ローマ法王の厚遇が裏目に?

画像の説明 ローマ法王の韓国訪問は1980年代以来、3度目になる。

法王フランシスコを迎えた韓国はまるで“カトリック国家”のような雰囲気だった。朴槿恵(パク・クネ)大統領は法王を直接、空港に出迎え、公式接見のほかミサにも出席するなど計3回も対面。テレビは1時間以上にわたってミサを中継し新聞は連日トップニュースや特集を掲載した。

ハイライトの16日の野外ミサはソウル中心部の光化門広場で故宮・景福宮と大統領官邸をバックに行われた。80万人が集まった光化門広場は史上最大の集会となった。

法王が18日に去った後、メディアには「やり過ぎではなかったか」と反省と批判の声が出ている。「特定の宗教を厚遇するのはおかしい」というわけだ。

韓国には約540万人のカトリック(韓国では天主教といっている)信徒がいるが、同じキリスト教でもプロテスタント(韓国では改新教)がその倍はおり、それ以上の仏教徒もいる。

今後、他の宗教の指導者の韓国訪問に際し同じような待遇、行事を求められたらどうするのか心配(?)する声も出ている。

朴大統領はじめ韓国政府が今回、異例の厚遇を施した裏にはいくつかの理由があった。

まず国際的に注目度が高いローマ法王の韓国での様子は、カトリック国家をはじめ世界中に伝えられることを計算し、韓国の国際的イメージアップにつなげたいと判断した。

もう一つは国内向け。「貧者の教会」を強調する法王に乗っかることで、朴槿恵政権がいかに弱者に配慮しているかを国民に印象付けようとした。朴大統領としては個人的にも韓国のカトリック系、西江大学出身でカトリックには親近感があったかもしれない。法王は滞在中、西江大を訪問している。

しかしこの厚遇は裏目に出た感がある。法王の貧者や弱者への配慮が韓国内の反政府・野党勢力を勢いづけたからだ。

韓国政治はセウォル号沈没事故の“後遺症”でいまなお激しく揺さぶられている。反政府・野党勢力は朴政権の責任を執拗(しつよう)に追及し、家族救済や再発防止など関連法案をめぐって政局マヒが続いている。

法王の滞在中、いたるところでセウォル号遺族が登場し法王にとりすがって訴えていた。脚光を浴びたのはこのほか軍基地反対や都市再開発被害者、解雇労働者などほとんどが反政府・野党勢力だった。ミサの最前列に座らされた反日の元慰安婦たちの影はかえって薄かった。

韓国カトリック界には以前から左翼的な「正義具現司祭団」という組織が存在し反政府運動を展開してきた。今回もその“影”がうかがわれる。彼らは北朝鮮に対してはいつも融和的で批判、非難を控えることが多い。過去、ひそかに平壌を訪れ韓国非難をした神父もいる。法王は韓国の不幸な人びとに触れながら、北朝鮮の抑圧された人びとにはひと言もなかった。

同じローマ法王でもヨハネ・パウロ2世(2005年死去)は共産主義批判が強く、彼の発言や行動は東欧共産圏の民衆に勇気を与え共産圏崩壊につながったという評価があるほどだ。

韓国の貧者や弱者はローマ法王が乗り出さなくても救済できる。今、東アジアでローマ法王が救済のメッセージを最も送らなければならないのは北朝鮮の民衆だったはず。4泊5日の滞在中、期待はついにはずれた。

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