「韓国の文在寅大統領の 対日姿勢に変化の兆し?」

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現在、韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対日姿勢に変化の兆しが見えつつある。安倍政権からも、韓国の姿勢に関して「対話の雰囲気が感じられる」との指摘がなされている。文大統領の変化の兆しの背景には、自らの立場が危機的な状況になっていることがあるのだろう。
 
文氏は大統領に就任して以来、二つの政策を貫いてきた。一つは“北朝鮮との統一”であり、もう一つは“反日”だ。
 
この二つの政策を柱にすることで、文氏は市民団体などの支持を巧みに取り込んできた。しかし、この政策スタンスは限界を迎えている。現在、北朝鮮は韓国をほとんど相手にしていない。一方、反日姿勢は日韓関係を大きく冷え込ませ、国際世論との距離感も広がっている。米国の対韓政策も厳しさを増している。
 
そして何よりも韓国経済の低迷が国民の生活にも影響を与えており、一般庶民の文氏に対する感覚が徐々に変化している。それは国の政策の問題ではなく、国民自身の生活にかかわる身近な問題だ。
 
さらに文氏は、“疑惑の玉ねぎ男”と揶揄(やゆ)された法相の強行任命によっての批判にも直面している。文氏としてはそうした状況を打開するため、ひとまず、日本との関係改善に動くそぶりを見せたいのだろう。ただ今のところ、文氏の言動を信じる気にはなれない。

北朝鮮の
韓国の足元を見た無視
 
このところ韓国の文大統領は、統一を呼びかけてきた北朝鮮からほとんど無視されている。見方を変えれば、北朝鮮は文政権の弱みをよく見ているとも言えるかもしれない。文政権下、国際社会における韓国の孤立感は高まっている。北朝鮮にとって、韓国の文大統領はほとんど使い道のない人材に映っているのだろう。
 
韓国の発言力低下は、WTOにおける日韓交渉などさまざまな分野に表れている。韓国は、わが国による半導体材料の輸出管理厳格化が協定に反していると主張し続けている。一方、WTO加盟国は韓国の主張から距離をとっている。これは国際社会における韓国の孤立感の高まりを確認する一つの材料とも言える。
 
北朝鮮は、韓国世論の変化も冷静に読み取っているようだ。
 
韓国国内では、生粋の左派政治家である文大統領に対する国民の感情に変化の兆しが表れている。文大統領による最低賃金の引き上げや、最大の輸出先である中国経済が成長の限界を迎えたことを受けて、韓国経済の減速が鮮明化してしまった。
 
韓国経済を支えてきた半導体産業は急速に収益力を失い、成長率の鈍化が鮮明になるにしたがって国民のマインドは悪化している。
 
また、検察改革を進めるために曺国(チョ・グク)氏を法相に任命したことに対して、文大統領の支持層からも批判が増えているようだ。韓国の世論は、次から次に疑惑が噴出するチョ氏への怒りを強めた。文大統領は同氏をかばい続けられなくなってしまった。チョ氏が法相を辞任したというよりも、文大統領が自己保身のため解任したと考えたほうが自然だろう。
 
さらに、北朝鮮は米国と直接交渉する環境を整備できた。制裁によって北朝鮮経済は疲弊し、金正恩朝鮮労働党委員長は体制維持への焦りを募らせているとみられる。同委員長にとって、半島の統一などを呼びかけ、協力事業に関する対面協議を求める文大統領を相手にするゆとりも必要性も見当たらないはずだ。それよりも金委員長は、トランプ米大統領との直接交渉を早期に実現して譲歩を引き出し、体制維持の時間を稼ぎたいだろう。

米国の
韓国に対する厳しい態度
 
文大統領はこれまでの政策運営の結果、米韓関係も冷え込ませてしまった。米国が極東地域での地位を維持・強化するために韓国は戦略的に重要だ。それに対して、文大統領は極東地域の安全保障における自国の役割をあまり理解しているようには見えない。
 
