「イランを叩いて北朝鮮を動かす」米の狙い

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米国によるソレイマニ司令官殺害に対しイランが報復したことで、報復の連鎖を心配する声もありましたが、両国がこれ以上の軍事行動を望まない姿勢を示し、全面衝突の危機はいったん去ったようです。

この収束を予見していた軍事アナリストの小川和久さんは、米国の行動がただイランを睨んでのものではなく、北朝鮮をも見ていたと指摘。正月7日の金正恩の姿は、米国のメッセージに敏感に反応したものだという見方を示しています。

イスラム革命防衛隊特殊部隊のソレイマニ司令官の殺害に対する報復として、イラン側はイラク駐留米軍基地2カ所に対して12発の短距離弾道ミサイルを発射しました。ミサイルはイランが北朝鮮製のスカッドCを改良した、射程750~800キロのキアム1を含むと見られます。

この米国とイランの緊張については、第3次世界大戦にエスカレートするのではないかとのセンセーショナルな報道もありますが、もう少しクールに眺める必要があると思います。

米国への報復について、イラン側は米国の軍事施設を攻撃すると声明しています。これは、イランが背後で支援しているヒズボラなどの武装勢力を使った無差別なテロなどは行わないということです。同時に、イランは核開発を無制限に進めるとも述べていますが、これは核合意に米国が戻ることまで視野に入れた、特にEU諸国を意識した意思表示だと考えてよいでしょう。むろん、いずれも国際的孤立を避け、イランの国家建設を進めていくための基本的な戦略です。

米軍が駐留している基地への間髪を入れない弾道ミサイル攻撃は、ただちに報復した姿を激高するイラン国民に示し、それをもって国連やEU諸国の調停や米国との交渉を受け入れた場合にも、国民の怒りがイラン指導部に向けられることを避ける措置だった側面があるのです。

このメルマガが配信される頃、米国はイランに反撃しているかもしれません。その場合も、軍事施設に限定したピンポイント攻撃になる可能性が大きいと思います。

米国によるソレイマニ司令官の殺害については、米国は北朝鮮をも視野に入れていたと考えてよいでしょう。今回のような軍事行動をとる場合、たったひとつの目的のために大きなリスクを冒すことは考えにくく、さまざまな目的を視野に行動することが少なくないからです。

金委員長に向けて発せられた恐ろしいメッセージ

イランの姿を北朝鮮と重ね合わせる
米国は昨年12月22日、11月12日に実施した米韓軍事演習のうち、金委員長とおぼしき北朝鮮要人を拘束したシナリオの写真を公表しました。金委員長が最も怖れているとされる斬首作戦です。

これに対して、北朝鮮は年末ぎりぎりに4日間という異例の長さで朝鮮労働党中央委員会総会を開き、時間稼ぎの姿勢に終始しました。期限としてきた12月31日まで米国の回答を待つ姿勢を見せたのです。それでも米国側の回答がないとみるや、恒例となっている新年の辞も行わないなど、表面的には強硬姿勢への回帰を装って見せたのです。

そうしたところに、絶妙ともいえるタイミングでのソレイマニ司令官の殺害です。

果たせるかな、金正恩委員長は7日、暗殺の危険性が囁かれるのを無視するかのように、公の場に姿を見せたのです。これは、北朝鮮の国内向けには米国の恫喝に怯んでなどいないことを示しているのですが、その実、丸腰の姿を見せることによって米国と対決するつもりはないというメッセージを発したのです。

マスコミ報道は、イランならイラン、イラクならイラクの出来事にだけ焦点を合わせることになりますが、ソレイマニ氏を殺害した米国の立場から、あるいは報復を口にするイランの立場から眺めると、違った景色が見えてくるのです。

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