「反撃の習近平。米にキレた中国が目論む「新・国連」結成の現実味」

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反撃の習近平。米にキレた中国が目論む「新・国連」結成の現実味

トランプ政権の予想を上回る強硬姿勢で、決裂寸前となっている米中通商協議。ついに13日夜には中国が対米報復のため600億ドルの輸入品を対象に最大25%の関税上乗せを6月1日より実施すると発表し、米中は泥仕合の様相を呈しています。

この先、世界はどのような道を辿ることになるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、世界情勢を鑑みつつその行く末を分析するとともに、日本が置かれている立場や行うべき準備についても記しています。

米中全面対決の道に

米中通商交渉が決裂手前になっている。今後の予想をしてみよう。
日米株価

NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで過去最高株価であるが、12月26日21,712ドルと暴落したが、その後は上昇して5月3日26,534ドルになったが、トランプ大統領の対中関税を引き上げるというツイートで、5月6日から下落し5月9日25,517ドルまで下がった。米中通商協議は合意しなかったが、協議継続になり5月10日25,942ドルと上昇して終えている。

日経平均株価は、10連休は無事に通過すると思ったが、5月5日のトランプツイートで、5月7日から5日間下落して、令和に入って一回も株価が上昇していない。5月10日57円安の21,344円になった(※編集部註:5月13日の終値は21,191円28銭)。

5月10日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)、2,000億ドル(約22兆円)約5,700品目分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。この米国の関税引き上げに対して、中国の対抗処置が出ると、そこでも株価は下落する。

中国は対米貿易関税の引き上げを決めたが、米国債の売却を仕掛けると、米国の長期金利の上昇で、FRBは10年米国債を買う量的緩和を行う必要が出てくる。そうしないと、大規模財政赤字での米国債売却ができないし、金利上昇で米国債利子支払いが大きくなり、予算が圧迫されることになる。また、米金利上昇すると円高から円安に振れることにもなる。今の円高方向から変化する。

当分、中国関連株を売り、デフェンシブ株の個別株投資で行くしかない。賃金上昇している米国景気は、中国への関税UPでも落ちないから、米国株は、世界経済の減速が米国経済に波及するまでは、上昇に転じるはずである。量的緩和など中央銀行バブルで、当分、金融資産は上昇するからである。同じように日本株も底値の後、当分上昇してくる。

世界経済は、米国への輸出が減る中国景気後退で、欧州や日本は、確実に減速して来るので、その内に米国経済も減速するが、その時には、FRBの量的緩和で、米国経済だけはまだ余力がある。

中国による「新・国連設立」も

米中貿易戦争の今後

米国の超党派危機委員会は、「中国とは共存できない」と全面対決姿勢であり、中国が対抗処置を取ると、中国輸入品のすべてに関税を掛ける第4弾を行うことになる。

米中のデカップリング・セパレーティングが起きて、米中間の貿易が止まり、世界的な供給網の再編成とブロック経済圏ができる。人の行き来もなくなる。それでも中国の代わりにベトナムなどの輸入が増えて、急には米国の貿易赤字は減らない。

一方、中国は、一帯一路フォーラムで、欧州や日本など60ケ国以上の国が参加して、貿易圏をすでに確立して、米国が仕掛ける中国包囲網を突破できると見たはず。そして、米国の通商交渉では、1つの要求が合意できると、次の新しい要求が出て、とめどなく続く。このことを中国が知ったことで、無限に続く要求に交渉意欲さえ無くしたようである。

昔の日米通商交渉でも同じで、米国の有利な条件を何でも入れてきて、無限に続いた。特に基本ソフト産業を潰す条件を合意したことが、現在の日本の製造業を衰退させたと、中国は研究している。中国製造2025を潰す米国の動きに、とうとう、中国は交渉を降りることになったようである。

米国は産業補助金を要求していたが、最終的には取り下げると見たが、米国担当者では、その条件を取り下げることができないために交渉を進めることができなくなったようだ。

そのため、習近平国家主席も、最悪、米国と全面的な対決になると覚悟して、「新国連」を作るなどの施策がでてきたと見る。これは中国の覇権を確立するのに、丁度良い機会を得たことになる。習近平国家主席は、「決裂の責任は取る」と明言しているが、一帯一路フォーラムでの参加国の数と質で自信ができたから言えたのである。

