「新興国」レッテルはがせぬ韓国の“非常識”…

画像の説明 大統領「円安批判」言及の禁忌破り、米政府からは怒られ

韓国は「先進国」なのか、「新興国」なのか。サムスン電子などを抱える高い産業競争力からすれば、当然先進国と分類されそうなものだが、プロの投資家が頼りにする投資指標「MSCI」でみると、韓国はいまだに新興国の位置づけに甘んじている。その大きな理由とされるのが為替政策。ウォン安を演出する為替介入が常態化しており、米財務当局が批判のトーンを強めている。23日には大統領自ら円安牽制(けんせい)の発言をする“ご法度”を犯した。このままでは新興国のレッテルがはがれそうにない。

2度目の異例発言

「円安など外部環境が急速に変化する中で、競争相手が(韓国に対する)追い上げを急いでいる」

ロイター通信によると、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は工業団地の式典でこう述べ、円安が国内経済に悪影響を与えているとの認識を示した。

国際金融の世界では、「自国通貨でも他国の通貨でも、政府高官が為替水準にあからさまに言及しないのは暗黙の了解」(日本の大手行幹部)というのが常識だ。

ところが、朴大統領が円安の国内産業へのマイナス影響に言及したのは初めてではない。ロイター通信によると、6日には「輸出企業の利益が円安のために悪化する恐れがある」と発言した。翌日、記者から質問を受けた麻生太郎財務相は「大統領が言ったからといって、別に…。気にすることはない」と受け流したものの、金融関係者を驚かせた。

23日の発言にいう「競争相手」が、日本を指すことは明らかだ。外国為替市場では、一昨年12月の安倍晋三政権発足前から円安が進行し、今年9月以降に一段と円安が進んだ。

韓国と日本の輸出品目をみると、自動車や電機・機械など重なる分野が多い。自国通貨安は海外市場での価格競争力を高めるというのが一般的な理解だ。韓国はサムスン電子など主要な輸出企業の収益悪化が伝えられ、同国の産業界の心中穏やかならぬ様子がうかがえる。

抜け出せぬ「新興国」

韓国は国内総生産(GDP)が1.3兆ドル(約140兆円)と世界14位。日本の電機メーカーを打ち負かした高度なエレクトロニクス技術を思えば、韓国が「先進国クラブ」であるOECD(経済協力開発機構)メンバーであることに何の疑問もない。

ところが、投資家向け指標(インデックス)の作成機関MSCIは、韓国を新興国と分類したままだ。MSCIの分類いかんで、機関投資家やファンドの巨額の資金が動く。安定的な運用先と評価される「先進国」の銘柄に組み込まれれば、投資家のポートフォリオ(資産構成)で指標に沿って自動的に配分されることになり「巨額の投資が流れ込む」(元財務官)という。

世界の金融界も、MSCIが定期的に実施する分類組み替えに注目。韓国ではMSCIでの“一軍入り”に対する期待が以前から根強かった。

だが、その期待が今年6月、打ち砕かれる。

「先進国入りの検討リストから韓国を削除する」

MSCIは分類組み替えに際し、そんな“宣告”をし、先進国への格上げを見送った理由について、「市場開放と韓国ウォンの為替自由化の問題」を挙げた。

MSCIは「この4年間で(課題対処に)進展がみられなかった」と断じ、一軍入りの待機リストから韓国を外してしまった。

米政府がやり玉に

MSCIの判断では、韓国の為替政策が生む市場の閉鎖性や不透明性が嫌気された格好だ。

その韓国の為替政策は、米財務省が年に2回まとめる「国際経済と為替政策に関する議会報告」で、やり玉に挙げられている。

今月15日に公表された報告書は「韓国ウォンが過小評価されている」と指摘。ウォンが本来の水準から約6%低いと分析した国際通貨基金(IMF)の見方に触れたうえで、「韓国当局は為替介入を例外的な場合だけに制限すべきだ」と批判した。

報告書は為替介入の実態もあぶり出した。韓国の外貨準備が5月から7月までに約140億ドル増えた分の大半が、為替介入によるものだと分析。「他の主要新興国や工業国と異なり、韓国は為替介入を公表していない」と、同国の異質性にも踏み込んだ。

実際、7月3日にいったんは1ドル=1009ウォンまで進んだドル安ウォン高が、7月16日には1ドル=1032ウォンまで戻した。

韓国は2013年2月、自国産業の競争力強化をもくろんだ通貨安競争を控えることを、ほかの先進20カ国(G20)に対して“国際公約”した経緯がある。

米為替報告は4月にも、「韓国当局は為替介入を減らすべきだ」と指摘していた。それでもなお介入を繰り返す姿勢に、米財務当局は報告書での批判のトーンを次第に強めている。為替政策の不透明さは、韓国の「先進国入り」を確実に遅らせている。

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