「求められる新しい国家像とは」

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自民党も野党も「昭和」で思考停止の今、求められる新しい国家像とは

日本で「ヒト・モノ・カネ」不足の悪循環が進んでいる。それにもかかわらず、与野党ともに打つ手なしという状況に陥る日本の政治・社会システムには限界がきている。そこで、令和元年を締めくくるに当たって、日本の限界を超える「新しい国家像」を提示したい。

日本の政治・社会システムに
限界がきていることは明らか
 
2019年に国内で誕生した日本人の数が86万4000人となり、統計を開始した1899年以降で初めて90万人を下回る見通しとなった。一方、死亡数は137万6000人と戦後最多で、自然減は51万2000人と初めて50万人を超えた。昨年、初めて40万人を超えたばかりであり、政府の少子化対策にもかかわらず人口減少が加速していることが明らかになった。

日本社会のあらゆる場面で、「少子高齢化」の悪影響が顕在化している。とにかく、「ヒト・モノ・カネ」が足りない。さまざまな政策の実現が遅れ、さらに少子高齢化が進み、ヒト・モノ・カネが足りなくなるという悪循環がスパイラル状に進んでいる。

「自民党政治」の限界をはっきりと示した政策とは?

日本の政治・社会のシステムに限界がきていることは、明らかではないだろうか。だが、安倍晋三政権は、もはや過去の遺物にすぎない「昭和の美しい・日本」(本連載第202回)を延命しようとするだけにみえる。

一方の野党も、国民から完全に見放された「寄り合い所帯」の再結成に熱心で、政策は安倍政権が実現したことを元に戻そうとするだけだ。萩生田光一文部科学相の失言をきっかけに「大学入試改革」を振り出しに戻した(第225回)。

そして今度は秋元司元内閣府副大臣の逮捕を好機とみて、「統合リゾート(IR)禁止法案」を国会に提出するらしい。野党も昭和の日本に戻そうという以外に、何の政策構想もない。野党共闘の支持率は全く上がらない。

唯一、山本太郎代表率いるれいわ新選組の「消費税廃止」が目を引く政策だ。自民党に横取りされない政策で、そこに目を付けた山本代表の生き残り戦略は賢いと思う(第218回)。だが、コアな左翼には受けるだろうが、まっとうなサイレントマジョリティーの支持は得られそうもない。こんなものは「セクシー」でもなんでもない、「超しょぼい」政策だ。

本稿は、令和元年を締めくくるにあたり、与野党ともに打つ手がみられない日本の限界を超える「新しい国家像」を提示し、気持ちだけでも明るく新年を迎えたいと思う。

「待機児童対策よりも幼保無償化」
という決断に自民党政治の限界が露呈

「自民党政治」の限界をはっきりと示したのが、安倍政権が参議院選挙に勝利し、消費増税によって実行した「幼児教育・保育無償化」ではないだろうか。「幼保無償化よりも、待機児童対策をやれ」という批判が広がったにもかかわらず、自民党が「待機児童対策よりも幼保無償化」を選んだということに、自民党政治の限界がみえている。

自民党政調会のボトムアップで政策立案される過程を考えてみよう。自民党は、地方に対する公共事業や補助金によって支持を拡大することで長期政権を維持してきた。しかし、待機児童は都市部だけに集中しており、対象は約2万人である。

大阪市による待機児童問題の事実上の解決に学べ

一方、自民党が票田としてきた地方の多くでは、保育所には空きがあり、待機児童はほぼいない。端的にいえば、待機児童対策をしても、地方では支持を得られず、選挙の票にはつながらないのだ。それに対して、幼保無償化を実現すれば、全国の約300万人に恩恵があるとされる。自民党の政調会がいつも通りに政策を立案すれば、幼保無償化が選択されるのは自然なことなのだ(第209回・P4)。

それに対してこの連載では、都市部の問題である待機児童問題は中央集権の政党ではなく、地方に基盤を持つ政党が主導して解決したほうがいいと主張した(第209回・P5)。その事例は、大阪市による待機児童問題の事実上の解決であった。

