航続距離は600km!

画像の説明 塩水を循環して発電するスーパーEVの実力

EVの航続距離を決定する駆動用バッテリーの容量拡大に向けて世界中で研究が進む中、今年3月のジュネーブモーターショーで大きな話題を呼んだ「塩水を循環して発電」するスーパースポーツEVがいよいよ欧州で試験走行を開始する。

その名は「nanoFlowcell AG」が開発した「クアントeスポーツリムジン」。

ガルウイング式のドアを供えており、スーパーカー然とした外観が目を引く。

「リムジン」の名前が示すとおり、全長が5mを超える大型の4シーターEVで、心臓部には1974年に米NASAが発表した「レドックス技術」の原理を応用して発電する「ナノフローセル」を搭載している。

■ 「ナノフローセル」による発電原理は?

ちなみに「レドックス技術」は日本でも住友電気工業が「レドックスフロー蓄電池」として2001年に実用化に成功している。

今回「nanoFlowcell AG」社は従来「レドックスフロー蓄電池」が数千Lの電解液を必要としていたところを分子設計を通じた量子化学の応用により、イオン電解液を高濃度化、エネルギー密度を高めたことで400Lにまで抑えた。

会社名にちなんで命名された「ナノフローセル」は車載タンクに蓄えた400Lのイオン液を電気パワーに変えて600kmの航続距離を実現。

2個のタンク内イオン液に別種の金属塩を溶融させ、2液をイオン交換膜で分離。膜部では酸化還元反応によるイオン交換が起こるものの、液自体は混ざらない構造。

溶液をポンプで循環させるとイオンの酸化還元反応が進行、充電と放電を行うもので、充電中は液体の一方で還元反応、もう一方で酸化反応が発生、放電中には逆の反応が起こる。

■ 「クアントeスポーツリムジン」が発生する驚きの性能

同社によれば、主流のリチウムイオン電池に比べて重量あたり出力密度で1.5倍、エネルギー密度で5倍に達しており、1万回以上の充電サイクルを繰り返してもメモリ効果(継ぎ足し充電による電圧降下現象)が伴わない利点が有ると言う。

出力電圧は600V、出力電流50Aで、電池が出力した電力(30kW)を大容量のスーパーキャパシタに一旦蓄えた後、瞬時にロス無くモーターに供給する。

各ホイールに120kWの三相誘導モーターを配した4輪駆動式で最高出力925psを発生、全長5.26m、全幅2m、全高1.36m、ホイールベース3.2m、重量2.3トンの車体を0-100km/h加速2.8秒、最高速度380kmまで引っ張る。

欧州公道で試験走行へ

今年7月にドイツ バイエルン州の認証機関から公道の走行許可を取得、ドイツ及び欧州の公道を使った走行試験が可能になった。

同車を開発した「nanoFlowcell AG」のイエンスペーター・エレルマン会長は「この技術は成熟した自動車産業だけに留まらず、エネルギー、海運、鉄道、航空などの分野へ導入される可能性を持つ」としている。

国内自動車大手は水素で走るFCV(燃料電池車)を年内に発売するが、一方でシステムの小型化が得意な日本だけに「nanoFlowcell AG」のような画期的な発電方法で長距離走行を実現するEVベンチャー登場にも期待したい。

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