水道ピンチ、

画像の説明 かさむ改修 大幅値上げ相次ぐ

全国で上水道の料金を大幅に値上げする自治体が相次いでいる。浄水場や水道管が老朽化し、多額の改修費がかかるからだ。地方では人口が減り、家庭や工場で節水が進んでいることも水道事業の採算を悪化させている。

■3割漏水、料金17%アップ

埼玉県秩父市は10月から、水道料金を17・5%値上げする方針を決めた。標準世帯(大人2人、子ども1~2人)で月30立方メートル使うと、570円上がって月4730円になる。久喜邦康市長は「値上げしないと子孫代々、水道を経営できなくなる」と訴える。

秩父の水道事業は、県内で最も早い90年前に始まった。市の面積(577平方キロ)は県の15%を占め、うち87%が森林だ。人口は6万6千人。山間部の集落の隅々に水を送るため、水道管の距離は593キロにもなる。改修が追いつかず、浄水場から利用者に届くまで30%が漏れているという。

一方、東京都の漏水率は3%。住宅密集地域に効率的に水を配っているため収益性が高い。月24立方メートル使った場合の料金は約3300円だが、年300億円ほどの黒字を生み出し、その資金で最新の管に取り換えている。差は歴然だ。

市は水道管の交換や浄水施設の改修などで2030年ごろまでに160億円かかると見積もる。一方、13年度の水道事業は1億5千万円の赤字で、一般会計からの繰り入れで穴埋めした。水道料金の35%アップも検討したが、市民の反発が強く、値上げ幅を半分にすることで落ち着いた。

市の担当者は「水道は市民の命を守る事業。赤字だからといって、やめるわけにはいかない」と話す。

だが、展望は厳しい。20年後の市の人口は、現在より3割少ない4万7千人の見通し。トイレや洗濯機などの節水技術が進み、1人あたりの使用量が減っていることも、水を売る立場としては悩ましい問題だ。市民からは「節水するほど値上げが進むなんて本末転倒」と恨み節が漏れる。

■更新費、30年度に1兆円超

こうした状況は、秩父に限った話ではない。

水戸市は4月に水道料金を7・9%値上げした。やはり老朽化した施設の改修費などを確保するためで、値上げは20年ぶりだ。

2350キロの水道管網を抱える岐阜市は10月から9・47%アップする。値上げは14年ぶり。担当者は「料金を据え置くために更新を手控えてきたが、そうもいかなくなってきた」と話す。

ほかに広島県呉市(10月、10・7%)や長崎県島原市(4月、35%)などが値上げに踏み切っている。

上水道を管轄する厚生労働省によると、全国の水道管の総距離は地球16周分にあたる64万キロ(12年3月末時点)。法定耐用年数の40年を超えた水道管は全体の8・5%で、その距離は毎年0・5%ずつ増えている。

国土交通省が今月まとめた「水資源白書」によると、全国の上水道の更新費用は、10年度が6700億円だったが、30年度には1兆円を超す見通しだ。

厚労省の担当者は「水道管の多くは高度成長期に整備された。今後、一斉に更新時期を迎える」と話す。

■各地の採算性把握へ

総務省は近く全国の自治体に通知を出し、水道事業などの「経営戦略」を練るよう求める。将来にわたる事業の採算性を把握し、急な値上げを防ぐ狙いだ。

通知では、今後10年間で行う設備の改修や更新などをまとめた「投資計画」と、その費用をまかなうための「財政計画」を求める。その際、浄水場や水道管のサイズを小さくするなど、需要に見合った規模にするよう検討する。同時に、改修費が水道料金の急騰につながらないよう経費削減を徹底し、値上げする場合も段階的にすすめるといった方策も探る。

インフラ老朽化問題に詳しい根本祐二・東洋大教授は「料金に改修費が織り込まれていないとすれば、今までの料金設定が低すぎた。今後の人口減を考えれば、これまでと同じ施設を維持するのではなく、場所によっては給水車を取り入れるなど、大幅なコストダウンを図るべきだ」と指摘する。

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