2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
「債務不履行」
アルゼンチン国債さらに格下げか
「債務不履行」の一種
1日付の朝日新聞(東京本社発行の最終版)に掲載されたアルゼンチン政府の全面広告。「全ての債権者に公正、平等、合法的に支払いを履行する」と訴えた
アルゼンチン政府が借金のために発行した国債について、米国の大手格付け会社は1日、約束通り返せない「債務不履行」の一種である「選択的デフォルト」(SD)に格下げする可能性があると発表した。返済をめぐって、一部の投資家ともめているからだ。
発表したスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、SDは21段階ある格付けの中で実質的に最下位の水準だ。今のアルゼンチンの外貨建て債務格付けは下から3番目で、投機的水準とされる「CCC(トリプルC)マイナス」。6月中旬に2段階下げられたばかりだった。
SDの可能性があるのは、アルゼンチンが6月30日に期限を迎えた米ドル建て国債の利払いができなかったためだ。期限が過ぎた後も30日間、関係者間で返済手法について話し合えるが、S&Pは最終的に決着できない可能性を指摘。その場合、支払い能力はあるのに返済できない「技術的なデフォルト」とみなし、SDに格下げするという。
アルゼンチンは2001年に財政破綻(はたん)した際、国債を持つ投資家に借金の減額を頼み、9割以上が応じた。だが、一部のファンドが全額返済を求めて提訴。米国の裁判所は、ファンドに15億ドル(約1500億円)全額を返さない限り、減額に応じた投資家への利払いも認めないという判断を出したため、アルゼンチンの利払いが滞った。
■生活物資値上げも
アルゼンチンには300億ドル(約3兆円)近い外貨準備があり、支払い能力はある。それでも、実際にデフォルトとみなされれば、減額に応じた投資家に対しても新たな返済計画をまとめ、投資家に納得してもらう必要が出てくる。
SMBC日興証券の伴豊氏は「すでにいったん財政破綻して十数年の返済を続けてきており、再びデフォルトしたとしても、影響は限定的だ」とみる。
ただ、再び失った国際的な信用を取り戻すのは難しい。伴氏は「全て返済し終えても、国債市場に復帰してまた借金ができるようになるには相当な時間がかかるだろう」と指摘する。
アルゼンチンの国民生活への影響も出かねない。自国通貨ペソは今年1月、信用不安から対ドルで大きく下落し、その後も安値が続いている。第一生命経済研究所の西浜徹氏は「為替安がさらに進めば、輸入物価の上昇を通じて、生活物資などの値上げにつながる恐れがある」という。
さらに今後、アルゼンチンと投資家との話し合いが円滑に進まなければ、金融市場の懸念材料になる。ブラジルをはじめとする新興国から資金が引き揚げられる心配も出てくる。
■主な国の外貨建て債務格付け
(1)AAA ドイツ、英国
(2)AA+ 米国
(3)AA フランス
(4)AA- 日本、中国
(9)BBB イタリア、スペイン
(10)BBB- ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ
<以下は投資不適格>
(12)BB ポルトガル
(16)B- ギリシャ
(19)CCC- アルゼンチン
〈格下げの可能性〉↓
(21)D(SD) アルゼンチン?
※米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)による。格付けは21段階あり、数字は上から何番目の段階かを示す