「役者が違う。トランプ突然の「ちゃぶ台返し」に顔面蒼白の習近平」

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役者が違う。トランプ突然の「ちゃぶ台返し」に顔面蒼白の習近平

米中間で激化する貿易交渉が大詰めを迎える最中の5月7日、先手を打つ形で中国製品への更なる関税引き上げを公に宣言したトランプ大統領。国際ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、株式市場の乱行下や、日本企業を含む世界経済の悪化を加速させると言った「トランプのちゃぶ台返し」の副作用について解説しています。

トランプの「ちゃぶ台返し」で世界は経済危機に突入?
ちゃぶ台返し

気に入らないことがあって権力者が激昂するなどして下の者の「お膳立て」を台無しにする、このまま円満に運ぶかと思われた事柄を権力者や上長の独断で御破算にする、といった意味合いで用いられることのある言い回し。

今もっとも話題になっているのは、これでしょう。

世界の二大経済大国である米中間の貿易交渉の最終ラウンドを目前に、トランプは「中国との貿易交渉は続いているが、中国側が再交渉を試みていて進展が遅すぎる。駄目だ!」とツイート。その上で、中国からの2,000億ドル分の輸入品に対する関税を10日に10%から25%に引き上げると表明。さらに現在は関税対象となっていない3,250億ドル分の中国製品についても25%の関税を課す考えを示した。

今アメリカは、500億ドル分の輸入品に25%の関税をかけている。2,000億ドル分に10%かけている。トランプは、これを10日に25%に引き上げるとツイートした。さらに、関税対象になっていない3,250億ドル分についても25%の関税を課すと発言した。

これを受けて、株が下落しました。
世界の金融市場の反応は予想どおりだった。中国の二大株式市場はそれぞれ5%と7%下落した。米株式市場も500ポイント近く下げて始まったが(その後、部分的には回復)。
(同上)
いったいこの発言、何が問題だったのでしょうか?

このツイートに、中国側の交渉チームは仰天した。何しろ彼らはこのあとワシントンを訪問して大詰めの交渉を行い、10日にも大筋合意を発表したい考えでいたのだ。
(同上)

そう、米中はこの問題を解決すべく交渉をつづけている。そして、合意の一歩手前まできている。それを、トランプは一言で「ぶち壊した」。
ちゃぶ台返し

 

気に入らないことがあって権力者が激昂するなどして下の者の「お膳立て」を台無しにする、このまま円満に運ぶかと思われた事柄を権力者や上長の独断で御破算にする、といった意味合いで用いられることのある言い回し。

習近平に「騙されない」トランプ

トランプの「ちゃぶ台返し」は「戦略的」
トランプさんのこの行動について、記事の筆者ビル・パウエルさんは、こう書いています。

ドナルド・トランプ米大統領は、余計なことをせずにはいられない──それが、5月5日に中国政府と世界中の人々が学んだ教訓だ。
(同上)
と書き、トランプさんのツイートが、「余計なこと」と非難しています。

そういえば、トランプさんは、2月にも完全に同じではないですが、似たような行動をとったことがあります。ベトナムでの米朝首脳会談です。結局、合意に至らなかった。

世界中がトランプさんを批判しましたが、RPEは「大成功」と書きました。金は、「段階的非核化」を主張している。つまり、「少し非核化したら、少し制裁を解除する。そしたらまた少し非核化して、また少し制裁を解除する」。このプロセスを、「完全非核化までつづける」というもの。

これ、常識的に考えれば、「大うそ」であること。すぐわかります。少し非核化して、少し制裁を解除する。すると、中国、ロシア、韓国から大金が北朝鮮に流れ込むことになる。大金をゲットした金は、なんのために核兵器を放棄するのでしょうか?彼は、アメリカをうまくだまして、核保有と経済発展の両方を手に入れた「民族の英雄」になるでしょう。

一方、トランプさんは、歴代のアメリカ大統領同様、「金にだまされたナイーブなバカ」になってしまう。幸いにもトランプは、「完全非核化、その後制裁解除」を譲りませんでした。結果、アメリカは困っていません。困っているのは、制裁で金がなくなり、日々貧乏になっている金です。だから、RPEは、「大成功だ」と書いたのです。

今回の対中国「ちゃぶ台返し」はどうでしょうか?

中国は、「戦争は詭道なり」(=戦争=ウソをつくことだ)の国です。戦時は、ウソをつくことが「奨励」される。で、今は、戦時?平時?中国は、「政治は、血を流さない戦争。戦争は、血を流す政治」と考えている。つまり、私たちの考える「平時」「戦時」、両方とも「戦時」である。別の言葉で、「常に戦時」である。もちろん「今も戦時」である。今は戦時なので、「ウソをつくことが『奨励』される」のです。

当然、中国は、アメリカをだまそうとしているに違いません。トランプの任期が終わるまで引き延ばし、次の選挙で、親中のバイデンさんを大統領にするよう工作するでしょう。金にだまされなかったトランプは、習にもだまされなかった(今のところは)のです。米中覇権戦争を戦う国の長としては、「正しいことをした」とすらいえるかもしれません。
ちゃぶ台返しが招く副作用とは

しかし、副作用は容赦なく襲う

RPEでは去年のかなり早い時期から、「米中戦争で世界経済はヤバくなる」と警告してきました。実際、日本企業にも影響が及んできた。たとえば今年1月には、こんなことがありました。

1月17日、日本電産は2019年3月期の業績予想の下方修正を発表した。

「これまでの長い経営経験でも見たことがないほどの落ち込みだ」

同日の記者会見で、日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は売り上げが急減していることを明かした。
(ダイヤモンドオンライン 2019.1.18「日本電産ショックは『序章』に過ぎない、米中摩擦でリーマン級危機も」)
この局面で永守会長の脳裏には、2008年秋のリーマンショックが思い浮かんでいたという。

「当時は売上高が半分になったが、(11~12月の)売り上げは3割落ちたので、さらに落ち込むとすれば、リーマンの時と同じだと見る必要がある」。

リーマンショックで多くの企業が資金繰りに窮した時のように、今の段階でも、米中貿易摩擦の影響で、中国の一部で資金繰りに苦しむ企業も出てきたようだ。
(同上)
これで、トランプのいうような関税引き上げが行われれば、もちろん中国経済は悪化し、その後世界経済に悪影響がでてくるでしょう。日本も、逃れることはできません。そう、トランプの「ちゃぶ台返し」には二つの側面がある。

アメリカの安保、覇権争奪戦の観点からすると、中国にだまされないのは、正しい判断

しかし、その結果、世界経済は悪化する

去年から書きつづけてきたことが、いよいよ現実化する方向になってきました。

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