中国経済の3大地雷原がデフォルト寸前

うみ 回収懸念される石炭・芸術品・不動産

中国経済の「地雷原」が暴発寸前だ。高利回りの金融商品や社債に相次いで債務不履行(デフォルト)の「Xデー」が近づき、23日にも短期社債の破綻が迫る。4~6月期の国内総生産(GDP)は公共事業頼みでやや改善したように見えるが、不動産バブル崩壊は深刻なうえ、「影の銀行(シャドーバンキング)」など病巣には手つかずのまま。リスクはむしろ高まっている。

高利回りの金融商品である理財商品や信託商品について、「3大雷区(3つの地雷原)」と呼ばれ、回収が懸念されているのが、「石炭」「芸術品」「不動産」への投資だ。

その一つ、石炭分野でくすぶっていた火種が再燃しようとしている。中国の信託会社、中誠信託で、「誠至金開2号」と呼ばれ、2011年に投資家から13億元(約212億円)を集めた。7月25日に償還期日を迎えるが、払い戻しができない恐れがあるというのだ。

中誠信託はこの金融商品で投資家から資金を集め、山西省の石炭会社に融資を行っていた。しかし、景気減速に伴う需要減もあって、石炭会社は返済できていない状況だという。

実は今年1月末にも中誠信託は同様の金融商品がデフォルト寸前に陥ったが、この時は“謎の投資家”が突如現れて資金を供給、危機を回避している。中国政府主導による救済とみられるが、今回も同様に助けてくれる保証はない。

中国人民銀行(中央銀行)の劉士余副総裁は今月8日、存続が難しくなった企業については「政府が救済するよりも破綻処理を進めるべきだ」とする考えを示している。

もう一つの地雷原である芸術品への投資も中国でブームとなり、バブルの様相を呈していたが、ここにきて価格下落に見舞われている。

そして、最大の地雷原といえる不動産の状況も深刻だ。今年3月時点で中国国内で未償還の不動産信託商品は1兆1500億元(約18兆8000億円)あり、今年中に1090億元(約1兆7800億円)、2015年には2035億元(約3兆3200億円)が償還期限を迎える。中国証券網は「デフォルト急増や、不動産会社の閉鎖が相次ぐ」という専門家の声を伝えている。

山西省で建設や不動産事業を手がける華通路橋集団では、7月23日に償還を迎える1年物のコマーシャルペーパー(短期社債)について、元本と利子の支払いができない恐れがあるとした。発行額は4億元(約66億円)にのぼり、中国企業が社債の利払いと元本の両方でデフォルトする初のケースとなるか注目されている。

中国国家統計局が発表した6月の新築住宅価格指数は、主要70都市のうち、上海、天津、広東省広州など55都市で前月より下落。前年同月との比較では69都市が上昇したが、うち68都市で伸びは鈍化した。

不動産市場の低迷は、他の業界の企業経営も圧迫し始めた。杭州の繁華街では6月、高級ブランド店も入る地元の百貨店「中都百貨」が突然閉店した。中国紙によると、運営する地元企業は百貨店業の低迷に加え、同時に手がける不動産開発業の不振が響いて資金繰りに窮したという。

中国経済に詳しい元週刊東洋経済編集長の勝又壽良氏は、「地価の値下がりが引き金になって、膨大な住宅在庫の値下がりへと波及する。地方政府の財政は土地売却益に6割以上も依存しているが、“土地錬金術”もいよいよ最終段階を迎えている」と分析する。

中国の会計検査署によると、昨年6月末時点の地方債務は10兆8859億元(約178兆円)で、うち約4割は今年から来年にかけて返済期限を迎える。地方債務の4割近くは「影の銀行」絡みだ。

そんななか、住宅購入制限策を緩和する動きも出始めた。購入後3~5年後、購入価格より20~40%増しの値段で買い戻すという極端なケースもあるという。中国政府も都市基盤の整備や高速鉄道建設などインフラ投資に力を入れたかいもあって、4~6月期のGDPは改善したが、人為的な景気下支えがどこまでもつのかは不透明だ。

前出の勝又氏はこう指摘する。

「不動産バブルの波が引いてしまった後、庶民の不満が鬱積し始めている。中国歴代王朝の瓦解(がかい)は、すべて民衆の経済的な不満が引き金になった。習近平主席の足元に火が着き始めた」

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