大阪市は吉村洋文市長(現府知事)の時代に、認可保育所の大幅増設による保育所入所枠の9000人増を断行した(吉村大阪市長定例記者会見2018.5.10)。まさに「異次元の保育所整備」であり、待機児童数を過去最低の37人にしたのだ。これは、「幼児教育無償化」を優先させてしまう「中央集権」の自民党政治よりも、地方が自ら財源を確保し、実行するほうが「待機児童問題」の解決に適していることを示しているのではないだろうか。

今や、全ての都道府県、市町村が中央政府に伺いを立てて行政を行う「中央集権体制」は古いのではないか。橋下徹元大阪府知事・市長も著書等で主張しているが、東京、大阪、京都、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡などの大都市に政府の権限の多くを移管し、その大都市の周りを市町村が囲む「地方主権」で、社会保障や福祉などの行政サービスを提供するのが、適していると考える。

そして、この連載では、地方主権の実現のための「憲法改正」を主張してきた(第69回)。参議院の「連邦国家型上院」への改革である。ドイツやカナダなど連邦制の国家では、日本の参院選のような「上院選挙」は行われない。上院は、知事・地方議会の代表、マイノリティの代表の議員で構成されている。

日本に「地方主権」を導入するには、「地方分権」も重要だが、地方の代表が国会議員となり、国の意思決定を担う「連邦制型上院」の導入を検討していいのではないだろうか。

例えば、17年の衆議院選挙で小池百合子東京都知事率いる「希望の党」が惨敗した(第169回)。その惨敗の原因の1つが、小池氏が東京都知事を辞して選挙に立候補しないことで国民を失望させたことだった。だが、もし日本が「連邦制型上院」で、「東京都知事=上院議員」だったならば、そもそも小池知事が立候補するかどうかという問題は起きなかった。

地方自治体は世界の成長地域と直接つながるべき

もちろん、大阪でいえば、日本維新の会の代表・松井一郎大阪市長や副代表・吉村大阪府知事は、上院議員として国政に関与できることになる。日本維新の会や都民ファーストの会、減税日本など都市型政党は、「連邦制上院」導入の憲法改正を主張してはどうだろうか。

日本の地方自治体は
世界の成長地域と直接つながれ
 
ここまで、「新しい日本の国家像」として、大都市圏を中心とした「地方主権」の実現を主張してきたが、それだけでは十分ではない。日本の地方は、国家という枠を超えて、世界の成長する地域と直接結び付くべきである。

この連載では、大阪府泉佐野市が、「ふるさと納税」の寄付をすると返礼品に加えて、Amazonギフト券を総額100億円プレゼントするというキャンペーンを展開したことについて、「世界最大の企業・アマゾンを利用したスケールの大きな資金調達法」だとして、その発想の柔軟さを絶賛した(第204回)。

この論考は反響が大きく、その後さまざまなメディアで発言を求められることになった。

筆者は一貫して、政府・総務省の泉佐野市に対する「制裁」に対して、旧態依然たる中央による地方支配の発想にとどまったものでしかないと批判してきた。泉佐野市を抑えつけて、政府・総務省の権力を見せつけたところで、地方の衰退は進むばかり。それを止めるためのアイディアを政府・総務省は何も持っていないではないか。

何度でも繰り返すが、地方が中央政府のご機嫌伺いばかりして全てが首都に集中する経済システムの日本は、世界から二周も三周も遅れている。インド生まれのグローバル戦略家であるパラグ・カンナ氏は著書『接続性の地政学』の中で、「グローバル経済の時代には、国家という枠に縛られることなく、近接した地域同士で経済圏を形成するようになる」と論じている。すでに、アジアをはじめ世界では、地域同士が国境を越えて直接結び付いて、経済圏を築くのが当たり前になっている。

日本の地方自治体も、国の機嫌を取り続けるのが最善の道ではないはずだ。例えば、北海道はロシア極東のサハリン州の天然ガスでもうけたらいい(第90回)。日本海側の自治体は、ロシア・ウラジオストクなどと「環日本海経済圏」を作ればいい。大阪や九州は、中国の香港、上海、深センやシンガポール、インドネシアなどと直接ビジネスをやればいいのだ。

