2018年11月1日よりタイトルをWCA(世界の時事)に変更しました。
「ゴミ問題の救世主になる可能性(米研究)」
有毒性の発泡スチロールを食べて消化してくれるミールワームがゴミ問題の救世主になる可能性(米研究)
ゴミムシダマシ科の甲虫の幼虫であるミールワームは、鳥やは虫類などのエサとして繁殖されている小さな芋虫だ。
そんなミールワームに、世界で大問題になっているプラスチックを消化する力があることが明らかになったそうだ。
それもただのプラスチックではない。有害物質の入った発泡スチロールをムシャムシャと食べても全く問題ないという。
以下ミールワームが登場するのでご注意を。【ミールワームの腸にはプラスチックを生物分解する微生物がいる】
アメリカ・スタンフォード大学の研究グループが『Environmental Science & Technology』(12月5日付)に掲載した研究は、プラスチックに含まれる化学物質がミールワームの腸で分解された後、最終的にどうなるのかを調査した初のものだ。
この研究以前、別の研究者によってミールワームがさまざまな種類のプラスチックを食べて生きられることが明らかにされていた。ミールワームの腸にはプラスチックを生物分解する微生物が潜んでいるのだ。
これはプラスチックゴミ問題の対策として非常に有望な発見だったのだが、プラスチックを食べたミールワームの体内に添加物が蓄積されているのだとすれば、動物のエサとしてはもう使えないことになる。
この懸念を一掃したのが今回の研究だ。
【発泡スチロールに含まれる有害物質問題】
この研究で取り上げられた発泡スチロールは、包装や断熱材としてお馴染みのものだ。
しかし便利な反面、密度が低くかさばることからリサイクルにはコストがかかるうえに、添加物としてヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)が使われているという難点もある。
HBDCは、プラスチックを燃えにくくする特性ゆえに広く利用されており、2015年だけでも250万メートルトンがプラスチックに添加されたと推定されている。
だが内分泌を撹乱したり、神経毒性があったりするなど、健康や環境に対する悪影響も指摘されており、EUでは使用禁止が予定され、米国でもそのリスクを評価している最中だ。日本でも2014年5月1日に第一種特定化学物質に指定されている。
【発泡スチロールを消化してくれるミルワーム】
アニャ・マラウィ・ブランドン氏らの実験では、発泡スチロールを食べたミールワームは、半分を部分的に消化された破片として排泄し、もう半分を二酸化炭素として排出することが確認された。
また、そこに含まれていたHBCDも排泄物と一緒に排泄されていた。発泡スチロールを食べてから24時間でおよそ9割が、48時間で実質的にすべてが体の外に出たようだ。
発泡スチロールを与えられたミールワームの食欲は、通常のエサのときと同様健康的なもので、それを食べたミールワームをエビに与えてみたところ、こちらも同じく問題なく食べてくれたとのことだ。
【ただしプラスチックゴミ問題は根本的な解決法が望まれる】
なおブランドン氏らによると、ミールワームが排泄したHBCDは相変わらず有害であるし、それ以外の添加物が分解されないまま残っている可能性もあるという。
ミールワームは確かにプラスチックゴミ問題の有望な対策ではあり、これまで使用されていた発泡スチロールを処分するには有効だが、根本的な解決を図るには、プラスチックのかわりに生分解性の素材を利用し、使い捨て製品をなくすしかないと研究チームは述べている。