「地球温暖化?」

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1.「私たちは大量絶滅の始まりにいます」

16歳のスウェーデン少女グレタ・トゥーンベリさんが大人たちを糾弾した。9月23日、ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットでのことだ。

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多くの人たちが苦しんでいます。多くの人たちが死んでいます。全ての生態系が破壊されています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。
それなのにあなたたちが話しているのは、お金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか![1]
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こんな光景を予想していたかのように、「国連も、子供を使って温暖化ホラー話を広めたがる」と暴露しているのは、アメリカでベストセラーとなった『「地球温暖化」の不都合な真実』[2]である。同書はこう続ける。

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2016年に国連が出したビデオでは、子供たちがこんな歌を歌う。「CO2は出さない。お風呂も入らない。・・・クルマもいらない」。
「温暖化に苦しむ子どもたち」という趣旨の国連ビデオでは、歌手のケイティ・ペリーがこう説教。温暖化の悪影響をまず受けるのは、子どもたちなのです」。[1, p257]
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グレタさんは大人を糾弾するばかりで、事実は何も語っていない。上記の引用でも「多くの人たちが死んでいます」と言うが、温暖化のためにどこで何人死んでいるのか、具体的なデータは何も示さない。いわんや「大量絶滅の始まり」の根拠は何なのか、も語らない。

後述するように、ますます多くの気候学者が「地球温暖化」キャンペーンのからくりに目覚めているのだが、この点は「30年以上にわたって、科学ははっきりと示してきました」の一言で片付ける。

学問的な議論で追いつめられた温暖化脅威派が、問答無用の「二重の子供騙し(子供を騙し、その子供を使って大人を騙そうとする)」戦術に出たようだ。

■2.次々と事実によって否定されてきた温暖化の「脅威」

温暖化脅威派の訴える「脅威」が様々な分野の科学者たちの実証研究によって次々と否定されてきた様子をこの本は無数の例で示す。

★地球の気温が上がっている。
米国の気候史を調べた気候学者ジョン・クリスティー「50州のうち75%までが、1955年より前に最高気温を記録した。また、ほぼ25の州で、気温の最低記録は1940年以降に起きている。[1, p114]

★温暖化で南極の氷が溶け、海面が上昇する。
NASAのチーム「東南極では、氷の質量が1992~2008年に年々2000億トンずつ増え、西南極の南極半島では、年々650億トンづつ減っている」。西南極の氷の減少は、氷の下にある91個の海底火山からの地熱が原因と推定されている。[2,p71-73]

★6メートルの海面上昇で、フロリダ半島の半分が水没する(アル・ゴア『不都合な真実』)
地質学者ドン・イースターブルック「各地の潮位データを総合すると、1850年から現在まで、10年で約1.8センチの一定速度であがってきました」。地質学者ロバート・ギーゲンガック「海面上昇がいまのペースなら、ゴアの『6メートル上昇』は3500年も先のこと」[1,p80]

★北極の氷が減って、シロクマが溺れている。
1950~60年代のシロクマの数は5千~1万頭だったが、2016年には国際自然保護連合が2万2千~3万1千頭と見積もった。これはシロクマ研究の権威スーザン・クロックフォード博士によれば「過去50年間の最高値」[2, p84]。シロクマは温暖化脅威派のアイドル・キャラクターだったが、以降、使われなくなった。

★温暖化でハリケーンや台風が増える。
カテゴリー3超のハリケーンは2005~17年まで米本土には上陸していない。NASAハリケーン部門「巨大ハリケーンが12年も『休む』のは、177年に1度の確率」[2, p185]。ネイチャーハザーズ誌(2017年)

このように温暖化脅威派が訴えてきた「脅威」は、事実によって次々に否定されてきたのである。

■3.「彼らは真実を暴かれるのにビクついている」

こうした科学的研究の蓄積によって、温暖化脅威派から懐疑派に鞍替えする科学者たちが続出している。

高名な地球物理学者で環境運動の始祖ともされるジェームス・ラブロックは、2006年の時点でも「21世紀末までに数十億人が死に、残った少数のカップルは、気候がまだ大丈夫な南極に移り住む」と警告していた。その彼が2012年にはこう告白している。「温暖化の話で私は誤ったし、人騒がせもした」[2, p125]。

