「アメリカに歯向かい始めた韓国」

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アメリカに歯向かい始めた韓国

1.文在寅大統領の新年の辞

1月7日、韓国の文在寅大統領は新年の辞を発表しました。

文大統領は生中継された演説の中で、南北関係を推進していく考えをしましました。該当部分を次に引用します。

しかし北米対話の膠着の中で南北関係の後退まで心配される今、米朝対話の成功のために努力していくのと共に南北協力をより一層増進させていく現実的な方案を模索する必要性がより一層切実になりました。

戦争不許可、相互安全保障、共同繁栄という朝鮮半島平和のための三種類の原則を守って行くために国際的な解決が必要ですが、南と北の間の協力でできる仕事もあります。南と北が額を突き合わせて真剣に共に議論することを提案します。南と北は国境をあわせているだけでなく、一緒に暮らさなければならない生命共同体です。8000万人の民族の共同安全のために境界地域協力を始めることも提案します。金正恩委員長も同じ意志を有していると信じます。

膠着状態に陥っている米朝対話を横目に、南北国境での協力を進めるというのですね。

で、具体的に何をやるかについてですけれども、文大統領は14日に行われた年頭記者会見で、南北協力事業の例として、観光や、東京五輪の共同入場と単一チーム構成、2032年の五輪共同開催などを挙げ、「北朝鮮制裁に抵触しない範囲でやれることはいくらでもある。国連の例外的な承認が必要な場合は、それを得るため努力する」と南北関係の改善に取り組む姿勢を明確にしました。

非核化が進展しない北朝鮮に対して経済制裁を続ける中、制裁に抵触しないでやれることが一体、どれだけあるのか分かりませんけれども、アメリカはすかさず不快感を示しています。

2.対北制裁決議第1718号

1月16日、ハリス駐韓米国大使は、外信懇談会で、文大統領が新年記者会見で発表した対北政策構想について「制裁の枠組みの中での旅は認められる」としながらも、「旅行者が持ち込むものの一部が制裁に引っかかる可能性がある……今後、国連やアメリカの独自制裁を触発する誤解を避けるために、米韓ワーキンググループを通じて進めなければならない」と警告しました。

対北制裁決議第1718号8条c、d項では、軍事関連物資および金融資産を北朝鮮に移転することを禁じています。次に引用します。
(c)すべての加盟国は、上記(a)(i)及び(a)(ii)の規定にある品目の提供、製造、維持又は使用に関する技術訓練、助言、サービス又は援助の、北朝鮮に対する自国民による若しくは自国の領域からの又は北朝鮮からのその国民による若しくはその領域からの、あらゆる移転を防止する

(d)すべての加盟国は、それぞれの法的手続に従い、この決議の採択の日に又はその後いつでも、自国の領域内に存在する資金、その他の金融資産及び経済資源であって、北朝鮮の核関連、その他の大量破壊兵器関連及び弾道ミサイル関連計画に関与し又は支援を提供している(その他の不正な手段を通じたものも含む。)として委員会若しくは安全保障理事会により指定される者又は団体により、又は、それらの代理として若しくはそれらの指示により行動する者若しくは団体により直接的又は間接的に所有され又は管理されるものを直ちに凍結し、また、いかなる資金、金融資産又は経済資源も、自国の国民又はその領域内にいる者若しくは団体により、そのような者又は団体の利益のために利用可能となることのないよう確保する。

事実、昨年2月、アメリカは金剛山で開かれた南北交流行事に制裁対象としているノートパソコンなどの電子機器の搬入を不許可にしたことがありますけれども、もし北朝鮮への個別観光が行われた場合、彼らが持ち込む電子機器や現金がこれに抵触する可能性があります。

ハリス大使が示した国連やアメリカの独自制裁を触発する誤解を避けるために、米韓ワーキンググループを通じて進めるべきだとの発言は、妥当なものだと思われます。

3.ハリス大使は朝鮮総督

けれども、韓国はハリス発言に反発。対北の国際的枠組みを考慮せず、独自で南北協力を進める構えを見せています。

1月17日、韓国与党・共に民主党の宋永吉議員はラジオ番組『キム・ジョンベの視線集中』に出演し、ハリス大使の発言について「ハリス大使の個人の意見で判断すべき問題……意見表明は良いが、われわれが大使の言った通りに従わなければならないとすれば、大使が朝鮮総督なのか」と反発。

