王朝衰退の兆し

神輿 中国史で汚職が話題になると、必ず名前が挙がるのが、和●(わしん)という人物である。

18世紀、清朝の乾隆帝の寵愛(ちょうあい)を受けて、異例の出世を果たし、ついに帝の10番目の娘を長男の嫁に迎えるまでになる。

▼ところが、乾隆帝が亡くなると、たちまち失脚して死刑を言い渡された。収賄によってため込んだ私財は、清朝の国家予算の15年分にも当たったという。もちろん、全て没収された。

▼中国共産党の最高指導部のメンバーだった、周永康氏(71)の失脚が明らかになった。汚職などの容疑で取り調べを受けているという。香港誌は以前、その金額を1千億元(約1兆7千億円)と、報じていた。

▼周氏は、国内油田の技師などを経て出世を重ね、石油閥、さらに治安、司法部門のトップにまで上り詰めた。習近平政権は、周氏の家族や関係者数百人を摘発して外堀を埋め、ついに本丸に踏み込んだ。周氏の運命は、和●のそれに重なる。

▼「ハエ(小物)もトラ(大物)も同時にたたく」。習国家主席は、この言葉通り、腐敗撲滅への強い姿勢を国民に示すことができた。もちろん、きれい事だけで政治が動く国ではない。周氏は、2年前に失脚した薄煕来元重慶市党委書記と結びつきが強かった。周氏の後ろ盾となってきた江沢民元国家主席の存在も忘れてはならない。「反腐敗キャンペーン」の正体は、政敵の影響力をそいで政権基盤を固める、権力闘争に他ならない。

▼そもそも、底なしといっても過言ではない、共産党幹部の腐敗の根絶が、果たして可能なのか。習政権が発足した際、英紙フィナンシャル・タイムズは、腐敗が続いて滅びた清朝の例を挙げて分析していた。その中で指摘したのは、中国共産党の「王朝衰退の兆し」である。

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