保育所詐欺 被告は政界とのパイプ強調、虚実ない交ぜの運営

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川崎大資(だいし)被告は複数の企業に特定の国会議員とのパイプをアピールし、国の助成金を活用した保育所開設を持ちかけていた。誘いに乗った相手には政治資金パーティー券を買わせ、運営は虚実ない交ぜにする。相手を信じ込ませて助成金をだまし取る巧妙な手口が浮かび上がる。
■「盟友のように」
「川崎被告と国会議員の先生は盟友のように自然に話していた。前科のある川崎被告の提案は不安だったが、先生がいたので事業参入を決めた」
保育所を開設したある企業の関係者の男性は3、4年前に川崎被告と参加した企業主導型保育事業の勉強会で、与党の中堅衆院議員を紹介された。かつて「塩田大介」の名前でマンション販売会社「ABCホーム.」の会長を務め、法人税法違反罪で執行猶予付き判決、競売入札妨害罪で実刑判決を受けた川崎被告。関係者によると、「(中堅衆院議員とは)太いパイプがあるのでWIN社の申請は認可を取りやすい」と強調していた。
政界とのパイプを誇示して企業から信用を集めた川崎被告は、その議員側が主催する複数の政治資金パーティー券について、これまで計約300万円分の購入を関連企業に依頼していた。男性の会社は計約50万円分購入したという。
福岡市の保育所開設にかかわった内装工事業者も、この議員のパーティー券を計100万円分以上購入した。購入費はWIN社を通じて支払っていたという。この業者は「川崎被告からの依頼で買った。政治家との関係は口説き文句のように言っていた」と明かす。
川崎被告の逮捕後、議員事務所からパーティー券の購入企業に返金の申し出があったという。この議員は「川崎被告は当時私が秘書として仕えていた国会議員の支援者として知り合ったが、5、6年前にたまたま会ったのが最後。名前を勝手に使われ、とても迷惑している」と説明。パーティー券については「任せていた秘書が退職して詳しいことが分からない」と話した。
■実態ない会社も
川崎被告は国会議員の名前を利用して企業から信頼を得て、9つの企業主導型保育所を実際に運営していた。だが、助成が決定した保育所は過去3年間で少なくとも23施設あり、半数ほどは未着工のままとみられる。
 本来、企業主導型保育所は従業員や近隣住民の子供を受け入れる施設。だが、起訴内容となったうち名古屋市の保育所の申請企業は社員がほぼいない実体のない会社で、川崎被告が実質的に支配していた。また、新たに立件対象となった大阪市の保育所の申請企業では、代表取締役が周囲に「川崎被告に頼まれて代表になったが、保育所のことは知らなかった」と説明しているという。
特捜部はだまし取った助成金は事業の運転資金に充てたり、私的に流用したりしたとみている。だが、川崎被告の知人は「ぜいたくな暮らしをしていたとも思えず、残ったカネはどこに行ったのか」といぶかる。
ある検察幹部は「きちんと運営している施設と実体のない施設を混在させ、信用力を持たせる手法はずる賢い。川崎被告は以前にも特捜部が立件したが、全く反省の色が見えない」と語った。

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