「台湾と断交したソロモンが陥る「債務の罠」」

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【台湾】台湾と断交したソロモンが陥る「債務の罠」

● 台湾、ソロモンと断交 国交国16カ国に 呉外相「極めて遺憾」

ソロモン諸島が台湾と断交し、中国と国交を結ぶと宣言しました。各報道にもありますが、これで蔡英文政権になってから台湾と断交した国は6か国目です。以下、報道を一部引用します。

中華民国は1983年にソロモン諸島と国交を樹立。ソロモンは台湾が外交関係を有する太平洋の国のうち、面積(2万8,450平方キロメートル)、人口(約60万人)ともに最大だった。残る太平洋の国交国はキリバス、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルの5カ国。

これで台湾と外交関係のある国は16か国となりました。蔡英文総統は、このことに関して以下のような声明を出しています。
蔡総統は、中国の介入や圧力を前に「台湾は決して脅しに乗らない」と強調。「中国の金銭外交とは張り合わない」とし、台湾がソロモンに提供した医療や農業、教育、文化などの分野における援助は「金銭で計れるものではない」と述べた。

● ソロモン断交 蔡英文総統、中国を「最も厳正に非難」/台湾

中国は、香港の騒動が台湾人に「一国二制度」は恐ろしいものだという印象を与えたと焦っています。そして、その影響は2020年の台湾総統選挙で蔡英文を有利に導くのではないかとの危機感を持っています。そこで、あの手この手で蔡英文政権への嫌がらせを加速しています。

外交関係にある国々を金銭外交で台湾からむしり取っていくのも、中国の常套手段のひとつです。ソロモン諸島が中国の手に落ちたことで、台湾の呉外交部長は「日米豪のインド太平洋戦略は『大きな衝撃を受ける』と警鐘を鳴らした」ということです。

香港での反中デモが世界中で報道されている一方で、ソロモン諸島が中国になびき台湾と断交したことは、民主主義や自由よりも中国の援助のほうが重要という姿勢を示したともいえ、中国にとっては、現在でも自分たちを理解し応援してくれる国が増えているとアピールすることにもなり、香港問題で低下した中国への国際的イメージを上げ、また、台湾の蔡英文政権や民衆に圧力をかけることにもつながります。

確かに、報道によれば融資額は「台湾の今年の援助額が850万ドル(約9億2,000万円)なのに対し、中国は断交の見返りに、期間は不明だが5億ドル(約540億円)の提供を申し出たとの情報もある」と、大きく違います。しかし、呉外交部長は、中国の融資について以下のように述べています。産経新聞からの報道を引用します。

「中国は過去にも台湾の国交国を奪うため同様の約束をしたが、実行には大きな差がある」と主張。サントメ・プリンシペに6億ドルの港湾、ブルキナファソに10億ドルの高速道路・鉄道建設を約束した例を挙げ『着工すらされていない」と断じた。また、中国の援助国が「債務のわな」に陥っている実態も列挙した。

● 台湾、ソロモン「断交」を警戒 呉外交部長が中国の軍港計画指摘

その一例がスリランカのハンバントタ港です。ここは、2010年親中派のラジャパクサ前政権が中国から大量の融資を受けて、「商業的な港」として開発されました。

しかし、フタを開けてみれば、中国の軍港を建設された上に、高い金利を支払えないスリランカ政府から港の運営権を取り上げた事実上の売却状態。港の建設で現地の経済が潤うとの人々の期待も裏切り、雇用されたのは中国人労働者ばかり。現地の人の雇用は増えませんでした。

もちろん現地の人々も黙っていませんが、いくらストライキや集会をしても中国側に無視されるか握りつぶされるかのどちらかです。

● 中国に運営権「植民地同然」スリランカのハンバントタ港 融資→多額の債務→99年間貸与

中国の金銭外交に乗った小国は、結局は中国の軍事拠点として利用されるだけなのです。中国からの多額の融資は、経済を潤すどころか、高い金利が加算され経済を圧迫し国民を苦しめるだけです。

しかし、中国に取り込まれた一部の政治家は、国益よりも私利私欲に走り、中国の要求を呑んでしまう。これも、人の弱味につけこむ陰謀に長けた中国の狡猾さが功を奏しているのでしょう。

求められる「日台交流基本法」成立

中国は、金銭外交で台湾の外交関係を壊そうとしていると同時に、強引な方法で海洋戦略を着々と進めています。中国の軍事費が年々増加しているのも、海洋戦略につぎこむためです。

特に、「一帯一路」構想を公表して以後は、あからさまに世界の港を中国の軍港にしてきました。すでに、パキスタン、ミャンマー、スリランカ、マラッカ海峡、オーストラリアなどで港湾の運営権を得ています。すべては、産油国と中国を結ぶシーレーンを確保するため。海洋強国として世界に君臨するためです。

米中関係が悪化している中、台米関係が良好なのも気に入らないようです。今年7月、アメリカは台湾へ大量の武器売規約を決めました。これに対して中国は「強烈な不満」を表明し、アメリカ側に直ちに武器売却の撤回を要求しました。

● 米が台湾へ武器売却へ 中国「強烈な不満」

今年8月には、中国人の台湾への個人旅行を停止すると発表しました。台湾の観光業へのダメージを狙ったものです。もうこうなると、蔡英文政権への嫌がらせ丸出しです。しかし、台湾人も中国の嫌がらせに踊らされるほど馬鹿ではありません。ネットでは、マナーの悪い中国人観光客がいない今こそ観光地に行くべきだとの意見もあります。

中国の嫌がらせは総統選挙が近づくにつれ激化するでしょう。台湾はアメリカや日本などの友好国と手をつなぎ、この難局を乗り越えて欲しいものです。

台湾と中国の承認外交競争は、カネをめぐる外交競争となっています。アフリカ諸国も台中の弱味を突くように、カネをより多く出すほうに「承認」するようになりました。しかし、そんな競争はバカバカしいとして、台湾側はもう「金銭外交はしない」と公言したのです。

中国の対台湾併呑作戦は、外交だけでなく軍事、経済とあらゆる面で行われています。その中には、「武力も放棄しない」という恫喝も含まれており、2000年以降、こうした恫喝は1,000回以上にも及んでいます。

前述したように、蔡英文政権になって、中国に奪われた台湾と国交を持つ国はすでに6カ国となりました。残る台湾との国交樹立国は16カ国ですが、私は台湾が国交を樹立するのはアメリカ一国だけで十分だと思っています。

アメリカは主に軍事的な理由で台湾を重視しています。そして、中国の台湾に関する強引な外交戦略には批判的です。パナマ、ドミニカ、エルサルバドルのように、台湾と断交し中国と国交を結んだ国々からは、駐在米大使を召還する処置を取ることもあります。

アメリカは台湾関連の政策もかなり変更してきました。台湾旅行法も成立させました。武器売却も決めました。その流れで、日本でも日本と台湾の交流を法制化する「日台基本法」の成立が求められています。

● 「日台交流基本法」日本の議員が制定に意欲 台湾の対日機関が協力へ
日本がこの波に乗れるかどうか、日本の決断が迫られています。

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