ラブロックは言う。「ミスを悟ったら公表する。公表が絶対。そうやって人間は前に進むわけだから」。この良心的な科学者は、いまの温暖化脅威派をこう評する。

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彼らは真実を暴かれるのにビクついている。なにしろ、まともな研究者なら、人為的温暖化論に科学の値打ちがほとんどないことを、いやというほど分かっているから。[2, 126]
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かつてオバマ大統領が「地球温暖化は未来世代を脅かす緊急課題」と主張した際にオバマ支持を表明したノーベル賞受賞の物理学者のアイバー・ジエーバーも、2015年のノーベル賞受賞者会議で「地球温暖化の再考察」というタイトルで講演し、「温暖化脅威論は、見当外れもいいところ」と酷評した。[2, 128]

フランスの名高い地球物理学者クロード・アレーグルも当初、温暖化の危機を世に訴えていた。それが今や、フランスで最も声の大きい懐疑派に転向した。「人間が出すCO2が地球を暖めている証拠は、まったくゼロなんです」。

■4.「温暖化脅威派のさまざまな非行」

もう一つ、多くの科学者たちを温暖化脅威論から覚醒させたのは、国連の下部組織「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の腐敗と偏向である。2009年と2011年の二度にわたって、IPCC内部のメールが大量に流出した。ニクソン大統領辞任をもたらしたウォーターゲート事件をもじって、「クライメートゲート事件」と呼ばれる。CBSニュースはこう報じた。

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流出メールは、(温暖化論に対する)懐疑派のデータ開示請求を突っぱね、懐疑派の論文掲載を阻み、グラフの作成手順を隠すなど、温暖化脅威派のさまざまな非行を教えてくれた。[2, p142]
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2009年11月25日のワシントンポスト紙は一件をこう総括している。

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CRU(気象庁気候研究ユニット)のジョーンズ所長は、「IPCCのルール違反だが」、懐疑派の論文はIPCC報告書に引用しないのがいい、とメールに書いた。・・・別のメールでは、懐疑派の目からデータを隠す方法を相談している。
・・・懐疑派の存在を気にかけていたにせよ、あやふやな部分も多い科学を誇大宣伝し、あろうことか論争相手の排除に走ったりする研究者集団は、道をふみはずしたとしか言いようがない。[2, p145]
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気象学者ジュディス・カリーは、2014年に自身のブログでこう記す。「クライメート事件は私に180度の方向転換をさせた。・・・一件は気象科学の不透明さをまざまざと教え、気温データの『所有者』は別にして、気候科学に不快感を覚え始めた研究者が多い」[2, p153] 気温データの『所有者』とは、不都合なデータを意図的に隠した研究者一派の事だろう。

■5.「きわめつけの人種差別や偽善」

温暖化脅威論者たちの言行不一致も、多くの人々を離反させる一因となっている。たとえば、最大の広告塔たる元副大統領のアル・ゴア。2006年のオスカー賞をとった映画『不都合な真実』は、ラストシーンで「あなたは暮らしを変えますか?」と問いかける。

ゴア自身は暮らしを変えているのだろうか? デイリーコーラー紙によると、ゴアがテネシー州ナッシュビルに構える豪邸(全米3軒のうちひとつ)は平均的な家庭の21倍もエネルギーを使っている。「温暖化過激派のゴアは年に220万円も電気代を使うが、環境ホラー話で大儲けしたから痛くもかゆくもない。2億円未満だった純資産が、2008年には30億円にも増えたから。」

ウガンダの活動家フィオーナ・コブシンギェ女史もこう批判する。

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アル・ゴアも国連気候変動枠組条約のイボ・デ・ブア事務局長も、省エネが大事だと説く。でも皆さんに言いたい。アフリカ人は、正真正銘の省エネ暮らしだからこそ飢えている! ゴアが一週間に使う電力は、ウガンダ国民2800万の一年分より多い。[2, p276]
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ゴア批判の極めつけは、彼が2014年にアフリカの人口を減らして温暖化の悪影響を減らす「妊娠管理」案を、世界経済フォーラムで提唱した時のことだ。ゴアは「21世紀中期にはアフリカの人口が中国とインドの合計を超す。真剣に考えましょう。・・・異常気象で世界が壊滅しないよう、産児制限すべきです。」

