ボーイングから1兆円受注

画像の説明 鼻息荒い東レの炭素繊維

重さは鉄の4分の1、強さは10倍という炭素繊維の供給でトップに君臨する東レが強さを見せつけている。

日覺昭葊・東レ社長(左)はボーイングとの共同会見の場で、40年以上の取り組みで培われた両社の深い信頼関係について語った

東レは17日、米ボーイング社と、新型の大型機「777X」の主翼向けに、炭素繊維製の材料を供給することで基本合意したと発表。同時に、2005年に締結した中型機「787」向けの供給契約についても、延長する方向で交渉を進めることを明らかにした。

787、777Xへの供給契約は10年以上という期間で結ばれる見通しだ。その間の供給総額は実に1兆円を超えるという。仮に契約期間を10年とすると、1年当たりの受注額は約1000億円。東レの14年3月期の連結売上高が1兆8378億円だったことを考えると、いかに大きな契約かがうかがえる。

40年以上にわたって続く東レとボーイングとの関係だが、787、777Xの先にも、事実上の独占供給契約が続く可能性も見える。今回の契約には、次世代の航空機向けに、材料、成形方法、部品などを共同開発していくことも盛り込まれる予定だからだ。

これまで東レは、ボーイングの要求する高いスペックの炭素繊維を安定的に供給することに重きを置いてきた。しかし今後は、東レのノウハウと、ボーイングの航空機設計の知識や成形技術、材料への知見を融合させ、「ブレークスルー」(躍進)を起こしていく。

総力戦で共同開発に挑む

狙いは、品質や使いやすさを追求しながら、コストパフォーマンスを飛躍的に高めることにある。東レ自身も認めるところだが、目標は高い。アルミニウムのコストパフォーマンスを大きく凌駕する炭素繊維製の航空機を造ることがゴールだというのだ。アルミニウムは航空機の軽量化素材としての歴史が古く、部品になると物によって価格が炭素繊維製の数分の1程度になるといわれる強敵である。

「東レ全体に蓄積されたマテリアルサイエンス、ナノテクノロジー、繊維、フィルムなどの最先端技術を総動員していく」──。

阿部晃一・東レ副社長は素材メーカーのプライドを懸けて目標達成に臨む構えを見せるが、もし目標達成できれば、さらなるボーイングとの取引の拡大が期待できる。

東レは20年までに、今年2月に取得した米国の事業用地に1000億円を投じて新工場を建設する計画だ。

もっとも、今回の目玉だったボーイングからの巨額受注は業界内では想定済みの部分も多く、サプライズは少なかった。注目すべきは、新工場で作られる、圧力容器など別の産業向けの製品だ。中でも、次の主戦場となる自動車向けに、どのようなスペックの炭素繊維製品をどれくらい生産するかが気になるところ。他の地域での増産も含め、競合他社の関心は、むしろ東レの次の一手に集められている。

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