韓国は、38度線を挟んで北朝鮮と接している。北朝鮮は、中国を後ろ盾にして体制を維持してきた。中国にとって重要な緩衝国である北朝鮮に対して、韓国が前のめりに融和を呼びかけることは極東地域における中国の影響力拡大を助長しかねない。それに対して米国内では、韓国の政策に懸念を強める外交・安全保障の専門家が多い。
 
それにもかかわらず、文氏は北朝鮮船舶による“瀬取り”を取り締まることなく容認したといわれている。米国は韓国に大型の警備艇を派遣し、自ら取り締まる姿勢を鮮明に示した。これは、米国が韓国への不信感を強めたことの表れにほかならない。その上、韓国は日本との“GSOMIA(軍事情報包括保護協定)”も破棄してしまった。
 
文氏に対する米国のスタンスが厳しさを増すのは当然といえる。
 
トランプ政権は、韓国がWTOで“途上国”として扱われ、優遇措置を受けてきたことを不公平であると指摘してきた。それには、韓国の身勝手な行動に対する批判、あるいは警告などの側面もあるだろう。10月25日、米国に配慮し、韓国は途上国の地位を放棄すると発表した。さすがの文政権も、自国に対する国際世論の風向きが変わりつつあることに危機感を持ち始めた。
 
米国は韓国に対して一段と厳しい姿勢をとりつつあるようだ。
 
10月22~24日にかけて、米韓は、ハワイで2020年以降の在韓米軍の駐留経費に関する協議を行った。協議に先立ち米国務省は従来の韓国の協力に謝意を示しつつも、トランプ大統領が韓国に対してより公平な負担を求めていることを明確に示した。
 
現時点で協議の内容は明らかになっていないものの、米国は韓国にさらなる負担を求める可能性がある。米国は、文政権への厳格な姿勢を鮮明化し、日本との関係改善など方針の修正を求めていくものと考えられる。

変化の兆しが見られる
文政権の対日姿勢だが…
 
この中で、文大統領は、不承不承に日本に対する姿勢を変えつつあるように見える。それに対して、日本国内の世論は、文大統領のスタンスの変化に気付きながら冷静なスタンスを保っている。
 
すでに、サムスン電子やロッテなどの大手企業は、文政権よりも日本企業や金融機関との関係強化に優先して取り組んでいるようにも見える。文大統領がさらに日韓関係を冷え込ませれば、韓国経済界や保守派は政権に対する信頼を一段となくすことになるだろう。
 
そうした展開を避けるべく、徐々にではあるが、文大統領の対日姿勢には変化の兆しが見られる。すでに韓国は、日本政府に親書を届け、関係改善の必要性を訴えた。さらに、韓国政府は日本製の産業用空気圧バルブに課してきた不当廉売(反ダンピング)措置を是正する考えもほのめかし始めた。
 
ただ、文大統領が本気で日韓関係の改善を目指し、対日政策の方針を抜本的に修正して、わが国が要請してきた対話などに応じるとは考えづらい。文氏にとって反日姿勢は、相変わらず市民団体などの支持をつなぎとめるために重要な策であることは何も変わっていないからだ。
 
また、李洛淵(イ・ナギョン)首相は、わが国に対して日韓請求権協定を遵守しているとの主張を貫いた。韓国は日本製バルブへの制裁関税の撤廃にも言及していない。先行きには紆余曲折もあるだろうが、現時点で、文政権の対日姿勢が根本から改められると論じるのは早計だ。
 
口先では関係改善をほのめかしつつ、具体的な行動が伴わない相手を信じることは難しい。状況によって態度を変える人となればなおさらだ。
 
文大統領は、自らの経済運営などへの批判をかわすために日本を批判してきた。そして、自らの立場を守るために世論の懸念を無視して検察改革をも進めた。こうした状況を考えてみると、やはり文氏は信頼できる政治家とは考え難い。
 
わが国は韓国の政治動向などを冷静に見極め、彼らが本気で真摯に関係の改善が必要だと認識するまで待てばよい。その時期はいつか来るはずだ。

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