地方が直接世界のマネーと市場にアクセスできる方法

決して荒唐無稽な話ではない。今や地方空港はどこも国際便がある。韓国・仁川や上海から観光客が地方に直接来ている一方で、中小企業が商機を求めて海外に向かっているではないか。規制ばかりで縮み志向の東京の役人に、無理に付き合っていてもつまらない。成長著しいアジアなどの熱気に目を向けることだ。「遠い東京」よりも「近い外国」と一緒にもうけることが、これからの地方分権の自然なあり方である。

そして、さらに突き詰めていくと、今後は地理的な近接さすら関係なくなっていくのかもしれない。実は、「地方創生」で先駆的な事例が存在する。岡山県西粟倉村が行うICO(Initial Coin Offering)である。ICOとは、企業や団体がブロックチェーン上でコインやトークン(デジタル権利証)を発行し、その対価として投資家から資金を調達する方法だ。西粟倉村のICOでは、投資家に仮想通貨でトークンを購入してもらう仕組みを採用した。

もちろん、仮想通貨に対する不信感は根強いし、西粟倉村の取り組みが実を結ぶかどうかは不明だ。しかし、青木秀樹村長は、日本経済新聞の取材に対して「国内外からお金を集められるICOの仕組みは魅力的だ」と断言している(日本経済新聞「自治体初のICO 岡山・西粟倉村、地方創生の財源に」2018年7月25日)。

もし、さまざまな地方自治体がICOを行い、成功すれば、中央官庁が地方を財政的に支配できなくなるだけにとどまらない。

中央銀行による通貨発行権が揺らぐ可能性がある。つまり、国家が存在する意義自体がなくなるということもあり得る(野口悠紀雄「仮想通貨は地方自治体の新たな財源になるか」)。

また、ネットを経由すれば、地方の企業が東京を経由せず、直接海外市場にアクセスできるかもしれない。例えば、中国企業のアリババグループは、中国の地方都市に張り巡らせた流通網を日本企業に開放する取り組みを始めている。「LST」と呼ぶ販売プラットフォームで、600万店以上ある店舗への販路を提供するのだ。

これまで、日本の地方の中小企業は、東京の大企業を経由するしか中国市場に参入する方法がなかった。しかし、アリババのネットワークを使えば、地方の中小消費財メーカーが、14億人の巨大市場に直接アクセスできることになるのだ。

流行語大賞「ONE TEAM」とは
多様性を持つチームの一体化が真意
 
今年の「新語・流行語大賞」の年間大賞に「ONE TEAM」が選ばれた。ラグビー・ワールドカップで活躍した日本代表のチーム・スローガンだ。ONE TEAMとは、従来の日本的な「同質性」を強調するものではない。さまざまな国から来た多様なバックグラウンドを持つ選手たちが、「個の力」を発揮しながら一体となって戦う姿を表現した言葉だ。そして、それは「少子高齢化」に悩む日本社会全体に示唆を与えるものである。

日本ラグビーは、筆者が大学生だった頃が全盛時代だった。「早明戦」が日本屈指のスポーツイベントでプラチナカードだったし、松任谷由実が有名ラグビー選手にあこがれて「ノーサイド」という曲を作った。

また、大学生でしかないはずの早稲田のスター選手と大女優がデートしたことが大々的に報道された。星野仙一氏が中日ドラゴンズの監督だったとき、選手に新日鉄釜石の「ラグビー・スピリット」を学びに行かせて、「プロがアマチュアに学ぶのか」と批判されたりした。

まさに、今の「にわかファン」には想像もつかない世界が展開されていた。だが、サッカーのJリーグ発足とともに、ラグビー人気は急激に衰退。ラグビー界は黄金時代から、「ヒト・モノ・カネ」を失う転落期に陥ったのだ。この過程は、高度経済成長から少子高齢化へと衰退した日本社会に似ていなくもない。

