明の土地取引がより巧妙かつ複雑に繰り返され、土地所有の不明化は拡がり続けていると見てよい。

全国で1万へクタール単位(山手線の内側は6000へクタール)の土地を買い集めたファンドや資産家が複数あるが、これらの1社が一括売りしたり、M&Aで外資化していくだけで広大な国土が動く。こうした変化を拾う仕組みは現在、この国には整っていない。

以下、3つの論点と講ずべき喫緊の対策を示す。
3つの論点

政府が発表した外資買収面積の801へクタール(2013年)には、北海道や熊本県等に所在する外資系ゴルフ場施設に付帯する山林(数千ヘクタール)や鹿児島空港に隣接する中国系資本が所有する林地(253ヘクタール)は入っていない。騒ぎになっている長崎県対馬市についても、外資所有山林はゼロだとされている。定義上の違いだが、外資(外資系)に買収されている実際の面積は、桁が1つか2つ上だろう。

買収者の約7割はペーパーカンパニーと見られるが、こうした動機不明の買収は不明資産化に直結しやすく、問題が生じた場合、その解決は厄介だ。一筋縄ではいかない。

深刻なのは、やはり防衛施設周辺や国境離島だ。北海道では既に自衛隊施設の周辺3キロメートルの位置に3件、109へクタールの土地を外国人が所有している。基地内の対舟艇対戦車隊の動きを俯瞰できる場所だ。奥尻島、佐渡島、沖永良部島などにもきな臭い動きが伝えられ、法的対応が最も急がれる。

《外国人土地法》

現存する外国人土地法(1925年~)は政令がないため実質機能していないが、新政令を定め、復活させることはどうであろうか。

端的に言うと「できないことはない。でもとても手間がかかる」ではないか。時計の針を戻すことが必要になってくる。GATS(WTOサービスの貿易に関する一般協定)の交渉(~1993年)において、加盟国159か国のうち、約4割が何らかの留保(適用しないと意思表示)を行っているが、我が国は何ら留保を行っていない。もし新たに外国人規制をはじめるなら、国際約束をした各国に対し、リセットのための交渉をはじめなければならない。また締結済みの二国間投資協定等でも課題が残る。相互主義により留保を付した相手国ばかりでない。内国民待遇や最恵国待遇を与えている国々に対し、1つひとつ解きほぐしていく交渉が必要で、補償金も想定しておく必要があろう。現実的だろうか。

もっと言えば、外資か否かの見極めも難しい。

外為法に準じ、外資(外国人含む)の定義は、「(1)外国人(非居住者である個人)」「(2)外国企業(外国法令に基づいて設立された法人、外国に主たる事務所を所有する法人)」「(3)国内法人のうち、外国企業等の出資比率が50%以上の法人、外国人の役員が過半数を占める法人」と便宜的に筆者は使ってきているが、(3)をはじめグリーンフィールド投資等の見極めは容易ではない。

そこで、ひとまず外国人土地法を脇に置き、スピード感をもった現実的な対応として、国内外を問わず規制を講じていく策を考慮する必要があろう。先行モデルは鉱業法改正だ。

2011年、60年ぶりに改正された鉱業法は、外資の子会社(日本法人)が相次いで鉱業権の設定をする実態に対し、先願主義を改めるとともに、探査段階から許可制にするなど、国内外差別することなく審査プロセスにおいて適正なチェックを導入した。

この捌きは本テーマにも適用できる。土地情報(所有者、面積、筆界等)をそもそも行政が掴めていない──不明化、ブラックボックス化が止められない現状の欠陥・不備を、まずは重要な国土から正していく法整備が必要であろう。

《新法制定の要諦》

既に新法制定に向けた調整が与野党間ではじまっているが、今後の取り組みに期待を込めたい。制定の考え方として2つの方途が考えられる。

1つは新法「国家安全保障土地取引規制法(仮称)」で、安全保障上、重要な土地(重要国土I:防衛施設周辺、国境離島等)を計画的に公有地化し、その周辺等の土地(重要国土II)の取引を許可・事前届出制とするものである。国土(地籍)調査を必須とし、鉱業法と同じく、国内外差別はしない。主務大臣は外務・防衛・国交大臣。用地買収予算(防衛施設用地関連予算)等が新たに措置されようが、重要国土のエリアはやや限定的となろう。

もう1つは新法「国土安全保障・保全法(仮称)」。安全保障に関連する、重要な土地(重要国土I)に加え、その周辺の土地や沿岸域・水源地等、地域にとって重要な国土(重要国土II)を計画的に公有化し、かつ保全を図るものである。いずれのエリアにも土地取引規制(許可・事前届出制等)と国土調査を義務付ける。目的は海洋環境保全、生態系保護、国土資源保全等とし、国土資源(土・水・緑)を安全保障に関連し、より高いレベルで保全していくためだ。国内外差別はしない。議員立法とし、主務大臣は外務・防衛に加え、総務・法務・農水・国交・環境とする。経済的理由で国土が放置されていく一方で、動機不明の国土買収が静かに進みゆく日本。国家として国土をどう衛り、管理していくか──総合的な見地から対策を講ずるものだが、成立には時間を要する可能性がある。

なお仏英の海岸部は、長年にわたって公有地化、トラスト化を進めているが、安全保障を前面に打ち出すことなく、環境保全の立場から買い進めている。併せて監視強化の効果も上げている。

《残された課題》

ここ2年で11道県(検討中が6県)が水源地区保全条例を制定した。

水源地売買の「事前届出」を義務付けしたのは、法律が謳う「事後届出」では効果が薄いとみたからだ。本件について、政府より先行して自治体が踏み出したことの可笑しさを再考する必要があろう。安全保障にかかわる措置を自治体条例がカバーしている。

ただその施行プロセスで自治体は頭を抱えている。2012年、北海道は土地所有者1万1000人に対し、新条例の通知を郵送したが、5割近くが宛先不明で戻ってきた。税務当局も加わり究明に努めたが、最終的に地権者不明は45%。これでは対策を講じようがない。経済のグローバル化が止まらない一方で、国内制度の綻びが本格化している。行政は活路を別手段に求めはじめた。

土地台帳(固定資産課税台帳)の不備も深刻だ。登記行為が任意だから、法務局の登記情報は売買・相続の一部情報でしかない。未登記率のデータも存在せず、登記簿があてにならなくなっている。結果、やむなく160歳の土地所有者に「死亡者課税」をしたり、表ざたになる前に処理(課税保留)してしまうケースが登場している。こういった矛盾が減っていく要因は見当たらない。

これらの現象は辺境部が大半で、税額は数%以内の話にすぎず、微々たるものかもしれない。しかし、都市部へと波及・蔓延していくのは時間の問題だ。登記、地籍の本格再編にとりかかるべき時だろう。

躓きのはじまり

私たちは今、経済以外の分野での視野と関心が極度に狭まっている。現下の問題に目をそむけ、退路を断たれてもなお背を向けている。

国土の安全保障を腫物のように扱いつづけ、土地資源の不明化・バルク化に黙認を決めこみ、なんら対応していない。しかも、こうした〈負の遺産〉を後世代に押しつけようとしている。平和も祈ってさえいれば実現できると思い込んでいる。

何もかもがいい加減では、困るのは次の世代だ。このことを数が多い世代、中高年世代はぬかっている。責任を果たすべきではないか。躓きのはじまりは現世代であったといわれないためにも。

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