「中国人はなぜ米国でトウモロコシの種を盗むのか」

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トウモロコシの種の窃盗から見えてくるものは

香港(CNNMoney) 米検察当局は7月、米国の遺伝子組み換え種子メーカーの商業機密を盗んだ疑いで、中国人の莫雲容疑者を逮捕・起訴した。同被告は、夫である邵根伙氏が創始したバイオテクノロジー企業・北京大北農科技集団(DBNグループ)のためにトウモロコシ近交系種子にまつわる商業機密を盗んだ疑いを持たれている。

この事件を巡っては、莫雲被告の兄弟でありDBNの国際事業部ディレクターを務めていた莫海龍被告を含む中国人6人が、特許権の保護対象となっているトウモロコシ種子を盗み中国に持ち込もうとした疑いで昨年起訴されていた。7月の起訴状で新たに莫雲被告が追加された格好だ。

起訴状によると、被告らは米中西部のトウモロコシ畑を中心に車で移動し、米パイオニアやモンサントといった種子開発大手企業のトウモロコシ近交系種子を盗んで回っていたとされる。

貯蔵庫を借り自前の実験場を購入するなど、大規模な農業スパイ活動を展開していたが、莫海龍被告がアイオワ州の農場を掘り返しているところを警備員に目撃され、盗みが発覚した。

DBNとグループ傘下のトウモロコシ種子会社、北京金色農華種業科技は、この件に関してコメントを出していない。

標的となったトウモロコシ近交系種子の開発を巡っては、干ばつや害虫に対する耐性を高めるため、米国の大手種子メーカーがそろって大金を投じている。中国は近年、トウモロコシの輸入大国に転じており、国内のトウモロコシ生産を増大させるために盗んだテクノロジーが使われていた可能性もある。

米国ではこのところ、中国人による産業スパイ事件が相次いで露見しており、今回の農業スパイ行為の発覚もそのひとつ。

窃盗の対象となっている分野は、米の品種改良テクノロジーから航空宇宙産業関連の機密情報に至るまで、多岐にわたっている。

アナリストの分析によると、こうした動きの背景には、何年もの時間がかかる研究開発のプロセスを省略し、一気に自国の近代化を進めようとする中国政府の狙いがあるようだ。
頻発する産業スパイ事件を受けて、米連邦捜査局(FBI)や米国政府も対策に乗り出している。

FBI特別捜査官のトマス・メッツ氏は「商業機密や特許、機密情報、国家の安全保障にかかわる情報を盗みだそうと躍起になっている人間を特定し、犯行を事前に防ぐのは、テロ対策に次ぐFBIの第2の優先課題だ」と話し、問題の重要性を説く。

政府レベルでも、米オバマ大統領が中国の習近平(シーチンピン)国家主席に対して問題提起してきた。

ただ、今年3月、エドワード・スノーデン元中央情報局(CIA)職員により、米国の政府機関が中国の電気通信大手、華為技術(ファーウェイ)を監視対象としていたことが暴露されて以降、オバマ大統領の言葉も説得力を欠いている。

実際、中国外務省は5月、サイバー攻撃による産業スパイ活動を行っていると指摘された際、米国の側こそ通信を傍受して機密情報を盗んでいると反論し、米国の偽善を批判していた。

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