毎年起きる「軍の欠陥」が是正されない“からくり”

画像の説明 韓国の国会議員と軍の信じがたい“なれあい”…

韓国軍の高速艦「コムドクスリ級」。76ミリ砲と40ミリ砲の両方が実戦で弾詰まりを起こしたという。

ソウルを守るバルカン砲には対空照準機がなく、水中無人探査機は4年間修理中、対戦車兵器は99%が寿命を迎えている-。

韓国で国会国防委員会による国政監査が始まり、韓国軍の軍備の致命的な欠陥が次々と明らかになっている。軍が膨大な予算を適正に使い、きちんと軍備を整えているか。軍への国政監査は税金の使途を明確にするためにも不可欠だが、韓国では毎年の監査ごとに膨大な欠陥が判明する事態が繰り返されている。その裏には、軍と監査側の“なれあい”が指摘される。

戦闘能力があるのか

「韓国軍は戦闘能力を備えた軍隊なのか」-。こんな刺激的な見出しで、国政監査の内容を報じたのは朝鮮日報(電子版)だ。現地メディアの「ネイバーニュース」や「news1」も、韓国軍に国防能力があるのか不安にならざるを得ないと伝えている。

報道によると、今回の監査で、首都ソウル一帯を守るために配備された対空バルカン砲が、実際は飾りものに過ぎないことが判明した。夜間照準装置は地上目標の探知用で、侵攻してくる敵装甲車くらいには対処できるが、本来の用途の航空機相手にはほとんど役に立たないという。

このため昼は肉眼で目標を追い、夜は敵に対処する手がないという状況で、「北朝鮮が奇襲攻撃を仕掛けるとすれば、昼より夜のほうが確率はずっと高い」(朝鮮日報電子版)と指摘される始末。絶対必要な対空用夜間照準機がなぜ付いていないのか、については「予算不足だった」との理由が挙げられたという。

軍事に国家予算1割…900億円のイージス艦は弾に錆、対戦車火器99%が寿命

また9000億ウォン(約900億円)かけて建造した最新イージス艦「栗谷李珥(ユルゴク・イ・イ)」は、搭載している魚雷欺瞞(ぎまん)弾(デコイ=おとり弾)24発のうち18発が、さび付くなどメンテナンス不良で壊れていた。

海軍がスウェーデンから4億5000万ウォン(約4500万円)で購入した水中無人探査機(ROV)も、導入後1カ月でスクリュー部分から油漏れが起きたほか、操縦装置の誤作動など故障が続発し、「購入後68カ月のうち、48カ月が修理中」という状態だ。

このほか、米国製やロシア製の対戦車ミサイルや、無反動砲など歩兵用の対戦車火器の99%が寿命を迎えている▽保有戦車の3割を占める米国製戦車M47、M48が老朽化のため時速10~30キロしか出せない(現代の戦車は時速60~70キロが標準)▽K9自走砲の弾薬備蓄が少なく、北朝鮮と戦闘になれば1週間で弾切れする-など、次々とあきれた実態が指摘された。

国家予算の約10%に当たる約35兆ウォン(約3兆5000億円)を軍事費に充てながらこのていたらく。「戦闘能力があるのか」と韓国マスコミが嘆くのも当然だろう。

実戦でも欠陥露呈

そんな事実を露呈したのが、10月7日に黄海の北方境界線(NLL)で発生した北朝鮮軍との交戦だった。7日午前9時48分にNLLを越えてきた北朝鮮警備艇に対し、韓国軍高速艦は同9時53分に交戦規則通りに警告射撃を実施。北朝鮮艇が数十発の射撃で反撃してきたため、高速艦は撃破射撃に切り替えた。ところが高速艦の76ミリ砲と40ミリ砲がともに「弾詰まり」で射撃不能になり、「十分な射撃もできず後方に退かなければならなかった」(朝鮮日報)。

この一件も国政監査で詳細が明らかになった。弾詰まりは砲身の製造不良か、製造後のメンテナンス不良が原因という。2010年の寧辺島砲撃事件の際、国産のK9自走砲が砲身の加熱でわずかな反撃しかできず、ほぼ「撃たれっぱなし」状態となったが、この教訓が全く生かされていなかったと、韓国マスコミから厳しく指摘されている。

韓国型国政監査の裏

国政監査で次々と明らかになる軍の不備に対し、朝鮮日報(電子版)は社説でこんな分析をしてみせた。「各軍は、毎年秋になると、互いにより多くの予算を獲得しようと競争を繰り広げる。問題を大げさに強調すると、もっと予算が下りるという非常識な予算配分方式のせいで、実際よりも誇張されたケースもあるはずだ」

韓国の会計年度は1~12月制で、秋は予算編成の時期だけに説得力があるが、現実の出来事を見ると事情は異なる。

というのも、水中無人探査機の不具合は09年の導入直後から起きている。デコイが使用不能なイージス艦「栗谷李珥」の実戦配備は11年。首都へのバルカン砲配備も、M47、M48の劣化も最近に始まったことではない。今年初めて明らかにしたことを「監査の成果」として高く評価できるだろうか。むしろ毎年、国政監査をしていながら、なぜこれまでこんな重大欠陥がわからなかったのか-。そこには韓国型国政監査の“闇”がある。

監査の“内幕”

国政監査は大統領直属の「監査院」の監査委員や、国会の国防委員会や外交統一委員会など、各種委員会に属する国会議員が、それぞれの専門分野について定期的に行っている。

10月、中国の駐中韓国大使館を韓国の国会議員5人が国政監査したが、その様子を東亜日報(電子版)が伝えた。5人は現代自動車北京工場を視察したあと、ロマンスミュージカル「金面王朝」を観劇。監査の日程は2日間で、うち1日を見学と観劇に費やしたという。ミュージカルのチケット代も監査費から出された。

一方で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第一書記の健康問題や、中国との軋轢(あつれき)となっている米国高高度防衛ミサイルTHAADの韓国配備問題などを調べる国政監査は、翌14日に3時間程度で終了したという。

トラブルもあった。この国政監査に参加した国会議員のうち、野党新政治民主聯合の金玄(キム・ヒョン)議員は、大使館駐在員に「なぜあいさつしないのか、と海外においても横柄にふるまった」(東亜日報電子版)という。金玄議員はかつて海外公館の代行運転手への暴行事件で告訴されており、そうした人物が監査に当たることも本来なら問題だ。

一方、監査された大使館側は「ミュージカルは中国文化を理解するため」「駐在員が議員にあいさつするのは当然」などと国会議員らを“擁護”。立場の弱さがうかがえる。

韓国では「国政監査の国会議員」がこの状態。軍も軍なら、監査する方もする方で、軍備のお粗末さはその“なれ合い”の結果-と国民から批判の声も上がるが、なかなか是正は難しいようだ。

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