中国問題児「日本国歌は不快」

画像の説明 発言をいなした入江・萩野の「見事」

男子1500メートル自由形で優勝した中国の孫楊。「日本国歌は不快」と発言し物議を醸した=9月26日、仁川(桐山弘太撮影)

韓国・仁川で開催されたアジア大会で、中国競泳男子の孫楊が「日本の国歌は不快」と発言した問題が波紋を広げた。現在の緊迫した日中関係の状況下で、たとえば日本選手がそのような発言をしたら、中国側はどう対処するだろうか。聞きづてならないと国家間レベルの問題に昇華しかねない。日本側は「直接発言を聞いていない」ことを理由に静観の構えを取った。特に、孫楊と関わり合う選手の入江陵介、萩野公介の的確なコメントが「立派だ」と評価され、好感度はうなぎ上り。相手を貶める軽率な発言が、逆に日本選手の品格の高さを印象づける格好になっている。

AFP通信などによると、9月24日に行われた男子400メートルリレーで優勝した孫楊が中国メディアの「日本を打ち破って気分がよいか」との質問に対し、「気分がよいだけでなく、中国人にほっとしてもらったと思います。実際のところ、日本の国歌は耳障りだ」と述べたという。

孫楊は「問題児」として知られている。航空機客室乗務員との交際を反対されて公衆の面前でコーチと大げんかした。さらに、昨年11月には杭州市内でポルシェを無免許で運転し、バスと接触事故を起こして罰金2000元(約3万2000円)、行政拘留7日、そして6カ月の出場停止の処分を受けた。その際「社会に多大な影響を与えた。スポーツ選手という公的な立場の人間として深く謝罪したい」と改悛の情を示していた。

今回の問題に関しても、2日後に報道陣に対し「いくつかのメディアに報じられた国歌のことについて、申し訳なく思っている」と謝罪。さらに「誤解されている部分があると思う。僕はほかの国の国歌について本当に何も知らないんだ」と釈明に努めた。

AFPは「競泳の日本選手団と関係者は、アジア大会で政治的論争に巻き込まれたくないとしてコメントを控えている」と報道。日本関係者のコメントとして「とてもデリケートな問題です。我々は彼の発言を直接聞いていないのでコメントすることは難しい」と紹介した。

AFPは入江と萩野にもコメントを求めた。

それによると、入江は「直接聞いていないので、どういう意図か分からない。意味の取り違えがあるのではないか」と擁護。「個人的には友達だし、今後も同じ。そうした発言があっても、彼が優秀なアスリートであることには変わりはない」と語った。萩野も「彼が何を言ったのかははっきりしないが、ただ、自分はアスリートである前に素晴らしい人間であるべきだと考えている」と胸を打つ言葉を披露し「僕は1人のアスリートであり、アスリートと呼ばれることを大事にしたい」と述べた。

インターネット上には2人のコメントに関して「いいコメントだな」「積年の教育ってのは大事だよね」「萩野はよく言った」「入江、優しい子だなあ」「2人とも格好いい」「こんな返しされたら中国人は恥ずかしいだろうな」「挑発したつもりだけど、相手にこう言われてしまうと自分の惨めさに気づくだろう」「こういう時にきちんと冷静に踏み外すことなく答えられる人は格好いい」などとたたえる声が相次いだ。

ただ、香港メディアによると、中国のインターネット上には孫楊の発言について「正しいことを言っている。スポーツ選手として決勝戦の時に、日本の国歌を聞かずにすむようにするのは努力目標だ」といった意見が主流を占めているという。スポーツに政治を持ち込まないという“不文律”は通用しないようだ。

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