続けて、「大使としての位置にふさわしくない少し言い過ぎた発言ではなかったのか考える……これが個人の意見なのか、本部の訓令を受けて述べた国務省の公式意見なのか見分けづらい……大使は大使の職分に合わせて発言に慎重を期するべきではないか……どうしてもあの方が軍人だから、太平洋艦隊司令官を務めたため、外交には少し馴染んでいないのではないかと考える……韓米間友好を望む両国国民にあまり役に立たないかもしれない」と述べました。

そして、政府の北朝鮮個別観光推進構想について「積極的に試みるものと考えられる……個別観光は国連の制裁対象でない……大韓民国の外交がアメリカが引いておいた限界線内で遊ぶ外交になってはならない……南北関係と韓米関係は相互衝突される時もあるが、同時並行で推進されるのが正しい」と述べました。

アメリカの代表であり、公職として派遣しているハリス大使を外交素人扱いするだけでなく、個別観光は国連の制裁対象でないと言い切ってしまっています。完全にアメリカに喧嘩を売っています。

韓国が個別観光は国連の制裁対象でないというのは勝手ですけれども、国連制裁決議で決まった内容である以上、制裁対象でないならないという根拠を示し、関係国全ての了解を得なければ国際決議違反と見做されても仕方ありません。どうも文政権はその辺りを軽く考えているように見えます。

4.韓国はなぜあんなことを言うのか

14日、韓国外交部の康京和長官はサンフランシスコ郊外のあるホテルで行われた米韓、米韓日、日韓外相会談後の会見で「米朝対話と南北対話が互いに、共に補い合い、善の循環プロセスを形成しながら進んでいくべきというのがわれわれの基本的な立場……ある特定の時点で米朝が先を進むこともあるし、南北が先を進むこともあると思う」と述べました。

そして、「南北間で重要な合意があり、その中には制裁が問題とならない部分もあれば、制裁に引っ掛かれば例外認定を受けてできる事業も確かにある……これらについてポンペオ国務長官とさまざまな意見を交換した……アメリカ側もわれわれのそのような意思や希望について十分に理解している」との考えを示しました。

なにやら、先般のGSOMIA騒動で、韓国が考える「理解」とアメリカの「理解」は別のもののようだ、と抜かして物議を醸したことを思い起こさせますけれども、仮に、韓国が自分勝手な曲解をしていなかったとしても、理解と承認は別のものです。韓国の立場を理解した上で、それでも承認しないことなどいくらでもあり得ます。

実際、アメリカ国務省のオルタガス報道官は、米韓外相会談後に配布した報道資料の中で「両外相は北朝鮮に対し、米韓間で緊密に調整することを改めて確認した……日米韓3ヶ国による協力の重要性についても話し合われ、地域的、国際的な多くの事案で緊密に協力を続けることも約束した」と伝えています。

要するに、米韓、日米韓の枠組みから抜け駆けするなど許さないと言っている訳です。

14日、アメリカ国務省は文大統領の記者会見についてボイス・オブ・アメリカ(VOA)放送の取材に「全ての国連加盟国は国連安保理制裁決議を守り実行せねばならない……我々は北朝鮮に対して一致した対応を取るため緊密に調整することを約束した」と釘を刺しています。

京畿大学の南柱洪教授は「今年は北朝鮮が強い挑発に乗り出す可能性が高く、韓米間の協力関係を一層強化しても足りないだろう。そのような状況で米韓間の考えの違いが表面化するのは大きな問題だ」と指摘していますけれども、その声がどこまで文政権に届くのかかなり疑問です。

複数の外交筋からは「文在寅政権は北朝鮮との事業を何としても推進したがっているが、アメリカ政府はこれに頭を痛めている」との見方を伝え、ポンペオ長官も裏では「韓国はなぜあんなことを言うのか」と不満を漏らしているという情報もあります。

この状況下でも文政権が無理に南北協力を進めるなら、アメリカとてセカンダリーボイコットを含め、韓国に対してもなんらかの制裁措置を取って来るのかもしれませんね。

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