中国人犯罪に吸い上げられる日本人のマネー

画像の説明 オレオレ詐欺や不正送金事件の背後にちらつく中国人の影 

LINEで誘惑「稼ぎたいなら中国に…」

近年、急速に被害が拡大しているインターネットバンキングに絡む不正送金事件。送金された先の口座名義人の国籍別内訳では中国が約7割を占める

日本人をだまして金を巻き上げ、中国人が私腹を肥やす-。まことしやかに語られる犯罪の一端が、明らかになった。大阪府警は9月、地下銀行を営んでいたとされる中国籍のアルバイトの女(27)を逮捕したが、オレオレ詐欺事件でだまし取った金を中国に送金していたことを供述したのだ。

日本で発生する犯罪にちらつく中国人の影。オレオレ詐欺を含む特殊詐欺以外でも、今年被害が急増しているインターネットの不正送金事件では、送金先口座の大半が中国人名義だった。一部犯罪には、日本人の少年らが加担している現実も見え隠れする。組織的犯罪も予想されるが、末端メンバーは組織の詳細を知らず、全容解明は一筋縄ではいかない。

腕時計に換えて不正送金

「金は中国・福建省に送った」

銀行法に基づく免許を受けずに不正に海外送金を行う「地下銀行」を営んだとする銀行法違反(無許可営業)容疑で逮捕された女は、府警の調べに対してこう供述したという。

逮捕容疑は、平成25年5月~今年7月、日本に住む20~40代の中国人女性5人からの依頼で計約1300万円を中国に送金したとされる。だが女は、この事件以前に、オレオレ詐欺グループの一員として逮捕されていた。

この詐欺グループは、警察官や銀行協会職員をかたって高齢者から現金をだまし取っていたとされ、府警は今年4~9月、被害者から現金を受け取る「受け子」の少年少女ら18人と、現金回収役の中国人夫婦を逮捕。夫婦のうちの妻が地下銀行を営んでいたとされる女で、オレオレ詐欺事件の捜査の過程で銀行法違反容疑が発覚した。

そして、再逮捕後の調べの中で、依頼者からの金だけでなく、オレオレ詐欺グループが集めた金も中国に送金していたことを明かした。このグループによる被害は、府警が確認しただけでも約1億2800万円に上るが、女はこの大半を中国に送ったと話しているという。

一方、府警が解明した地下銀行の手口は次のような流れのものだった。

(1)依頼者から現金を預かった女は、中国内にいる貿易商に連絡を取り、来日を要請。

(2)来日した貿易商は女から現金を受け取ると、日本国内で高級腕時計や希少な香木を購入。

(3)貿易商は中国に品物を持ち帰り、現地で換金。

(4)依頼人が指定した受取人に貿易商が現金を渡す。

オレオレ詐欺などは、アルバイト感覚で手を染める日本人の未成年者も

女は依頼された額の3%を手数料として受け取っていたとされ、オレオレ詐欺で集めた金も同様の方法で〝マネーロンダリング〟され、中国に不正送金された可能性が高いとみられる。

バイト感覚で日本人加担

オレオレ詐欺を含む特殊詐欺の被害額は昨年、過去最悪の約489億4千万円にのぼった。今年も昨年を上回るペースで被害が多発しており、1~7月で約312億7千万円となっている。これら特殊詐欺事件に中国人犯罪者が関与しているとささやかれるのは、一度や二度ではない。

「もっと稼ぎたいなら『架け子』をやればいい。中国に来ないか」

府警がオレオレ詐欺事件に関連して押収した少年のスマートフォンを調べたところ、LINEでのやり取りの中に、こんな文章が残されていた。

少年はオレオレ詐欺グループの中で被害者から金を受け取る役目の「受け子」だったが、被害者に電話をしてだます立場の「架け子」にならないかという勧誘のメッセージだった。

ほかにも少年のLINEの履歴には、この発言主が別の人物と中国語で交わした会話も残されていたという。

「中国人だけでは被害者をだますことはできない。電話を架ける、現金を受け取るなどのピースを日本人が埋めている」と捜査関係者。オレオレ詐欺などはアルバイト感覚で手を染める未成年者も多いとされる。中国人犯罪者の懐を暖めるために日本人の少年少女が働いている現実も垣間見える。

送金先の7割が中国人名義

事件の裏に中国人の姿がちらつくのは、特殊詐欺だけではない。

警視庁などは今年、大阪府の50代女性らのインターネットバンキングの口座から他人名義の口座に不正送金された現金を受け取ったとして、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑などで中国人ら13人を逮捕した。このグループが管理する口座約250件には昨年以降、約6億円が不正送金されており、大半が中国に送金された可能性があったという。

近年、急速に被害が拡大している不正送金事件。昨年1年間の被害額は約14億600万円で過去最悪だったが、今年は預金額の多い法人口座の被害が増加するなどの影響で、上半期ですでに昨年を上回る約18億5200万円の被害額となっている。

警察庁によると、今年1~6月に不正送金事件に絡んで133人が摘発されたが、6割以上の83人が中国人だった。また、盗み出した金が送金された先の2807口座のうち、7割にあたる1951口座が中国人名義だった。

日本人が食い物にされる特殊詐欺や不正送金事件。だが、捜査に課題は多い。

今年1~7月の特殊詐欺に絡む摘発者数は1082人だったが、ほとんどは受け子や見張り役という〝現場〟ばかり。不正送金事件でも、送金先の口座から現金を引き出す「出し子」らがほとんどで、主犯はもとより、指示役などの中堅どころへの到達も簡単ではない。

ある捜査関係者は「末端のメンバーはそもそも組織の全容を知らされていないことも多い」と明かす。それだけに、外務省や国際刑事警察機構(ICPO)を経由して中国側に国際捜査を申し入れるとしても、現地の犯罪グループの中枢にたどり着けるほどの十分な情報や証拠がなく、現実的ではない。

大がかりな組織の関与も疑われる特殊詐欺事件や不正送金事件の全容解明は、至難の業だ。

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