パチンコと警察の関係は?

th (5) パチンコで換金、警察庁「存ぜぬ」 課税狙う議員は反発

パチンコ業界と警察は「ずぶずぶの関係」としばしば言われます。確かに天下りはたくさんいます。

パチンコ業界団体にはキャリア、ノンキャリア問わず警察OBが幹部として就任しています。警察は、他では認めないグレーな換金もパチンコに限って黙認しています。外から見ればそれだけでもずぶずぶじゃないかということになるのかもしれません。

しかしこれは違います。ずぶずぶというと持ちつ持たれつの癒着した関係を連想しますが、もっと強い「支配と被支配」、あるいは「親分と子分」の関係と言った方が正確でしょう。警察が業界の言うことを聞くことはほとんどありません。警察は天下りのメリットは受け取るが、あくまで取り締まりの対象です。

こうした関係になったきっかけは、1985年の風俗営業法改正にさかのぼります。同法改正で、警察は積極的にパチンコ業界を所管する方針をとりました。警察はさっそくプリペイドカード機(CR機)の導入を推進しました。90年代前半です。

旗振り役は、当時、警察庁保安課長だった現衆院議員の平沢勝栄氏。脱税と北朝鮮への送金が問題になっていたパチンコ業界の売り上げの把握が目的でした。CR機を一気に普及させるため、警察は確変(確率変動)という爆裂仕様をCR機に限って認めます。しかしこの頃、現金機(CR機ではない)のシェアも依然大きいものでした。

90年代後半に「のめり込み」が社会問題化しました。警察は対応を迫られます。しかし約70万台にものぼる型式を「社会的不適合機」として「業界が自主的に撤去する」形で問題を決着させました。しかも自主的に撤去された型式の多くは現金機でした。おかげでCR機のシェアが急拡大しました。以後、警察はパチンコ業界へ積極的な関与をやめます。問題が起きたときに、社会から「パチンコを何とかしろ」と言われるのが嫌なので「問題になりそうなとき」に厳しく所管するだけの方向になりました。

厳しいだけで言い分を聞いてくれない警察に対し、パチンコ業界は政治にすがって警察の支配を何とかしたいという思いを強く持つようになります。しかし警察の絶対的な支配の前では政治も無力です。

2000年代初め、パチスロ爆裂機が問題になり、警察が規制を強める方針を打ち出しました。爆裂機はパチンコ店の稼ぎ頭だっただけに、規制による経営面の打撃は大きい。業界が頼ったのが大臣や政務三役も務めた当時の政権与党、自民党大物議員でした。議員はさっそく警察庁に出向いたものの、門前払いだったといいます。

政治との関係では、もう一つ、興味深い話があります。3年前の東京都知事選でのこと。東日本大震災の直後で世の中は自粛ムードのもと、節電がしきりに叫ばれていました。4選を目指し立候補した石原慎太郎氏は、電力を無駄遣いしているとしてパチンコ業界を名指しで批判します。しかし東京のパチンコ店の業界団体は、選挙で石原氏を推薦していたのです。推薦したのに批判されたんです。結局、都合よく使われただけでした。

今、パチンコの換金合法化と、それに伴う課税の議論が始まっています。政権与党の議員が、議員連盟までつくって業界に関与するという事態はこれまでもありましたが、政治の本気さで言えば今回が初めてです。これまで疎遠だったパチンコと政治の関係はどうなるか。長年、圧倒的に支配してきた警察との関係は変わるのか。そういう意味でも注目すべき問題だと思っています。

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