習主席の「逃げの政治」

今年6月の大阪でのG20サミットで面会した米トランプ大統領(左)と中国の習近平国家主席。米中貿易協議の出口は見えない

今月19日から、中国の習近平国家主席は内陸部の甘粛(かんしゅく)省で地方視察を始めた。その日、彼はまず万里の長城の一部である嘉峪関(かよくかん)を訪れた。その後は敦煌(とんこう)へ行き、仏教遺跡である莫高窟(ばっこうくつ)を見学した。最後には敦煌研究院の専門家たちを招いて座談会を開き、中国の「文物保護」について「重要講話」を行った。
 
以上のような視察日程は、「視察」というよりも物見遊山に近いものであるが、テレビの画面でこの光景を眺めた多くの中国国民は、多大な違和感を覚えたはずだ。
 
その前日の18日、香港では約170万人の市民が最大級規模の抗議デモを行い、香港政府と、その背後にある中国政府への対決姿勢を鮮明にした。
 
一方では、米中両国が互いに制裁関税の税率引き上げや報復関税を課するなど、米中貿易戦争は激しさを増している。アメリカ政府は、さらに、中国側の激しい反発を無視して台湾へのF16V戦闘機の売却を決めた。
 
中国国内では、貿易戦争の悪影響もあって経済の衰退はより一層明確な傾向となった。国内企業の倒産と外資企業の撤退が相次ぎ、失業の拡大が深刻化している。
 
まさにこのような内憂外患の最中に、最高指導者の習主席が、米中貿易戦争の最前線からも、緊迫した情勢の香港からも最も遠い西北部の甘粛省へ赴いた。そこで、名所古跡の見物に興じたり「文物保護」などの悠長なテーマで座談会を開いたりしている。
 
まさに、火事が家の玄関口に及んできているのに、一家の主人が裏庭で悠然と遊びに興じているかのような、摩訶(まか)不可思議な光景である。

もちろん、習主席がこの時期に甘粛を視察したのにはそれなりの理由もあろう。
 
「紛争の地」の香港から遠く、米中貿易戦争とも関係の薄い内陸地方へ行けば、喫緊の香港問題について発言しなくて済むし、地方の指導者たちを相手に「貿易戦争への対処」について何らかの「指示」を出す必要もない。

つまり、貿易戦争からも香港問題からも逃げることができるのである。
 
その一方、香港問題や貿易戦争の最前線から遠く離れたこの地で「文物保護」について格好の良い「指示」の1つ2つでも出せば、何とか最高指導者としての存在感をアピールでき、いくばくの満足感を味わうこともできよう。
 
要するに習主席の甘粛視察は、手に負えなくなった政治難題からの逃避行そのものなのである。
 
彼の場合、そんなのは初めてのことではない。
 
昨年9月25日、米トランプ政権が対中制裁関税第3弾を発動した直後から、習主席は、貿易戦争からの打撃を最も受けやすい沿岸地域を避けて内陸部の黒竜江省を視察した。どうやら、一番肝心な時の「逃げの一策」は常に習主席の「危機管理法」となるらしい。
 
結局のところ、米中貿易戦争の拡大や香港危機の長期化は全部、習主席自身の失策・失敗の招いた結果であるが、彼は自ら作り出した深刻事態に対して最後まで責任を負わない。最高指導者としては「最低」というしかない。
 
このような指導者が最高権力の座に居て独裁政治を行っていると、政治も経済も外交も全てがうまくいかない。今後の中国が危機多発の中でますます沈没していくのが目に見えるようである。

こんな習近平氏を最高指導者に頂いたことは、共産党政権の運の尽きであって中国という国の不幸でもあるが、われわれ日本にとっては別に悪いことでもない。

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