“コピぺ文化”の中国メディア

朝顔 日本関連の虚報、捏造記事を大拡散 

環球時報も一面で真顔で誤報道

中国メディアが最近、日本の防衛にまつわる有りもしないデタラメニュースを一斉に報じた。「陸上自衛隊が沖縄県宮古島市の宮古島に地対艦ミサイル部隊を配備した」という内容だが、ネット上での転載に次ぐ転載で、誤報は世界中に広まっており、まさに、ことわざにある「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」(一人がでたらめを言うと、多くの人が真実として伝えてしまう)事態となっている。誤報拡散の背景には、中国の「特色ある」メディア文化がある。

「自衛隊が沖縄県の宮古島に地対艦ミサイル部隊を配備したんですか? 中国のネットニュースで見たんですけど」

日本に留学経験がある知人の中国人から15日夜、メールでこんな問い合わせが舞い込んだ。はて。宮古島といえば、武田良太防衛副大臣が12日、現地を訪れて、陸上自衛隊警備部隊の配備に向けて、下地敏彦・宮古島市長に対して協力を要請したばかり。いくらなんでもそんなにすぐ、しかも、地対艦ミサイル部隊が配備されることはないと思いつつ、インターネットをチェックした。すると確かに、中国のニュースサイト「中国新聞網」に「陸上自衛隊は、釣魚島(尖閣諸島の中国名)から最も近い宮古島に、地対艦ミサイルの集中配備を終えた」との記事を発見。多くのネットメディアがこの記事を転載し、中国政府系の英字紙チャイナ・デーリーの中国語版「中国日報」も15日中に同様の内容を報じていた。

さらに翌16日には、中国共産党機関誌、人民日報も追随し、ネット版の「人民網」で、中国日報の記事を転載。人民日報傘下の環球時報も同日付の一面で、「日本の自衛隊が釣魚島から最も近い宮古島でミサイル配備を…」と大きく報じ、「日本当局は再び中国の目の前で、刀を手にし、満面に殺気を帯びた武士のように振る舞っている」とおどろおどろしく指摘した。

念のため、記者は16日、東京・市谷本村町の防衛省を訪れ、陸上幕僚監部に取材したが、予想通り、「宮古島に地対艦ミサイル部隊を置いたという事実はありません」(広報室)との回答。ちなみに、地対艦ミサイル部隊を置くとなるとそれなりの数の人員が必要になるが、現在、宮古島で勤務する自衛官は、(自衛官の募集などの業務に当たる)地方協力本部に勤務する5、6人だけだという。

ほんの少しの取材で事実でないことが判明したわけだが、中国ではこの虚報を真に受けた議論が展開された。「これはまさに日本の挑発であり、火遊びだ」などと、メディアで過敏に反応している人民解放軍出身の学者もいる有様だ。

 調査の過程で、環球時報の16日付記事は、ほかにも問題があることが判明した。記事は「日本時事通信社の15日の報道によると、西南諸島(沖縄諸島)の防御を強化するため、日本陸上自衛隊は新たに装備した88式地対艦ミサイルを釣魚島から170キロの距離の宮古島に運搬し、ミサイルシステムの配備を完了した」と“引用”しているが、時事通信がそんな報道をするはずはない。これもまた念のため時事通信社に確認したが、「当社はその手の配信はしておりません。対応を検討中です」とのことだった。

しかし、この捏造(ねつぞう)と言ってもいい「時事通信社の15日の報道によると…」のくだりは、中国のテレビ局がニュース番組で紹介し、それがインターネットでも流れるなど、“既成事実”になってしまっている。

日本の安全保障の動向、とりわけ尖閣諸島が関係するものは、中国側が最も敏感に反応するテーマの一つ。したがってこの種の誤報は、本来必要のない中国側の感情的反発を招くだけで、有害無益でしかない。特に今のように日中関係が冷え込んだ状況では、笑い事で済まされない場合もあり得るのではないか。

人民日報や環球時報は日本にも特派員や特約記者を置いているはずだが、一体、彼らは日本の主要メディアが一切報じていないのを疑問に思わなかったのだろうか。

実は中国では主要メディアでさえ、他社の報道内容を吟味せず、そのまま自社のニュース記事で使用する行為が横行しているのが実態だ。虚報が広まったのには、こうした中国メディアの文化風習が大きく関係している。

ついでに言えば、あちこちの中国メディアのサイトが記事とともに「6月6日宮古島に搬入されたミサイル車両」などの説明文を付けて使用している写真には、どこか見覚えが。産経新聞が15日早朝、「陸自、新型地対艦ミサイルを熊本に集中配備 南西防衛を強化」との見出しでウェブサイトに掲載した記事の関連写真(宮古島での自衛隊の統合演習のため、同島の港に到着したミサイル装備の写真で、2013年11月6日に撮影)と酷似しているのだ。

ところで、東京駐在の中国人ジャーナリストらに聞くと、もともとこの話の発信源は、日本の情報を翻訳して中国語で発信しているあるサイトだという。なるほど、中国新聞網も中国日報も環球時報も引用しているのはこのサイトの情報だ。調べたところ、このサイトには21日午前の段階でも、「日本は宮古島にミサイル基地を完成させた」との15日付の記事がトップページに掲載されていた。

「『大国』である中国の大手メディアが、事実の確認もせずにそのまま引用するなんて。お粗末で、本当に恥ずかしいですよ」

東京を拠点に活動しているある中国人ジャーナリストはこう嘆き、中国メディアに蔓延する転載文化を批判した。

さて。人民日報、チャイナ・デーリー、環球時報…なだたる中国メディアは誤報を訂正・謝罪するのだろうか。しないだろうなあ。

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