「条約をひっくり返せと言われたらできるか」

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1.条約をひっくり返せと言われたらできるか

昨日のエントリーでも取り上げましたけれども、8月1日、バンコクで開かれたASEAN関連外相会議で、日米外相が立ち話をした際、ポンペオ国務長官が「徴用工を含む請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決済み」とする日本の立場に理解を示す旨を河野外相に伝えていたことが各メディア報じられ始めました。

8月14日、政府関係者が明らかにしたところによると、河野外相は、韓国の主張通り賠償請求権を認めれば、日韓請求権協定が基礎とする1951年のサンフランシスコ講和条約の見直しにつながると説明し、「条約をひっくり返せと言われたらできるか」と問うたところ、ポンペオ国務長官は「それはできない」と応じたそうです。

筆者は、「韓国は世界秩序の破壊者である」のエントリーなどで、日本は韓国に対して、「韓国は世界秩序を破壊している。世界の破壊を止めよ」と戦略の階層の最上位階層である世界観から批判すべきだと述べたことがありますけれども、アメリカには既にその説明がされていたということです。

ここにきて、韓国が世界秩序を破壊している論が、ネットでちらちら見かけるようになりました。8月6日、自民党の甘利選対委員長がBLOGOSへ寄稿した記事の中で次のように述べています。
1965年、日本と韓国は「日韓基本条約」の締結により、「国交正常化」を実現し、その下に「日韓請求権協定」を結び、日本と韓国との間の補償案件をいわゆる徴用工問題の全てを含め完全かつ最終的に全て解決しました……

にも関わらず、韓国最高裁は「追加の補償要求」を正当化したのです。国際条約はその国の政権が変わろうと関係当事国を縛ります。条約の効力が政権交代で無効になるなら、サンフランシスコ講和条約をはじめ、世界のあらゆる条約はその効力を失い、世界はノンルール化します。

だから国際法・国際条約は世界共通のルールであり、それを締約した国は国内法をそのルールの下に治めなければなりません。韓国の最高裁は韓国国内の司法権であり、国を越えて関係国を縛る国際法をオーバーライドすることは出来ないのです。
河野外相とポンペオ国務長官のバンコクでの立ち話の内容が14日に政府関係者からリークされたのは、おそらく12日に韓国政府が、サンフランシスコ条約を無効だとする主張をしたからだと思われます。つまり韓国の主張に対する反論の意味合いで報道させたのだと思いますね。

2.日韓基本条約のグレーゾーン

韓国政府によるサンフランシスコ条約無効コメントを受けてなのか、これについて中央日報が「『日植民地支配の不法』陥った... 65年の韓日協定、痛恨の一文」という記事を掲載しています。
※こちらの翻訳ブログに該当記事の日本語訳があります。

この記事は日韓基本条約はグレーゾーン合意だとして、Q&A方式で纏められたものですけれども、その概要はおおよそ次の通りです。
Q:サンフランシスコ平和条約で韓国の権利は?
A:サンフランシスコ条約14条は、戦争中の被害に対して、日本が賠償しなければならないと規定したが、韓国は署名式に招待を受けることもできなかった。代わりに条約4条aに基づいて韓日協定の交渉が開始された。

Q:韓日協定で植民地支配の性格はどのように規定されたか?
A:植民地支配の不法性を主張する韓国、合法という日本は交渉期間に激しく対抗し、結局「グレーゾーン」の合意を導き出した。韓国は併合条約が締結当時から違法であり、無効であったと解釈し、日本は締結時には、合法であったが、65年の国交正常化の時点では、すでに無効になったと解釈する余地を残した。

Q:日本は全く謝罪をしなかったのか?
A:協定上はそうだ。

Q:強制徴用問題は取り上げられなかったか?
A:サンフランシスコ条約は、請求権協定の対象を民事的債権及び債務関係の清算に限定したが、韓国側は植民地支配による被害補償の概念をまとめる請求権資金を要求した。日本は植民地支配は不法行為であることを前提とした被害の賠償という概念を排除した。

Q:それでは、日本が出した資金の性格は何なのか?
A:請求権協定1条は日本が3億ドルの無償供与と2億ドルの政府借款を提供することにして、2条で請求権問題が完全かつ最終的に解決されたことと規定した。協定の妥結後、韓国は「実質的には賠償の性格というのが私たちの見解」と言って、日本は「韓国に提供した資金は、あくまで経済協力として行われただけだ」と、それぞれ違う話をしたわけだ。
中央日報が指摘する日韓基本条約のグレーゾーンについては、2017年8月のエントリー「日韓基本条約をも無効にしようと目論む文在寅」で取り上げ、文大統領は、今後、日韓基本条約そのものをも無効だとして蒸し返し、ひっくり返してくるかもしれないと述べたことがありますけれども、増々、その可能性が高まってきたようにも思います。

ただ、件の中央日報の記事は「韓国語版」では掲載されているものの「日本語版」では見つけることが出来ませんでした。もしも「日本語版」だけ意図的に掲載しなかったとすれば、この記事は日本人には知られたくない内容だと言う事になります。

ただ、見出しに「痛恨の一文」という文言があるところを見ると、当時の韓国政府を批判すると同時に、もう条約は引っ繰り返すことは出来ないのだ、と韓国国民を宥める意図の記事だと読めなくもありません。

まぁ、どちらにせよ、甘利氏の言葉を借りれば「国際条約は世界共通のルールであり、それを締約した国は国内法をそのルールの下に治めなければならない」のであり、引っ繰り返そうとするのは戦後秩序の破壊行為です。

韓国がサンフランシスコ条約を無効だと言い出した以上、これを世界に向けてもっと発信すべきだと思いますね。

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