一帯一路フォーラムを見ると、米中貿易戦争は、覇権獲得競争であるが、中国の方が優位である。市場規模が中国の方が大きいので、多くの国は、中国との貿易を切ることができない。そして、ファーウェイ製品の導入禁止という米国の要求にも、多くの国が追従しない。

米国は、一国主義のためにTPPという対中対抗ブロック経済圏構想から離脱したことで、中国への経済的な締め付けを確立できずに、日本は、米国とも中国ともに貿易する道を選んでしまった。トヨタなど日本の製造業は、両国それぞれで製造・販売する方向で、ビジネスを再構築している。多くの国で中国との貿易の方が、米国との貿易より大きい。

米国は、自国産業を育成して、製造業は日本などの企業を呼び込み、米国内で作り販売させるので、米国の経済は正常化するかもしれないが、孤立経済圏になる。仲間作りをしないので、中国への対抗ができないことになる。ということで、米国一国ブロック経済になる。仲間を失うことで覇権も失う。ドル基軸通貨制度もなくなる。よって、巨大な財政赤字にもできなくなる。

このため、米中首脳会談で、トランプ大統領は、2020年大統領選挙直前に、国家補助金で譲歩して、まとめる可能性もある。その時には、その見返りとして、ドル切り下げを持ち出すかもしれない。首脳会談で合意できずでも、米国も中国も全面対決になるので、決裂しないで、関税を上げるなどの処置をしても交渉を継続して、当分、時間稼ぎをするように思う。

太平洋の半分を支配下にする第3列島線進出など、中国は軍事的優位を確立する必要があり、米国は中国対抗の軍事体制を作るためである。しかし、いつかは、全面対決になる。
日本が米中戦争の「最前線」に

米国とロシア、欧州

このため、将来的に米中は全面対決になることが予想でき、米国は軍事的な面でも、中国と対決することになり、対抗上、米国はロシアとの関係を正常化することになる。

ベネズエラ紛争に軍事介入を模索するボルトン補佐官に対して、トランプ大統領は不満と述べているが、ロシアとの関係正常化をしたいのに、ボルトン補佐官が邪魔をしていると見ている。それとロシアに対する経済制裁を解除することになる。

その代わりに中東でのイラン支援を中止することで、取引が成立すると思う。トランプ大統領は、福音派の支持を得るためにイスラエル支援をすることが必要であり、イラン・イスラエル戦争のときにロシアが中立になることで折り合うはず。イランとの戦争に備えることの方が、破綻国家南米ベネズエラより重要性が高い。

このように米国は中国と全面対決になるが、同盟国の日本なども軍事的な面では米国陣営にいるが、経済面では中国陣営にも参加することになる。
欧州は、中東での緊張を引き起こす米国にいや気が差していることと、中国との関係を強化して、欧中大陸横断鉄道貨物便で大量の物資を相互に運び、ビジネスを構築しているので、経済的技術的な面での中国包囲網には加わらないが、軍事面では日本との関係から一定程度の南シナ海や朝鮮半島周辺でのパトロールには参加している。

しかし、いつかは米中戦争に発展するのではないかと心配になる。その時、日本は、どちらの陣営に居ても、米中戦争の最前線になることが確実である。

中東戦争準備

原子力空母「リンカーン」を中東に送り、ドイツに向かっていたポンペオ国務長官がイラクに急遽飛び、イラク駐留米軍に攻撃を計画しているイラン革命防衛隊に対する対応をイラク政府とクルド勢力政府に要求してきたようである。

反対に、イランは、米国、イスラエルとの戦争を覚悟しているように感じる。原油を禁輸されて、核合意を一部破棄して、核開発に乗り出すという。革命防衛隊は、対艦ミサイルを積み込み、米軍艦隊を狙っているとイスラエル情報機関であるモサドが米国に通報したと報道されている。

