「崩れる文大統領の“岩盤支持層” #MeToo騒動拡大に女性が嫌気 」

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難題続きの外交や側近スキャンダルに苦しむ韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率を下支えしてきた、若年女性に異変が生じている。政権発足直後には95%を記録したこともある20代女性の支持率は半減し、直近の世論調査では不支持の回答が急増。

4月の総選挙を前に、出馬予定だった候補者の女性問題が発覚したことが要因となっており、“岩盤支持層”の離脱は今後の政治情勢にも影響を与える可能性がある。

■貧困育ちの看板候補
 
セクハラや性暴力を告発する「#MeToo」(「私も」の意)騒動に与党「共に民主党」を巻き込んだ張本人は、誰もが同情する環境下で育った20代の青年だった。
 
共に民主党が1月23日、4月の総選挙に擁立すると発表したウォン・ジョンゴン氏(27)。肝硬変で早世した父と、視覚・聴覚の障害を持った母の元に生まれた。妹は海外に養子に出され、生活保護を受ける貧困家庭に育ちながらも、苦学して名門・慶煕(キョンヒ)大に入学。

学生時代からボランティア活動を続け、聴覚障害者と手話通訳者を結び付けるマッチングアプリを開発するなどの社会貢献を重ねた。
 
韓国では、チョ・グク前法相の家族をめぐるトラブルなどにもみられる、親の威を借りた学歴不正に厳しい視線が向けられている。そんな中でウォン氏は、与党のイメージを回復する看板候補としてうってつけの存在だった。

「この国の青年を代表することはできないが、彼らに共感し、歩みを共にします」。出馬会見で示した端正な顔立ちと上品な語り口も、好印象を与えた。

■「元カノ」の暴露
 
「ウォン・ジョンゴンの実態を暴露します」。ウォン氏の元交際相手を名乗る女性がインターネット掲示板に文章を投稿したのは、会見から4日後のことだった。

女性は、性行為の撮影を強要されるなどウォン氏に「性玩具扱いされた」と主張。ウォン氏が会社の同僚や道行く女性らを「ブタ」などと蔑視する言葉で表現したと訴えた。
 
実は、ウォン氏はもともとある種の有名人だった。小学6年生の時、貧しい生活の中で懸命に母を支える姿がテレビ番組で取り上げられ、それ以降周囲の尊敬を一身に集めてきた。
 
だが、「苦労人」が「清廉」だとは限らない。女性はSNS上でのメッセージのやり取りなどを公開しながら「俺のようなセレブはどこにもいないぞ」といった過去の発言を紹介し、「元カレ」の傲慢さを繰り返し説明した。
 
女性の人権問題に対し高い関心を示し、「フェミニズムの高まりを社会に反映することが次の国会の宿命であり、時代精神だ」と強調していた人権派青年の“裏の顔”に、ネット住民らは一斉に反応。与党を支える複数の女性団体も、「女性への暴力にそっぽを向く政党に用意される議席はない」などと党に厳しく対応を要求した。
 
ウォン氏は女性の主張が「事実ではない」と否定した上で、「問題となったこと自体が党に迷惑をかける行為」だったと謝罪。女性の投稿からわずか1日で、不出馬を表明する事態に至った。

■「20代男性」対策が裏目に
 
ウォン氏の問題は、新型コロナウイルスに対する政府対応への不満とも重なった。直近の世論調査(韓国ギャロップ調べ)では、文政権への「不支持」が20代で10ポイント、女性で8ポイント上昇。政権を中心的に支える「20代・女性」の離反を招く結果となった。
 
そもそも、与党がウォン氏を擁立した背景には、ウォン氏と同じ20代男性の支持を回復させる狙いがあった。
 
2018年末の年代・男女別の世論調査(リアルメーター調べ)では、20代女性の政権支持率が63・5%と最も高かった半面、20代男性では29・4%で最低値を記録するという奇妙な現象が起きた。文大統領が「フェミニズム政権」を標榜(ひょうぼう)する中、政府に尊重されていないと感じている20代男性への対応が急務になっていた。
 
しかし、想定外の事態でウォン氏擁立が裏目に出た与党は「『イー(20代の意)男子』を捕まえようとして、『イー女子』を失う」(韓国日報)結果に。「#MeToo」が焦点となったことで、「女性支持層の怒りを和らげようと今後拙速に対応すれば、若年男性のさらなる支持離れを招くこともある」との懸念の声も上がっている。

■野党も支持低下
 
一方、「フェミニズム政権を自称しながら、男女間の葛藤を建国以来最も大きくした」と政府批判を展開する最大野党の自由韓国党党も「政権支持層の離脱票を吸収できていない」(朝鮮日報)のが実情だ。20代の支持率は両党とも低下傾向にあり、無党派層が拡大の一途をたどる。
 
30~40代の支持が比較的安定している革新与党と、高齢者の支持が厚い保守野党。文政権の今後を占う4月の決戦を前に、20代の奪い合いは今後ますます激しさを増すと予想される。

内政・外交の課題が山積する中、展開次第では「#MeToo」対応での一つのミスが選挙の勝敗を分けたとしても不思議ではない。

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