「社債デフォルト」

画像の説明

中国人民元が6日に急落したことで、暗いニュースがあと2〜3件も出れば、中国政府が死守しようとしている1ドル=7元の防衛ラインが決壊するというところまできた。遅かれ早かれ、同国政府はその水準を下回った人民元に対処せざるを得なくなるだろう。
 
人民元にとってこの3カ月間はそれほど悪くなかった。中国の政策立案者は、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者によるハト派的発言を受けた国債市場の値動きにも助けられてきた。中国国債10年物の利回りが年初来で上昇している一方で米国債の利回りは低下していることもあり、人民元の下げ圧力はある程度和らいできた。
 
2018年は中国にとって暗いニュースばかりだったが、予定されていた関税引き上げが12月に延期されると状況は劇的に改善され、その後の米中貿易協議に関する比較的明るいニュースも人民元の追い風となっていた。ところが、先週末のトランプ大統領の方針転換で状況は一変した。
 
人民元の価値がさらに下がることはないと信じるためには、米中の経済関係が大幅に改善し、その状態が長く維持される、あるいは米中の国債利回りの差が中期的に拡大することが見込まれなければならない。中国経済が減速しているという現状を踏まえると、FRBが利上げを実施しない限り、そうなる可能性はかなり低そうだ。
 
しかし、人民元の下落を見込んだ直接的な投資は危険である。中国政府は資本規制を強化することで一定の効果が見込めると明言している。また中国人民銀行には自国通貨を守るための外貨準備も十二分にある。同行は人民元の売り手が根負けするまで外貨準備で買い支え続けるかもしれない。
 
ただ、2014年半ばから17年初めにかけて政策立案者は1兆ドルの外貨準備を費やしたが、人民元の価値下落を防ぐことはできなかった。人民元の急落を永遠に防いだり、始まった急落を反転させたりすることはできないという教訓が残された。
 
通貨市場で政府の防衛ラインが決壊するときには暴落となることが多い。その通貨へのエクスポージャーをヘッジするためにオプションという形の保険を買っていた投資家はさらなる売りを迫られるため、その後の値動きも激しくなる可能性がある。
 
外国人による中国の株式・債券の保有高は徐々に増えているので、人民元の価値の重要度も日々高まっている。投資家が中国人民銀行と真っ向勝負するにはかなりの度胸が必要だが、自分がどのような資産を保有しているか、元安というリスクへのエクスポージャーはどの程度かを確認するのには良いタイミングと言えそうだ。

コメント


認証コード3681

コメントは管理者の承認後に表示されます。