しかし、米同盟国であったトルコは、イラン産原油を輸入して、イランと直接インターネットを接続して、イランを支援することを表明している。トルコがイラン・サイドに着く可能性がある。条件として、トルコ系住民がいるシリアのイドリブ攻撃を止めることになると見るが、この地域の敵と味方が、知らぬ間に入れ替わるので、全体情勢が見えない状況になっている。

米国の味方は、イスラエルとクルド人勢力しかいない。サウジは中立を保つことになる。そのため、米ロ対決にしたくないので、米国はロシアの中立化が必要になっているのである。

どちらにしても、中東戦争直前の状態になっている。

袋小路に迷い込んだ北朝鮮

北朝鮮と韓国

北朝鮮は、米朝協議で合意できずに、ミサイル実験を再開したが、自分の首を絞めることになる。中露も参加した国連決議禁止事項を破るので、中国もロシアも北朝鮮への経済援助はできない。米国との関係からも北朝鮮を一方的に支援できない。

韓国は、同胞ということで4,000トンのコメを送る人道的援助を行うようであるが、ミサイル実験を繰り返す北朝鮮とビジネスを大々的に行うことはできないし、日本の自衛隊艦船の監視では、レーダー照射などで、監視を掻い潜れたが、英仏米などの艦艇による監視下で瀬取りを幇助することもできなくなっている。

韓国も日本との関係をこれ以上悪化させると、北朝鮮との関係がこじれた時に米軍支援の自衛隊の協力も得られず、そのため米軍も動けず、韓国軍単独で、北朝鮮軍と対峙することになる。このため、大きな被害が出ることが想定できる。

ということで、徴用工賠償請求の弁護士が、裁判所に日本企業資産売却申請を出したが、まだ実行されていないようである。実行したら、日本も対抗処置を取り、その報復で韓国も対抗処置を取る事態になると、日韓関係は断交まで行くことになる。それを避けているようである。

北朝鮮のミサイル実験は、米国との対話もできなくしているので、何も取り柄がない。なぜ、実験をするのかよくわからない。韓国に対して行うと、韓国の文大統領も北朝鮮の味方をできず、そのため北朝鮮の有利な報道官ができなくなり、北朝鮮のためにならない。

北朝鮮は、食料不足も相まって、袋小路にさ迷った状態になってしまった。食料不足もあり、軍部が強くなり、何かが起きる可能性もある。

この状況で、日本は北朝鮮に手を差し伸べた。20万トンの廃棄処分真近の古古米を送る代わりに、首脳会談を要請した。この要請を中国は、北朝鮮に伝えるとした。安倍首相の無条件で北朝鮮と対話するとは、こういうことである。

世界経済の現状と準備

量的緩和などで中央銀行バブルが起きて、金利がないという世界的な資本主義の限界になっている。金利がないということは、企業の儲けが少なく、利子がある借金をしてまで、事業の拡大をしないということになる。というように、世界は低成長、縮小均衡になっている。

この状態で、中国や欧米日などの経済大国が、金利をゼロにする金融緩和をして投資させて、景気を支える構造になり、投資先の金融資産の価格だけが上昇するが、労働賃金が伸びない庶民の生活は、苦しくなっている。経済成長を国家が金をばら撒いて行おうとしているが、庶民の暮らしは苦しくなる。

日本でも人手不足でありながら、実質賃金は減少して、非正規社員が労働人口の4割にもなり、母子家庭の貧困が問題視されている。

貧富の差が拡大して、世界的にポピュリズムが力を得て、政治的な混乱にもなっている。世界は低成長、縮小均衡で、小さくなるパイを奪い合う構図になり、政治家は自国だけ、パイを大きくして生き残りを目指して行動することで、世界的な摩擦が起きている。

日本は、停滞経済の中で徐々に衰退し、徐々に困窮する人たちが増えている。その中で、日本周辺でも問題国家が増えてきて、お金を日本から巻き上げようとする国家もあり、領土を巻き上げようとする国家もあり、国際的な紛争も増えていくことになる。

このような状況は、今後、益々、ひどくなるとみていた方が良い。世界的に貧富の差が広がり、国民の目を内部から外部に向けさせて乗り切ろうとするからである。その準備を日本も行っていくことが必要である。

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