ならば、日本の復活は、ラグビー界に学べるのではないか。ラグビー界の復活は、平尾誠二監督時代に実施した日本代表への外国人選手の受け入れから始まった。それが今日のONE TEAMにつながってきたのだ。つまり、日本社会復活の鍵は、多様な人材を世界中から受け入れて、ONE TEAMをつくることにあるということだ。

この連載では、日本人だけが活躍する「一億総活躍」など、狭量な考えだと論じたことがある(第125回・P5)。繰り返すが、インターネットと輸送手段が高度に発達したグローバル社会では、世界中の誰でも日本に来てビジネスができる。

いや、日本に来なくても世界のどこにいても日本とつながれる。日本の地方にある自然の美しさや文化、特産品などに関心を持ってもらえれば、世界中から日本にアクセスしてもらえる。そして、それを守り、育てるための資金調達に協力してもらえることもあり得るのだ。

中央政府の役割は残っているのか?

つまり、日本という舞台で世界の「70億人」が活躍し、豊かになれるという「七十億総活躍社会」を目指すべきではないだろうか。日本的なものをリスペクトし、日本のために働いてくれる人たちは、国籍や民族などにかかわらず、みんな「日本の人」として受け入れる。そうして日本は、「70億人のONE TEAM」をつくったらいいと筆者は思う。

「日本の新しい国家像」における
2つの中央政府の役割
 
では、「日本の新しい国家像」について中央政府がやることはないのだろうか。そんなことはない。本稿は最後に、中央政府がやるべきこと2つを取り上げたいと思う。

1つは、「過去の負の歴史」を完全に清算することだ。過去の負の歴史の代表的なものを挙げれば、韓国との間の元慰安婦・元徴用工の問題がある。現在、韓国の文喜相国会議長が、「日韓企業などからの寄付金を元徴用工側に支払う」という内容の法案を韓国国会に提出している。筆者は、この文議長の考え方には一理あると考えてきた(第215回・P6)。

ただし、この連載では、文議長の提案を超える、もっと大胆な行動を安倍政権はすべきだと提案してきた(第219回)。安倍首相は、「安倍平和宣言」とでも呼ぶべきメッセージを全世界に向けて発信する。そして、「日本は戦争をしない。戦時における女性の人権侵害という不幸な歴史を二度と繰り返さない」と宣言するのだ。

続いて、現代の日本は「人権を世界で最も守る国になる」とアピールし、「安倍人権マニフェスト」を発表する。現在、日本は人権問題について世界から批判を受けている状況にある。それに対して、安倍首相が「自らの任期中に一挙に解決する」という決意を示すのだ。

それは例えば、次のようなさまざまな問題の解決である。

(1)企業の管理職における女性の割合が、わずか14.9%であることの改善(ちなみに、マレーシア24.7%、ドイツ29.4%、フランス34.5%、シンガポール36.4%、英国36.3%、スウェーデン38.6%、米国40.7%、いずれも18年の数値)

出所:国際労働機関(ILO)「Women in management」

(2)「下院議員または一院制議会における女性議員の比率、193カ国ランキング」で、日本が165位であることの改善(Women in Politics: 2019)
(3)国際連合の女性差別撤廃委員会から「差別的な規定」と3度にわたって勧告を受けている夫婦同姓をあらためて、「選択的夫婦別姓」の導入
(4)「女性差別撤廃条約」の徹底的な順守を宣言
(5)国連の自由権規約委員会や子どもの権利委員会から法改正の勧告を繰り返し受けている婚外子の相続分差別の撤廃(第144回)
(6)外国人技能実習生の人権侵害問題の解決などによる、多様性のある日本社会の実現(第197回)
(7)同性結婚などLGBT(性的少数者)の権利を保障

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今こそ「日米英同盟」を結ぶべし

そして、「安倍平和基金」を設立する。「安倍平和基金」は、アフリカや中東、アジアなど世界中の全ての人権侵害問題を援助の対象とし、元従軍慰安婦や元徴用工への援助は当然これに含まれることになる。