これに噛みついたのが元ハーバード大学の物理学者ルーボス・モートルだった。「4人も子をもつ人間が他国の産児制限を叫ぶのは、きわめつけの人種差別や偽善だろう」。

■6.「うまくやれる」と中国を絶賛

問題は、温暖化脅威派が、なぜデータ隠しや懐疑派の弾圧をしてまで、地球温暖化を訴え続けるのか、という点である。最も単純な動機は金儲けだろう。人々の不安を煽って、講演や著書、映画で儲ける。ゴアの純資産が2億円未満から30億円にもなったというのが、その一例である。

しかし純粋な金儲けとも違うのは、「人類の危機を救う」という大義名分(と見える看板)を掲げて、人々から金を集めている点だ。ゴアがノーベル平和賞をとったのも、その最高の成功事例だろう。

温暖化は学者たちが研究費を獲得するにも恰好のテーマでもある。マサチューセッツ工科大学の気候学者リチャード・リンゼンはこう語っている。

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温暖化研究者の大半は、湯水のような研究費がほしいだけ。研究費は政府がほぼ全部を握る。大金を使う研究者は、温暖化が深刻な問題だと言わなきゃいけない。とりわけ若手なら、脅威論に反発するのは自殺行為になる。[2, p241]
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リンゼンは温暖化脅威論を唱える国連や各国政府の官僚たちの狙いをこう見透かした。「官僚は民の支配を生きがいにする。そのネタに人為的温暖化説がぴったりなのだ」[2, p212]。これを実証する事例がある。

国連気候変動枠組条約(FCCC)の事務局長クリスチアナ・フィゲレス女史は「科学者の声に耳を傾け、トップダウンの改革をする時期だ。地球に生きる全員の暮らしを見直しつつ、中央管理の形で改革を進めよう」。しかし、その「中央管理」がなかなかうまく行かない事に、民主主義は温暖化対策の「足を引っ張る」と嘆き、「うまくやれる」中国を絶賛した。

「民主主義の弱点がない中国の政治システムなら、法律をつくるのも政策を進めるのも簡単とフィゲレス事務局長は語った」とブルームバーグニュースは報じた。二酸化酸素排出量は世界最大であり、環境破壊は世界最悪レベルの中国の政治システムが、どうして「うまくやれる」と評価できるのか理解不能だが、これほど事実を無視した官僚に「中央管理」されたら、世界はたまらない。

■7.真に「セクシー」な取り組みとは

そのフィゲレス女史と並んで、海外初デビューの小泉進次郎・環境大臣が記者会見をし、「気候変動のような大きな問題は、楽しく、かっこよく、セクシーであるべきだ」と述べて、炎上した。「セクシー」というのは、もともと女史の発言を引用したもので、普通の英語なら「クール(かっこいい)」と言うべき所だった。

しかし、その後がもっとまずい。「脱火力発電に向けて、今後どうするのか」と質問されると、「私は先週(環境相に)なったばかりで……」と口ごもる。こういう所に、日頃の不勉強のほどが露顕してしまう。

日本の環境大臣なら、拙著『世界が称賛する 日本人が知らない日本』[b]で述べたように、日本が緑被率(国土の中の緑地の割合)についてはOECD加盟先進国の中でフィンランド、スウェーデンに続いて3位であり、しかも人口密度は両国の15倍から20倍である事こそ「クール」であると、誇って欲しかった。

そのクールさの源は新著『世界が称賛する 日本人が知らない日本2 「和の国」という『根っこ』」[c]で述べたように、世界の4大文明がことごとく環境を砂漠化してしまったのに対して、縄文時代以来、1万数千年維持してきた自然との「和」の賜であり、しかも我々の先祖はその過程で世界最古の土器を生み出して食材の保管や煮炊きに使うなど、技術革新を続けてきた。

これからの我が国も、この「自然との和」を「根っこ」として、集合住宅やビルの木造化を推し進め、5Gを活用した在宅勤務などで人口の地方分散を進めていきます、などとアピールしたら、本当に「クール」だったろう。

人口爆発の中でいかに自然と調和した豊かな生活を実現するのか、この人類の真の課題が、今の「温暖化騒動」ではなおざりにされている。そのための智恵を生み出し、お手本として世界に示す責務が日本にはある。

                                       

(文責 伊勢雅臣)

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