公的資金投入に歯止め G20、

画像の説明大手銀行への新たな資本規制

15日からの主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、巨大銀行の自己資本を国際的に規制する新たな方針が示される。米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)が世界を混乱に陥れてから約6年。「銀行の破綻に納税者のお金は使わせない」という大方針が確認される。

今回の国際規制は、世界の金融システム上、重要な金融機関を対象とする。日本で言えば3メガバンクが経営破綻した場合、その損失をまず株主や債権者に負わせ、公的資金による負担を避けるのが狙いだ。

2008年のリーマン・ショック後、欧米では大量の公的資金を投入し、金融機関を救済した。世界中で一つの輪のようにつながった現代の金融システムのうえでは、銀行が一つつぶれただけで信用不安の連鎖が起き、各地で銀行が破綻や経営不安に追い込まれた。納税者のお金を使ってでも、この連鎖を食い止めるしかなかったのだ。

だがツケは大きかった。09年ごろから始まった欧州の債務危機は最たるものだ。とくにスペインやアイルランドなどでは、金融機関の破綻処理に費やした巨額のお金が政府の財政をむしばみ、国債の信用をおとしめた。経済の混乱は大量の失業者を生み、いまも景気低迷は続く。「銀行救済に公的資金は使わせない」というのは、欧州の政治家や官僚の間では合言葉だ。

欧州連合(EU)は、破綻処理を社債などの債権者に負わせる法律のほか、銀行業界の負担で設ける基金で破綻時の費用をまかなう仕組みにも合意した。震源地の米国も破綻時に債権者に負担を求める法を整えている。

日本は「預金保険制度など、十分な仕組みを整えてきた」として、追加規制に難色を示してきた。結局、普通社債など返済順位の高いものも、一定条件下で破綻に備えた資本に算入でき、預金保険制度があることも考慮される見通しだ。巨額の増資などの対応は避けられる公算が大きい。だが、日本のメガバンクも安心はできない。今後の調整で、必要になる自己資本の比率が16%になるのか、20%までいくのかで、資本をどこまで確保すべきかは大きく変わる。あるメガバンクの役員は「米国では、厳しい規制に対応できる銀行だけが生き残れるという認識に変わってきた。今が重要な転換点だ」と話す。

規制を乗り越え、世界の金融ビジネスで生き残れるかが重要なのはもちろんだ。だが、厳しい規制があるからと、企業への貸し出しを減らすようなことになれば、本末転倒だ。90年代のバブル崩壊後の金融危機で、日本の納税者はすでにきちんと銀行を助けているのだから。

 

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