日本政府および趣旨に賛同する企業が資金を拠出する。この連載では当初、金額は従軍慰安婦問題解決の基金10億円の10倍の規模である「100億円」と考えてきた。だが、文議長の提案が280億円の基金だそうなので、「500億〜1000億円」くらいでもいいかもしれない。

 そして、日本が「平和の人間像」をつくり、世界中に設置する。現在の慰安婦像は「女性の人権を守るための像」ではある。しかし、その対象は「過去、戦時に人権侵害を受けた韓国人女性」を事例として限定したものだ。それでは、対象が狭いのではないだろうか。

「平和の人間像」のイメージ。顔は「ムクゲ」で花言葉は「信念」「新しい美」。右脚に引きちぎられた「赤に白斑の薔薇」の鎖。花言葉は「戦争」「戦い」。筆者の友人が作成。無断転載禁止

「平和の人間像」は、世界中の男女・LGBTを問わず全ての人に対する人権侵害問題を完全解決することを宣言する像とする。そして、全ての人々を対象とするのにふさわしい、抽象的な造形とする。そして、安倍首相が世界の人権侵害の歴史の終焉と、現在の人権問題の完全解決を高らかに宣言する。

筆者は、日本の保守派が「大日本帝国」の名誉を守ろうとすることで、現代の日本人の「人権意識」が低いと批判されてしまうことは問題だと考える。守られるべきは現代の日本人であるべきだ。そして、現代の日本が高い人権意識を持つ国だと世界中からリスペクトされるようになれば、過去の負の歴史など、自然に消えてしまうのだ。

ぜひ、安倍首相には、文議長の提案を圧倒的に超える「安倍平和宣言」「平和の人間像」を打ち出して、「政権のレガシー」としてもらいたいと希望する。

中央政府は日本の生存権を確立せよ
それには「日米英同盟」を結ぶべし
 
中央政府に望むもう1つのことは、日本の「生存権」を確立することである。ドナルド・トランプ米大統領の登場や、ボリス・ジョンソン英首相による「英国の欧州連合(EU)離脱」の実現、世界中のポピュリズム・ナショナリズムの台頭で、「自国第一主義」が広がっている。この連載では、今後は「ブロック経済化」による「生存権」を築いた国が生き残ることができると論じた(第145回)。

天然資源を持たない日本にとって、自国第一主義はありえない。グローバル経済による自由貿易圏の維持が日本の生命線である。その意味で、「環太平洋経済連携協定(TPP)」を米国が抜けた後に「TPP11」としてまとめ上げたことは、安倍政権の「レガシー」といっても過言ではない。

この連載では、それを今後、「日米英同盟」に進化させるべく、安倍政権は即座に動くべきだと論じた(第228回)。その実現は、世界第1位(米国)、第3位(日本)、第5位(英国)の経済大国に、TPP加盟10カ国と他の英連邦諸国(インド、南アフリカ、ナイジェリアなど)が加わる「超巨大自由貿易圏」が誕生することを意味する。

中国の習近平国家主席が来春、国賓待遇で来日することになっている。中国との関係が緊密化することはいいことだ。だが、経済・軍事両面で急拡大し、米国の覇権の座を脅かそうとしている中国と対等に付き合うには、日本も「生存権」を確保し、経済・安全保障で力を持たなければならない。

本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されました。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)
 
日米英同盟が重要であるもう1つの理由は、この3国は何だかんだ言って、「自由民主主義陣営」をけん引しているからである。言論の自由や思想信条の自由、学問の自由を謳歌するのが当たり前となっている日本人の多くは、その大切さに鈍感になりがちだ。

だが、世界中で自由を切望する政治運動が起こっている現状を見れば、いかに自由を奪われた人々が苦しんでいるか、自由を取り戻すことがいかに困難かは明らかだ(第227回)。

「生存権」を確保するために日本が権威主義の中国・ロシアと組むことはあり得ない。日本が同盟関係を築くのは、同じ自由民主主義の米国・英国しかないのだ。ドナルド・シンゾー・ボリスの3人が指導者でいるうちに、日米英同盟をまとめ上げるべきである。

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